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ハードなトレーニングが終わり、湯気が立ち込めるブルーロックの大浴場。
潔は、隣で手際よく長い髪をまとめている千切豹馬の、あまりの美しさと髪の滑らかさに目を奪われていた。
「……なぁ、千切。お前、マジで髪綺麗だな。どんなケアしてんだ? 俺なんて、石鹸でゴシゴシ洗って終わりだから、バシバシになっちゃうよ」
潔が純粋な憧れの目で尋ねると、千切はふっと不敵に、けれどどこか優しく微笑んだ。
「ストライカーなら身だしなみにも気を遣えよ、潔。……ほら、貸してみろ。俺が手本を見せてやる」
「えっ、マジか!? ありがとな、千切!」
潔は素直に千切の前に座り込んだ。千切は潔に対して恋愛感情はなく、ただ「手入れのし甲斐がありそうな素材」として、美容師のような手つきで潔の頭にシャンプーを乗せた。
千切の指先が、潔の地肌を優しく、けれど的確にマッサージするように動く。
「……ん、……ぁ、……そこ、気持ちいい……」
千切の丁寧な指使いに、潔は昨日の疲れが溶け出すような感覚で、ふにゃりと力を抜いた。しかし、その「ふにゃふにゃ」になった潔を、黙って見ていられない男たちがいた。
「……おい、潔。……俺が背中を流してやる。前を向け」
凛が、無表情ながらも殺気立った様子で潔の正面に陣取った。
「え、凛!? いいよ、自分でやるし……あ、凛、そこ、くすぐったい……っ!」
「黙れ。……効率的に洗えと言っている」
凛が潔の鎖骨や首筋を執拗にタオルでこすり始めると、横から玲王が割り込んできた。
「潔! 髪を洗ってもらってる間、暇だろ? ほら、最高級のフルーツ牛乳持ってきたぞ。飲ませてやるから口開けろ」
「えぇ!? 今、頭洗ってる最中だぞ、玲王! ……んぐ、……ぷはっ、……ちょっと、こぼれる……っ!」
さらに、どこからともなく凪が潔の背後に密着し、千切の腕の間から潔の耳元に口を寄せる。
「……潔、……俺も洗ってほしい。……潔の隣がいい」
「凪、狭いって! 千切が洗いにくいだろ!」
潔を取り囲んで、あーだこーだと世話を焼き、あるいはマーキングのように体に触れていく面々。
その中心で、千切は淡々と潔の髪をすすぎながら、次第に眉をひそめていった。
(……待て、こいつら。……さっきから何やってんだ……?)
千切の冷静な目から見れば、今の光景は異常事態だった。
凛は不器用な手つきで潔の胸元ばかり念入りに洗っているし、玲王はもはや潔を「お姫様」か何かと勘違いしているような過保護ぶり。凪に至っては、潔の肩に顎を乗せて完全に自分だけの空間を作ろうとしている。
「……おい、お前ら。潔が溺れるだろ。少しは離れろよ」
千切が呆れたように声をかけるが、誰一人として動かない。むしろ、千切が潔のうなじに触れてシャンプーを流した瞬間、三人の視線が「そこを触るな」と言わんばかりに千切の手に突き刺さった。
(……怖っ。……こいつら、潔のこと好きすぎて頭おかしくなってんのか?)
「……なぁ、千切。……なんか、みんな今日……熱心だよな。……あ、……そこ、くすぐったい、……んっ……」
潔が無自覚に甘い声を漏らすと、周囲の三人の空気がさらに「ピリッ」と張り詰める。
千切は、潔の「恋愛偏差値2」の鈍感さと、周囲の「重すぎる愛」の温度差に、心底同情した。
「……潔、お前……。……いや、なんでもない。さっさと上がらないと、こいつらに食われるぞ」
「え? なんでだよ、みんな優しいじゃん!」
千切は、タオルで潔の頭をバサバサと豪快に拭きながら、「……本気で気づいてないのか、このバカ」と、天を仰ぐしかなかった。