テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
.。 .:・.。. .。.:・
竜馬はハーレーのシートに無理やりくくり付けた、オレンジが入った紙袋を何回も確認しながら低スピードでノロノロ運転していた
「アンディ・ビームス」の小麦粉工場で一日粉まみれになってアルバイトをした竜馬にビームスがジャスティンと分けろと竜馬の座高ほどある大きな紙袋一杯に、摘みたてのオレンジをくれたからだ
でも、その紙袋はあちこち破れていて、いくら気を付けて運転しても、一個、二個とバイクから転がり落ちて行く
最初、竜馬は落ちるたびにハーレーを停めて拾っていたけど、これではジャスティンの家に到着するまでには日が暮れてしまうと考え、もう落ちたオレンジは気にせず、半分も残ればいいだろうと妥協してハーレーを急がせた
しかし、ジャスティンの家に着いた時は竜馬が思っていたよりオレンジは無事で、紙袋八分目まで残っていたので、嬉しくなってフフフと笑った
そして通りを見たらポツンポツン・・・と竜馬が落としたオレンジが転がっている、破れた紙袋の箇所を押さえ、それを拾って良い匂いのするオレンジを紙袋一杯に胸に抱え、勢いよくジャスティンの家の鉄製の階段を登った
そしてまた一つオレンジを落としたけど、後で拾えばいいかと、気にせずドアを勢いよく開けた
ガチャッ!
「ジャスティンッ!!オレンジッ!」
一瞬その場に立ち尽くし・・・竜馬はオレンジの入った紙袋をドサッと落とした
落ちたオレンジが床に弾み、あちこちに転がった、そのうちの数個が階段を一段飛ばしで転がって落ちて行く・・・
目を閉じる前に、目の前の光景が脳に焼き付いてしまった
全裸でベッドにうつぶせになっているジャスティンが、青白い尻をこちらに向けて横たわっていた
そして・・・その横には同じく全裸の黒人の少年が、ジャスティンに腕と脚を絡ませて横たわっていた
―ブライトだ・・・―
.。 .:・.。. .。.:・
名前がこだまのように竜馬の頭の中を漂った、その少年は知っていた、竜馬の隣のクラスのフットボールの花形選手だった、もちろん話したことなどない、ましてや彼がゲイだったんて・・・・
そしてジャスティンが・・・・まさか
ブライトが驚きの声を上げた、いやジャスティンかもしれない、もしかしたら竜馬かも
竜馬はぎゅっと唇を引き結んだ、感情を欠いた思考は何も考えられなくなり、ジャスティンが竜馬を見た、彼自身も驚きの表情から当惑へと変わった
―とにかくこの場を離れなきゃ・・・―
唯一まともな考えだったのかもしれない、竜馬は踵を返して鉄の階段を駆け下りた
地面に足が着いた時にオレンジを一つ踏みつぶした、磨いたばかりの建物の隅に停めてあったハーレーがキラキラ夕日に輝いている、竜馬はすかさずハーレーに跨りエンジンをかけた
一回吹かすごとにエンジンの回転音が辺りに鳴り響く、エンジンの回転音が滑らかになった時に、視界の隅にジャスティンの姿が見えた
シャツの前ボタンを止めずにほとんど走るように、階段を降りてこっちにやってくる
竜馬はもう一度アクセルを吹かしてシートに腰を下ろした、ジャステインはハーレーの傍らで足を止めた
「エンジンを切れ!!」
ジャスティンの言葉を邪魔するように、竜馬はアクセルを吹かし続けた、ジャスティンは諦めず竜馬の方へ上体を傾けて声の限り叫んだ
「お前は誤解しているっ!!」
しかし今度もその声は全てを拒絶する竜馬がアクセルをわざと吹かしたので、マフラーの爆音にかき消された、竜馬は(聞こえないよ!)とばかりに自分の耳の裏を指で押さえ、ジェスチャーをした、ジャスティンの顔は怒りで真っ赤になった
「とにかく話を聞けって言ってんだろ!!」
「何を言ってるか聞こえないよ!っっ!」
竜馬はスタンドを蹴ってバイクを走らせた、ぐるりと旋回してけたたましいエンジン音と共に去って行った
ジャスティンは両手を広げたまま、しばし走り去る竜馬を見送っていたが
やがて意を決したように踵を返すと、ガレージに向かって走り出した
𝒩𝑜𝒶 𑁍𓏸𓈒
151
シャルル・アント
64
汐梨
71
321
コメント
1件
いやあ……160話、衝撃でしたね。オレンジを抱えて「ジャスティンッ!!」って勢いよく開けた先にあの光景。読んでるこっちまで固まっちゃいました。前半のほのぼのしたバイク運転の空気感があったからこそ、そのギャップがえぐい。踏み潰されたオレンジが、竜馬の心情をそのまま表してるみたいで切なかったです。ハーレーのエンジン音でジャスティンの声をかき消す選択、なんかもう苦しい。続き、どうなるんだろう……