テラーノベル
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「……別に謝らんでええよ。ほんまはわかっててん。ゆうたが空気読めへん不思議ちゃんなことも、悪い奴やないことも、一年間一緒のクラスにおったら気づいてた。俺が1人でいる時に話しかけてくれる子もおってん。けど、それを変なプライドで拒否し続けてたんは俺やから……。ありがとうな、いつきくんに頼んでくれて。今こうやって、俺と一緒におってくれて」
「ううん!! 俺、今日嫌われる覚悟でここにきたから……ほんとそう思ってくれて嬉しい!」
今こうやって素直に笑えてんのは、ゆうたがずっと近くにおってくれたからや。前のことなんか思い出す暇もないくらい、ずっと支えてくれたから。
「……今、LINEの返事送ったから見て。それが友達としてでも恋人としてでも、どっちでもええ。俺は、ゆうたの言う通りにする」
「……え?」
あの日からずっと送れへんかったLINEのメッセージを、今やっと送信した。これからもこいつに振り回される日が続くのだけは確定やな。まあ、それはそれで楽しくてええか。
『俺もゆうたのことが大好きやで。これからも一緒にいような』
一世一代の、俺のキザな告白。……お前、なんでそんな微妙な顔してんねん!
「……どうしよう、後輩ちゃんにしゅうと恋人いないって言っちゃった!!」
おいおい、それはつまり俺のことを「恋愛対象」としてみてるってことやんな!? いざそうなると、めっちゃくちゃ緊張してきた。俺、この可愛い生き物と手ぇ繋いだり、ちゅうしたり、あんなことやこんなこと……できんの!?
ズビビビッ! と音を鳴らしてコーラを一気飲みしたら、案の定盛大にむせた。俺、普通の男子高校生やん!! 経験皆無丸出しの男子高校生やん!!
「しゅうと大丈夫!? え、俺また間違えてる? しゅうとは友達がいいの!?」
焦りまくるゆうたを見て、むせながらも笑いが止まらへん。あかん、お前、告白早々、俺を笑い殺す気か。
「はぁ……笑いすぎて死ぬかと思った。……ゆうたに任せるって言うたやろ? ゆうたはどうしたいん?」
「……俺は、しゅうとを俺だけのものにしたい。いつきくんやりゅうせいくんと喋ってるのも、身体を触られてるのも、ほんとは嫌だ。俺だけと話してほしいし、俺しか見てほしくない」
そんなキラキラした目で俺のこと見てるけど、言うてること「おっもおも」の重すぎる愛やからな。付き合って早々、押しつぶされそうやわ。
「……そんなに好きなん? 俺のこと」
「うん、一目惚れだったんだ。入学初日教室で俺のところに来てくれた時は、やったー!! って叫びそうになった。でも、この間のLINEで告白した後返事くれなかったから、もう諦めようと思ってたんだ」
「……やから、女の子紹介しようとしたんや」
なるほどな。その方がゆうたは諦めがつくって思ったわけか。
「うん。後輩ちゃんに頼まれたのも、そういう運命なのかなって」
「まあ……ゆうたのことを考えるきっかけにはなったと思う」
どのへんからゆうたを恋愛対象として見出したんかは、自分でもようわからん。入学式の日にタイプやったからか、今の関係性の中で不意に見せる表情のせいか、それともさっきの真実の告白か。
けれど、全ての出来事がきっかけで、流れるようにこの気持ちに辿り着いてしまったんやな。きっと。
「じゃあ、食べよっか」
「そやな、もう時間ないし」
「大丈夫。時間は、これからもたっぷりあるから」
……………は!? なにそれ!? 今の言い方、くっそ色気なかった!? は!? 何その余裕!? どうせこっちは万年彼女なしですよ!!は!?は!?
「俺、イチゴ大好き」
真っ赤なイチゴソースのかかったパンケーキが、ゆうたの口に運ばれる。あかん、本気の恋に目覚めてしまった今の俺には全ての刺激が強すぎる。あかん、謙虚にならな。まだ付き合ったばっかりや。焦ったらあかん。
「……ねぇ、しゅうと、今日フットサルやめて、しゅうとの家行っていい?」
「え……フットサル、いかへんの?」
焦る。今、謙虚にって自分に言い聞かせたはずやのに、展開早すぎるって!!
「えっと……今はフットサルより、大切なものもあるかなって」
顔を真っ赤にさせて、精一杯の勇気で俺のことを誘ってくれてる。その純粋な眼差しに、俺の理性がまた崩れそうになる。こういう時はお母さん攻撃が自分にも相手にも効くことを俺は知ってる!!
「……ええよ。でも今日お母さんおるから、紹介するわ」
「え!? もう親に紹介!? 早くない!?」
「なんで結婚報告みたいになっとんねん。気が早すぎるやろ!」
ゆうたの可愛さは、今まで会った誰よりもダントツや。今は、あんなに大好きやったいつきくんの面影さえ、ゆうたの笑顔が塗り替えてしまっている。
かつて自分を縛り付けていた暗黒期も、孤独も、もうどこか遠い過去のことみたいや。
こんなに楽しくて、愛おしい毎日を――これからもゆっくり、ゆうたと積み重ねていけたらええな。
「……行こか。お母さん、めっちゃ喜ぶわ」
「……めっちゃ!?うん、行く!」
パンケーキの甘い香りを残したまま、俺たちは店を出た。
夕暮れの風が、俺たちの背中を優しく押している。これが、俺とゆうたのほんまの始まりなのかも知れん。
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