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夜中の12時を過ぎていて車が殆んど通っていなかったのが幸いした。マナのこととなると我を忘れてしまっている自分に気付かされた。
はっ!?
まっ、まさか――。
そうか、そうだったのか――。
こんなことがキッカケで俺の中の探しても見つからなかったパズルのピースが見つかり、埋められていくなんて――。
それから5分程度で荻野さんのマンションに到着した。そして車を降りると、エレベーターを使って30階にいるマナに会いに行った。
ピーンポーン―――
すると直ぐにドアが開いて、マナが顔を覗かせた。
「圭ちゃん――」
マナはゆっくりと俺に抱きつき胸に顔をうずめてきた。
「大丈夫か?」
「うん、圭ちゃんが来てくれたからもう大丈夫! あのさ――圭ちゃん家に行ってもいい?」
「あぁ、好きにしろよ。あそこはお前の家だろ」
「うん」
それからマナを乗せて、俺のアパートに向かった。俺とマナは特に言葉を交わすことはなかった。互いに謝りもしなかった。きっとこうしていることが答えなのだとわかった。しばらくするとマナの寝息が聞こえてきた。よっぽど眠かったようだ。アパートに着いても、マナは起きなかった。仕方なく、マナをおぶって部屋まで行くことにした。
「圭ちゃん――」
「起きてるのか?」
耳元で俺を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
「寝てるよ」
「そっか」
「圭ちゃんあったかい。圭ちゃんのにおいがする」
マナは俺の首筋に鼻を押しあてて匂いを嗅いでいた。
「やめろって、くすぐったいだろ」
「やだよぉ」
俺とマナって、いつもこんな感じだった。こんなことがきっと幸せなんだと感じた。
「マナ、俺さ――」
「――――」
「マナ――」
「スゥーースゥーースゥーー」
寝てしまったようだ。それから部屋に入ると、マナを寝室にある俺のベッドに寝かせて俺は隣のリビングのソファーに寝ころんだ。しばらくは寝つけなくて、ずっと天井を見上げていた。
《圭ちゃん、寝たの?》
マナからのメールだった。隣の部屋にいるのに、わざわざメールしてくるなんて――
《まだ起きてるよ。寝られないのか?》
《うん、一緒に寝て》
《寝るまでだからな》
《わかった》
そして俺はマナのいるベッドに入った。するとマナはいつものように俺に体をすり寄せて抱きついてきた。
「圭ちゃん、私がいなくて寂しくなかった?」
「―――――」
「私は寂しかったよ」
「――――。俺もだ」
「ごめんね」
「何が?」
「お嫁に行くことになっちゃって」
「何謝ってんだよ。マナが1番好きな人と結婚するんで出て行ったんだから良かったに決まってんだろ」
「そうだけどさ」
「おめでとう」
「急にどうしたの?」
「まだ、1度も言ってなかっただろ」
「圭ちゃん――」
するとマナは布団の中に潜り込み、体を震わせていた。
「何かあったらいつでも戻って来いよ。ここはお前の家なんだからさ。そうしたら、また旨いもん作ってやる」
「バカっ! 優しくすんな!」
「いつもだろ」
「そんなに優しくされたら――」
「幸せになれよ」
俺はマナを力いっぱい抱きしめた。マナも俺の腰に腕を回して力いっぱい抱きついてきた。