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「奨くん、貴方は、、、未来から来たんだよね?」
蓮は、まっすぐに奨の瞳を見つめた。
奨は何も答えることができなかった。
「…なんで、そんなこと言うの?」
奨は、努めて平静を装い、冗談めかした口調で答えた。
蓮は、奨が本気ではないと分かっているはずだ。こんなありえない話、信じるわけがない。
だが、蓮の顔から、笑顔は消えていた。
「冗談じゃないよ。奨くんは、全部知ってるんでしょ。俺たちがこれからどうなるか、誰がデビューするか…全部」
蓮の真剣な眼差しに、奨はたじろいだ。
この秘密を話せば、二人の関係は壊れてしまうかもしれない。
未来を変えてしまうかもしれない。
「…そんなこと、あるわけないでしょ。蓮、疲れてるんじゃない?」
奨は、蓮の言葉を最後まで否定した。
だが、蓮は、奨の目から、微かに揺れる動揺を読み取っていた。
「そっか…そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
蓮はそう言うと、静かに立ち上がり、非常階段を下りて行った。
その背中は、どこか遠ざかっていくように見えた。
奨は、蓮の言葉を否定することで、未来の自分との絆を守ろうとした。
だが、その選択は、今の蓮との間に、深い溝をつくってしまったのだった。