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玲央がゼノの科学王国に滞在するようになって数日が経った。
与えられたのは、科学施設の雑用と、時折行われる”テスト”。ゼノの助手たちがやる作業を観察し、最低限の知識を吸収することが求められた。
しかし、玲央は科学に関しては素人だ。
玲央(……こりゃキツいねぇ。)
ゼノの要求は高く、玲央が適当にごまかして乗り切るには限界があった。
とはいえ、ゼノはすぐに玲央を切り捨てるつもりはないようだった。何かしらの”可能性” を感じ取っているのか、玲央に興味を持ち続けている。
そんなある日──
玲央はゼノの部屋に呼び出された。
ゼノ「君には科学の才能はないが、代わりに歌の才能があるようだ。」
玲央「おや、俺のライブを聴いたことが?」
ゼノ「ふっ、君が夜に口ずさんでいた歌を聞いた。それなりに美しい旋律だったよ。」
玲央は少し驚いた。まさかゼノが聞いていたとは。
玲央「ま、音楽は俺の武器みたいなもんだからねぇ。」
ゼノは指を組み、じっと玲央を見つめる。
ゼノ「取引をしよう。」
玲央は片眉を上げた。
玲央「取引?」
ゼノ「君がここで有益な存在であると証明できるなら、ある程度の自由を認めよう。」
玲央は少し考えた。
(自由をくれるってことは、俺がここで役立つ何かを見つければいいってことだよねぇ。)
玲央「なるほどねぇ。それで、俺に何をしろって?」
ゼノは微かに笑い、紙を数枚差し出した。そこには、何やら細かい計算式や設計図が書かれている。
ゼノ「これを解読してみろ。」
玲央「……科学のことは分からないんだけどねぇ。」
ゼノ「分からなくてもいい。直感でいいから、何か思うことがあれば言ってみたまえ。」
玲央は紙をじっと見つめた。そこに書かれている内容はさっぱり分からない。ただ、音楽をやってきた感覚で、パターンや流れを読むことには慣れている。
(この数字の並び……なんか、リズムがあるねぇ。)
玲央は紙を指でトントンと叩きながら言った。
玲央「これ、途中でパターンが変わってるよねぇ?最初は安定してるけど、途中から流れが速くなってる。」
ゼノは興味深そうに目を細めた。
ゼノ「ほう?」
玲央はさらに考える。
玲央「音楽で言うなら、最初はゆったりしたテンポで、途中からアップテンポになる感じ?」
ゼノは少し沈黙した後、口を開いた。
ゼノ「……君は面白い視点を持っているな。」
玲央「おや?褒められた?」
ゼノは微かに笑った。
ゼノ「どうやら、君は”リズム” を読むことが得意らしい。」
玲央は肩をすくめる。
玲央「ま、歌と戦いはリズムが命だからねぇ。」
ゼノは静かに頷いた。
ゼノ「ならば、君にはある実験に協力してもらおう。」
玲央「実験?」
ゼノが手を叩くと、助手の一人が何かの機械を持ってきた。それはスピーカーのようなものだった。
ゼノ「音の振動を利用して、物質の性質を変える実験だ。君の”リズム感”が役に立つかもしれない。」
玲央は興味深そうに機械を見つめた。
玲央「……面白くなってきたねぇ。」
こうして、玲央はゼノの実験に協力することになったのだった