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玲奈は、まあなんとも嬉しそうに頬を染めて。それを本当に恥ずかしがっているかは別として、そのように口元を隠した。妙に気に障る反り立ったその手は、そのまま鼻に沿って流れ、ひし形となる。
すると今度は幼女のように、はたまた魔物のように裂けた笑いを見せた。
私は息を吞んだ。今自分が何へと向かおうとしているのかを激しく実感した。
「ありがとう! これで私たち仲良しこよしのお友達ね!」
言葉に対し、その瞳に光はない。闇がどこまでも続いているようで、その真なる部分を図ることは微塵として不可能だ。
背後、すぐそばに起こる爆風。それはあの時のミサイルである。こうなることを読み、敢えて掠めてきたというのか。轟も、肌掠める震えも、焼ける光すら。全てがあの闇に飲まれてく。失せる色彩が蜷局を巻く。
これが彼女なりの愛なのだ。私への訴えなのだ。
闇は次第に彼女と重なっていく、だがそれは融合でも進化でもない。少なくとも私にはそう思えたし、そう言われているようにも感じた。ならば何なのか、未だ辿り着けぬが、そこにこそ、本性より深いものが存在している事だけが確かである。
「ですから、互いに獣を脱ぎ捨てた。ホントの自分で語りましょう」
「……ちょ、ちょっと。勝手に話を進め――」
もしも、もしもだ。彼女と手を取り合うことができて、今からすべてを打ち明かすとして、その先に何を思い浮かべている。考えられるのは一つ、クローゼットに潜んでいる晃一に復讐についてを私の口から言わせる。そして、二人の幸せのためにそこから対策を。
だが、私がそれから逃れる手はない。なぜならば、この思考すら読まれているであろうからだ。
私の言葉虚しく、歩む。彼女は言った。息のような言を五つ。
控えめな香水の香りが目の前を靡いた。それはまるでドラマのワンシーンのように、秒針の刻む音が歪み、刹那が永遠に続いた。
その感覚が途絶えると、もはや私の心に闘志は消えていた。なぜだろう。疑問はあるが、疑念はなかった。ただ当然の事のように、その言葉を信じることができた。「だいじょうぶ」の五つ。
はじめまして、高月玲奈。
クローゼットの前へ立った彼女は、大きな動作で見せつけるよう、それを開いた。