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「……何を、」


今にも唇が触れそうな至近距離にまで彼女の顔が迫り寄った矢先、


「失礼します」声がして、ドアが開いた──そこには、永瀬さんの姿があって、


「あっ……」と思わず声を上げ、笹井さんを突き放した。


同時に、「ごめんなさい!」という声とともにドアが閉められるのを、呆然と見つめた。


「……先生?」


笹井さんに訝しげに顔を見られて、


「すいません…」と、突き放したことを謝った。


「またの機会にでも。午後の診療の準備もありますので」


「ええ〜そうなんですかー……」


さもつまらなさそうに口にするのに、


「あなたも早めに開院の準備をしておいてください。また、週末にでもお誘いはしますので」


そう伝えると、彼女は渋々ながら踵を返しルームを出て行った──。


外からは、喋る声が途切れ途切れに聴こえていた──。



「今ね…先生と、キスしそうだったの……見てた? なのにあんたが急に来るから、キスできなかったじゃない……」


「そう…ごめんね…」


「けど智香が来たぐらいで、先生もキスするのやめなくてもいいのにねぇー。


先生ってば、なんであんたのことなんか気にしてるんだか…ねぇ、ちょっと聞いてる?」




彼女は、どんな表情かおで会話をしているんだろうかと思うと、自分の胸までがなぜか痛んでくるようにも感じられた……。


私は、また彼女を追い詰めたんだろうか……いや、追い詰められたのは、本当は自分の方なんだろうか……?


その日、寝つくまで思い悩んで、


なんの答えも得られないまま、翌日、そうせずにはいられない思いで彼女を誘った──。

「責め恋」政宗一臣先生Ver.

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