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いつか殺し合う君と紡ぐ恋物語

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いつか殺し合う君と紡ぐ恋物語

57 - 【第五章】第十三話 クエストクリア・後編

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2025年03月12日

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焔とリアンがソフィアと五朗に合流した後は特に何者からの邪魔も無く、クエストはスムーズに進んでいった。予想通り何度もアイテム無しでは通過出来ないポイントがあり、その度にセキュリティキーをまた集めたり、病院の備品をかき集めて納品したりなどをしたりはしたが、どれもさほど苦戦することは無かった。三人と一冊で行動したおかげで敵を前にしても苦戦する事もなく、心療内科で経験した様な不可思議な事態も、掃除道具入れの中に閉じ込められる様な事も起きず、  今に至る。


「お疲れ様っしたぁ!リアンさん。ありがとうございました、ホント助かったっすよ。転移したばっかの時と違って色々諦め切っていたんで、転職条件が揃っている職業があるって指摘してもらえるまで全然思い付きもしなかったからマジで助かったっす。過去の失敗に縛られて『今』に甘んじちゃうとか、冒険者としては最悪の選択でしたよ」

「いえいえ、全ては主人の為なので感謝は不要ですよ」と、リアンが笑って返す。

「流石リアンさん。その対応、全然っブレないっすねぇ!」

廃病院を出て、今はメンバー全員がこの敷地内から出ようとしている所だ。前方には焔とソフィアが先を歩き、少し離れた位置でリアンと五朗の二人が後に続く。やり遂げた感のある焔と共に喜んでいるソフィア達の様子が眩しく感じ、不思議とちょっとだけ近寄り難いようだ。

「そういえば、あの時はよく御無事で」

「あぁ、ケイトさんが転職クエストに参加した時っすか?そりゃ、まぁ。でも、あの人は別に敵じゃありませんしね。でも……あの人の気配を察知した時は、正直死を覚悟したっす。話してみたら別に何ともなくって拍子抜けしちゃいましたけど。んでも、マジで自分の連絡を聞き入れて、こっちに来ないでくれて良かったっすよ。アレでケイトさんが本当にヤバイ奴だったら全滅不可避だったでしょうからね」


(ヤバイ奴で正解だよ、五朗。お前の敵を察知する能力は完璧だ。俺の腹心の中でも、ケイトは最強クラスだからな。こちらの存在に気が付いていれば、間違いなく全滅だったろう……俺以外は)


「こちらはこちらでトラブルがあったから合流出来なかった、というだけですけどね。通信は意味不明でわかり難い内容でしたので、とりあえず向かおうとしていましたし。でも、てっきりトラブルがあった際には状況も考えず、とにかく助けて欲しいタイプなのかと思ったのに……正直、貴方を見直しましたよ」

「そりゃぁそうっすよ、伊達に長年ゲームばっかしてないっすからね。今はパーティーに入れてもらえているおかげで、自分がもしダメになっても、リアンさんが復活系の魔法も使える事に賭けてみました。一時間以内に生き返らせてさえもらえれば元の世界へ強制送還されずに済むっすからね」

「咄嗟によくそこまで考えられましたね。通信時には、相当慌てていらっしゃったのに」

「まぁ、元の世界では引き篭もりのゲーマーでしたから。クラシカルなゲームが好きだったんで、咄嗟の判断とかめっちゃ鍛えられたと思うっすよ。まぁ考えを伝える事に関しては微塵も鍛えていないせいで、あんな通信になっちゃいましたけど……」と言い、五朗が項垂れた。


その後もリアンが一を話せば、五朗が十で返すくらいの比率で会話が続く。話せるコミュ障との会話を何とか面倒がらずに続けていると「——そういえば」と言って、リアンが不意に立ち止まった。


「『ケイトさん』とやらは……何か、その……言っていませんでしたか?」


「んと……『何か』っすか?んー、そうっすねぇ、『何か』かぁ。——あ!そうだ、『嫁さんを探している』って言ってましたよ」

「……嫁?」

何の事かわからずリアンが首を傾げた。ケイトとは長い付き合いだが、彼に嫁がいたなんてリアンは初耳だ。好意を向けられている様に感じられる発言や態度が多かった気はするのだが、アレはもしかして『嫁の不在からくる代替え行為』だったのだろうか?と疑問に思う。

そしてしばらく考えた後、何かとすぐに自分を監禁したがっていたのは全て、『嫁が行方不明である事からくる不安を誤魔化しているだけだったのだな』と、リアンはものすごく的外れな結論に至った。


「あとは、召喚士を探していると言ってたっす」

「……それに対して、貴方は何と答えたんです?」

「『じゃあ、召喚士はどうだ?』と訊かれたんで『……これまた、珍しい職業っすね。自分は山賊っすよ?勇者とか召喚士とか、そういった有名で人気な職業とは無縁っすよ』としか言っていませんよ。どうとでも受け取れる言い回しをして具体的には答えなかったっす。もしあの時、ケイトさんがクエストの参加メンバーを詳しくチェックしていたら主人さんが召喚士だって即バレバレだったので、彼と話しながらヒヤヒヤしましたよ。高レベル者なのに、意外にもクエストに参加慣れしていないみたいで助かったっす」


(そりゃ……ケイトは魔族だしな。人間共のクエストなんか未経験の領域だ。初歩的な事であろうとも、知らなくて当然だろう)


「自分からも、一つ訊いていいっすか?リアンさん」

「えぇ、いいですよ。何ですか?」

「リアンさんは、何で転移者か転生者っぽいのに召喚魔をやれているんすか?」

「……」

五朗の問いに対し、リアンが黙ってしまった。彼にはそういった類の話をした記憶が無いからだ。

「何故、そうだと思ったので?」

「そりゃ簡単っすよ。拠点であれだけの見事なシステムキッチンや冷蔵庫とかを前にして、この世界の生まれだって思う方に無理がありますからね。もしかして……秘密でした?主人さんとかも、知らない事だったとか? ——やべっ!」とこぼし、五朗が自分の口を両手で塞いだ。

まさか、そんな点から推察されるとは盲点だった。ちょっと考えればわかりそうな事なのに、つい便利だからと元の世界に寄せ過ぎた事をリアンは後悔した。

「あ、いえ……。主人は既に知っています。ですが、そうでありながら私が召喚魔である事に対しては、疑問にすら思っていませんけどね」

「えっと……その、別に、言えない理由があるんだったら、流してもらっていいっすよ?」

「……その、昔は今程制約も無く、条件さえ満たしていれば割と何にでもなれたんです。だから私は召喚魔として応じられる身になりました」


嘘ではない。ただ、言っていない事が多いだけで。


「そうだったんすね。んじゃあ、名前とか、元の世界では何してたーとか、訊いてもいいっすか?ほら、いつか向こうに帰れたら、昔を懐かんで語り合うとかしたくなるかもだし!でもまぁ、主人さんみたいに、名前は言いたくないとかあるなら別にそれでもいいんですけどね」

「……ゲームの、プログラムを組む仕事をしていました」

「マジっすか!」

「えぇ、本当です。かなり古いと思うので貴方は知らないでしょうけど、『リスタ』や『誓いの欠片』というタイトルなどに参加していたんですよ」

「え!全然古くないっすよ、それ去年の超人気タイトルじゃないっすか!自分もやり込みましたよ、どっちもめっちゃストーリー作り込まれていて、すんげぇハマったんで」

「……え?」


(きょ、去年?……何故だ、俺がこの世界に来てから何百年以上も経過しているんだぞ?一体元の世界と異世界とで、どんな時間の流れ方をしているんだ?)


動揺するリアンの横で、五朗は何も気付かぬまま話を続ける。

「嬉しいなぁ、神作品作ったスタッフの一人に会えるなんて!異世界ならでは、すっね」

「大袈裟ですねぇ。でも、楽しんでもらえたのなら、苦労した甲斐がありました」

ニコリと微笑み、リアンが晴れ渡る空を見上げる。そして、手を顔の前にやり、眩し過ぎる日差しを防いだ。

「スタッフロールにも名前出てたって事っすよね。本名でだったりするんっすかね」

「えぇ。人にもよりますけど、本名で並んでいますよ。私の名前は——」とまで一度切り、改めてリアンが口を開く。


「……八代……八代、竜斗。神社の息子です」

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