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昼休み前のチャイムが鳴ると、噂を流していた女子たちは、わざと泉の方を見ながら席を立った。
「ねえ見た?あれで“よろしく”とか言っちゃうんだ」
「ほんと、ちょろいよね〜」
ひそひそ声が背中に刺さる。
泉は聞こえないふりをした。
でも、隣の紗良の肩が小さく揺れたのが分かった。
「……住田さん、大丈夫?」
声をかけると、紗良はすぐに笑ってみせた。
「うん、大丈夫。慣れてるから」
その“慣れてる”という言葉が、泉の胸に重く落ちた。
――こんなの、慣れる必要ないのに。
「さっきの噂……私、信じてないから」
泉がそう言うと、紗良は一瞬だけ驚いたように目を丸くした。
「……茅野さんって、変わってるね」
「変わってる?」
「普通は噂の方を信じるよ。でも茅野さんは……ちゃんと私を見てくれる」
その言い方が、どこか寂しげで、でも嬉しそうで。
泉は胸がぎゅっとなった。
「そんなの、当たり前だよ」
紗良はふっと笑った。
さっきより少しだけ、柔らかい笑顔だった。
けれど――
その様子を見ていた女子二人組は、明らかに面白くなさそうに泉を睨んでいた。
「……転校生のくせに、調子乗ってる」
「昼休み、ちょっと呼び出そっか」
嫌な予感が、泉の背中を冷たく撫でた。
そして昼休み。
泉はひとりでトイレへ向かうことになる。