テラーノベル
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「……そうだ、誰かに唆されたんだよね? いいよ、無理に隠さなくても。俺には全部、分かってるから。……ねえ、誰に言えって言われたの? どこの誰が、俺から君を奪おうとしてるの?」
(……いや怖……っ)
玲於の瞳の奥が、真っ暗な穴のように濁っている。
冗談じゃ済まされない、一歩間違えれば壊れてしまうような空気を感じて、俺は慌てて首を振った。
「じょ、冗談だって…ちょっと頭に血が上っただけ、マジになんなし……!」
その言葉を聞いた瞬間
玲於の表情がパアっと、魔法でもかかったかのように花が咲いたように明るくなった。
「なんだ~、よかったぁ……。焦らせないでよ、霄くん」
憑き物が落ちたような笑顔を見せ、肩を掴んでいた力がふっと弱まる。
それどころか、玲於は愛おしくてたまらないという風に、壊れ物を扱うような繊細な手つきで俺をぎゅっと抱きしめた。
「……さ、最近の玲於、怖いって……。今も、肩痛かったし……」
されるがままの俺が心臓の鼓動を落ち着かせながら小声でぼやくと
玲於は俺の項に顔を埋めて、子供のように無邪気に笑った。
「……はは、ごめんごめん。霄くんのことになると……俺、全然ダメなんだ。余裕、なくなっちゃうんだよ」
そう言うから、やっぱりコイツには敵わないと痛感する。
◆◇◆◇
その翌日──…
玲於の家でのデート中
窓の外には夕暮れ時の淡いオレンジ色が広がり始めている。
部屋の中は空調の微かな音だけが響く、静かで濃密な空間だった。
ソファで並んでくつろいでいると、不意に玲於が
「これ、霄くんに」と言って、上品な光沢を放つ小さな箱を差し出してきた。
「え?」
促されるままに蓋を開けると、中には俺が以前からずっと欲しがっていた、少しエッジの効いたブランドのチョーカーが入っていた。
黒いレザーの質感はしなやかで、中央で冷たく光るシルバーの金具が、どこか背徳的な色気を放っている。
「えっ……これ、高いやつじゃん……!しかも俺が欲しがってたやつ……!!」
驚きで目を見開く俺に、玲於は照れくさそうに頭を掻きながら、心底愛しそうに目を細めた。
「嫉妬させすぎちゃったから、昨日のお詫びっていうか。……っていうか、俺がプレゼントしたくなっちゃってさ。ずっと、付けててくれたら嬉しいな」
その優しい微笑みを見て、俺の胸は温かい幸福感でいっぱいになった。
やっぱり俺は、この世界で一番こいつに愛されている。
昨日の、あの底冷えするような怖さも
肩に残った微かな指の痛みも、全部俺を好きすぎるせいなんだと、再確認できたような気がした。
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