テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
耀聖(ようせい)
537
耀聖(ようせい)
1,681
52
22
コメント
1件
第28話、読み終えました…! サラのプロとしての判断力と身体能力の高さが際立ってて、めっちゃかっこよかったです🔥 ウルフとの温度差がいい感じにコミカルで、でも戦術の連携がリアルでゾクゾクしました。 それから、グレイスの嫉妬がじわじわとヤバい方向に…すごく気になります。怪我しないでほしいけど、この緊張感がたまらないです。 耀聖さんの書く戦闘シーン、本当に引き込まれます。続きが楽しみです🤍
【魔獣の森】
最後にタクティカルベストを着込み、装備を整えた学生達は、キースと向き合っていた。
「それでは諸君、ルールの説明に入る」
キースは皆の支援ツールに情報を送る。
>>>>>
今回のフィールドの広さは、約10キロ四方。
タイムリミットは12時間。
30分毎にフィールドが狭くなり始める。
銃の射程は300m、通信範囲は約1キロ。
>>>>>
少しゲーム性を取り入れたのには、明確な理由があった。
「うわぁー、嫌でも動かないと駄目だし」
説明を聞いた生徒から悲鳴にも似た声が聞こえる――。
「アイツが楽させる訳ないだろ」
慄いている生徒たちは戦わず、ひたすら隠れてやり過ごす考えだったらしい。
アーレイはそんな弱腰を、見越していたのだ——。
「みんなで固まって動くしかない」
「そうよね、怖いよね」
これが普通の反応だろう。
そんな様子を細めた目で見ていた赤髪の少女は、やれやれといった表情を浮かべていた――。
「まっ、境界を行くか、速攻で中心に向かうの2択だね」
ルール説明を聞いたサラは、既に最適解を導いていた。
「他の隊とは連携は取らないのか?」
「あれが、当てに出来るとでも?」
「……」
極めて合理的な判断だ。
軍隊の勉強をしているウルフは、その判断力に舌を巻く——。
「素早く移動して、裏を取るのが一番よ、みんなちゃんと付いてきてね」
とにかく始まりを迎えた実地演習。
ヤル気を滲ませるサラは、戦友達を一瞥する。
「……」
この先、不安しかないのか、皆一様に固く口を結ぶ。
そんな不安そうな顔をする学生たちを見て、キースはニヤリと笑った。
「さあ、出発だ。乗り込め」
皆一様に不安に駆られた表情のまま、強襲艇に乗り込む。
ズドドド
ハッチが動くと同時に、重低音を響かせ強襲艇は離陸してゆく。
「さあ好きな場所を指定するんだ。秒で送り込んでやる」
スタートラインは十キロにわたって設けられている。
中心に集まるのも良し、端から進むのも自由だ。
各部隊は、自分達で決めたスタートラインに転送される。
「セシリア隊、行きまーす」
シュン。
北側の一番端にセシリアの隊が消えて行った。
サラは同じ考えだと一瞬で理解すると、ふふっと笑みをこぼす。
「ウルフ隊は南の端で!」
王族が参加する以上、ウルフの顔を立てた方が、悪目立ちしない。
なので、サラはウルフ隊と呼んだのだ。
「……」
各国の王女王子が、好き好んで戦線の端に降りてゆく。
プロとしての、最適解を出していたキースは、苦笑いしながら見送っていた。
※※※※※※
【グレイスの部隊】
修学旅行に参加しないグレイスは、単独でクーンに入り、傭兵達と合流。
土に埋めた銃を取り出し、既に準備万端だ。
「おいおい、なんて速度で移動しているんだ。これが学生って冗談だろ」
マップを確認しながら接近して嫌がらせをするという、簡単なお仕事だった。
しかし——。
「そんなに凄いのか、相手は女だぞ」
「野山を駆け回るってレベルじゃない、俺たちでもキツい」
マップを見て驚愕している傭兵達——。
サラはあり得ないスピードで境界線を一直線に移動していた。
「エルフ族と大して変わらん、こりゃ骨が折れる仕事だな」
プロの傭兵が口にするなら、それは冗談ではない。
「チッ」
傭兵の素直な意見は、グレイスの神経を逆撫でしてしまう。
面白くないのか、苦虫を噛み潰したような顔をする。
(クッソ、忌々しい女め、ただじゃ済ませないからな)
のっけからうまくいかないグレイスは、全てサラのせいだと言わんばかり、激しく憎悪を剥き出していた——。
※※※※※※
【サラの部隊】
森の中を黒い影が、風を切るように颯爽と通り抜けていった……。
少し遅れて——。
「はぁ、はぁ……」
「ゼェ、ゼェ……」
とても爽やかとは言い難い呼吸音。
森の中を走破するのは、並大抵のことではない。
腐葉土で柔らかくなった地面は、容赦なく体力を奪う——。
「サ、サラ……ちょっと休憩しよう」
肩で息をするウルフと護衛たち。
まだ涼しい季節にもかかわらず、見るからに全身汗だくになっていた。
「ンッ? もうバテたの?」
一方のサラは、額に汗が滲む程度だ。
振り返ると、不思議そうな顔をしていた。
「も……森の中を……どうやって……そんなに早く走れる……」
「エルフと遊べば、このくらい当然でしょ。これでも全力じゃないよ(笑)」
「……」
ウルフはあまりの体力に呆れ、エルフの身体能力の凄さを知る護衛たちは、うんうんと頷く。
サラは気にすることなく端末を取り出し、現在位置を確認しつつ時計を見る。
「そろそろ時間か……内部に向けて歩いて移動しましょう」
戦闘エリアは30分ごとに段階的に縮小する。
サラはフィールドアウトを避けつつ、進軍するつもりだ。
「それは助かる……後の連中と合流するのか」
「ええ、そうよ、連絡が取れたわ。合流したら裏とりよ」
「そうか……いよいよだな」
夢中で走っていた時に、会敵する事はないと理解していたウルフ。
だが次のポイントに向かえば、近くに敵が潜んでいる可能性が高い。
訓練とはいえ、否応なく緊張感が増してきた——。
「さあ、休憩はお終い、行きましょう」
ハイドレーションパックを空にしたサラは、ゴミをポケットにねじ込み、歩き始める。
※※※※※※
【上空3000M・強襲艇】
演習の監視は地上だけではない。
上空にも監視用ドローンを展開し、さらに緊急事態に備えて、強襲艇も待機させていた。
「アーレイ陛下、ステイシー様を放置するおつもりでしょうか」
今回は人手が足りず、デルタの屋敷から執事のケネスまで呼び出していた。
キースからの報告を聞き、さすがに少しビビっている。
「ヤバくなったら、ムサイおっさんを送り込む(笑)」
「おい、アーレイ! ムサイとはなんだ!」
話が漏れたのか、後方の座席から懐かしいファマスの声が飛んでくる。
すっかりジジイになったとはいえ、剣技は衰えていなかった。
だからこそ、その腕を買われ、護衛の任務に招待したのだ。
「戦いが無くて暇してたんだろ」
「ふん!」
今のガルーダ合衆国に、大きな争いなど無い。
要するに、平和なので暇なのだ——。
「フィー様にはいつ会えるのだ」
「これが終われば会えるよ。楽しみに待ってろ」
フィリーサとは、当分の間会っていないファマス。
嫁ぐ前まで我が子のように接してきた分、会いたい気持ちは格別なのだろう。
ファマスの背中からは、どこか哀愁が漂っていた——。
※※※※※※
【サラの部隊】
仲間と合流したサラは、境界線をさらに進んでいた——。
「みんなよく聞いて、ここから中心に向かう」
境界線沿いに敵が現れず、すでにそれなりに奥地まで入っていた。
なので、ここから中心部に向かえば、必ず会敵すると踏んでいた。
「いよいよだな」
「私が先頭で索敵するから、それとね——」
サラは、さらに細かい作戦を説明していく。
敵を発見しても、むやみに撃たない。
遠方から撃たれても、こちらから撃ち返さず、まずは身を隠す。
そして――。
十分に距離を詰めてから、一気に叩く。
「みんな理解した」
「……」
「ああ、問題ない、最善手だ」
ウルフは納得したのか、肩に下げていた銃を下ろし小脇に抱える。
三人の戦友達は、もうそこに敵がいると思ったのか、小さく震えていた。
「さあ、行くわよ!」
ここまで来たら先にすすむしか無い。
戦友達は覚悟を決め、後を付いていく。
そして20分後——。
シー!
先頭のサラが立ち止まり、振り返ると口に指を当てた。
後方からは見えないが、敵を発見したのだ。
(ウルフはハンドサイン分かるよね)
サラは中指と人差し指を自分の目元に当ててから、右に五人、左に五人とハンドサインを送った。
(二つの部隊の混成か……)
ウルフは護衛と戦友を右に行かせ、自分はサラについて行くと、ハンドサインで送り返した。
サラはコクリと頷くと、最後にアタックは自分が行うと合図して、先にすすみ始める――。
「左は瞬殺しないと詰むわよ、囮を兼ねているからね」
「これは緊張するな――俺が三名受け持つよ」
ウルフの問いに、サラは答えることなく、銃を構え体勢を低くすると、獲物を狙う表情に豹変した。