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#Paycheck
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夜のバー。
客はほとんどいない。
エリオットはカウンターに肘をついている。
グラスの氷をカランと鳴らした。
「なあ」
チャンスは隣に座っている。
「何だ」
エリオットは横目で見る。
「最近さ」
少し間。
「俺のこと避けてない?」
チャンスの手が一瞬止まる。
でもすぐグラスを持ち上げる。
「気のせいだ」
エリオットは笑う。
「嘘」
沈黙。
バーのジャズが流れている。
エリオットは体をチャンスの方に向ける。
「俺なんかした?」
チャンスは答えない。
グラスの中の酒を見ている。
エリオットは少しだけ真面目な声になる。
「なあ」
「……」
「前みたいにからかってこないじゃん」
チャンスは小さく息を吐く。
「仕事だ」
「は?」
「最近忙しい」
エリオットはじっと見る。
それから笑う。
「嘘下手だな」
チャンスの眉が少し寄る。
エリオットは言う。
「なあチャンス」
少し酔った声。
「俺のこと嫌いになった?」
その瞬間。
チャンスが顔を上げた。
少しだけ怒った顔。
「……なるわけないだろ」
エリオットは少し驚く。
その声は思ったより強かった。
沈黙。
チャンスは視線をそらす。
「ただ」
低い声。
「距離置いてるだけだ」
エリオットは首をかしげる。
「なんで?」
チャンスは答えない。
しばらくして。
小さく言う。
「……壊したくない」
エリオットは一瞬意味が分からない。
「何を?」
チャンスは言わない。
でも。
その沈黙で。
エリオットは気づく。
目が少し大きくなる。
「……あ」
チャンスはグラスを飲み干す。
「忘れろ」
立ち上がる。
でも。
エリオットが腕を掴んだ。
「待て」
チャンスは振り返る。
エリオットは少し笑っている。
でも耳が赤い。
「それさ」
少し間。
「もう遅い」
チャンスは眉を寄せる。
「何が」
エリオットはニヤッと笑う。
「俺も壊す気満々だから」