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ゼノの科学チームの一員として、玲央は毎日のように様々な実験に参加させられることになった。
とはいえ、科学の知識は皆無に等しい玲央。最初は訳が分からず、ただゼノやその助手たちの指示に従うだけだった。
だが、玲央には”音楽的なセンス”があった。
実験で使われる機械の動作音、化学反応の際に発生するわずかな音の変化、装置のリズム……それらを自然と感じ取ることができたのだ。
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ゼノの研究室
ゼノの前には、一台のスピーカーのような機械が置かれていた。
ゼノ「音の振動で物質の構造を変化させる……その理論自体は昔から存在していたが、実用化には至っていない。」
助手たちが周囲で実験の準備を進めている。
ゼノ「音波が特定の周波数で共鳴すると、物質の内部に影響を与える。例えばガラスが特定の音で割れるようにな。」
ゼノがスイッチを入れると、低い振動音が部屋に響いた。机の上に置かれた金属板がわずかに揺れる。
玲央「なるほどねぇ。音楽と似てるねぇ。」
ゼノが興味深そうに玲央を見つめる。
ゼノ「ほう?どういう意味だ?」
玲央「音楽もさ、単なる音の連なりじゃなくて、人の感情を揺さぶる力を持ってるんだ。つまり、音は”作用する”んだよねぇ。」
ゼノは静かに微笑んだ。
ゼノ「君のその感覚……実にエレガントだよ。」
玲央はスピーカーの前に歩み寄る。
玲央「試していい?」
ゼノは頷き、助手の一人が音を調整する装置を渡した。
玲央は装置のダイヤルを回しながら、指で軽くリズムを刻む。
(……音の”流れ”を感じる……この周波数じゃないねぇ。)
玲央はさらに調整し、ある一定の音域に到達した瞬間、金属板が一気に振動した。
助手「!? 反応が大きくなった!」
ゼノ「ほう……これは面白いな。」
玲央は満足げに笑う。
玲央「やっぱり、音楽も科学も”ノリ”が大事だねぇ。」
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玲央の決意
その日の実験後、玲央は一人で夜空を見上げていた。
(……いつまで、ここにいるつもりなんだろうねぇ。)
ゼノたちは興味深い。科学という未知の世界に触れるのは面白い。だが、それでも玲央の心はどこか落ち着かなかった。
(俺がいた場所はここじゃない。千空たちのところだ。)
その時、玲央の頭にある考えがよぎった。
(もし、俺がこの研究を”利用”できたら……)
玲央は唇を軽く噛んだ。
(ゼノの技術を、千空のために持ち出すことができるかもしれない。)
そのためには、ゼノの信頼を得る必要がある。
玲央「面白くなってきたねぇ。」
玲央の目が鋭く光る。
ここからが本番だった。