この葛藤にどう決着を付ければいいのか計りかねた末に、
逃がしはしないという欲望に強く駆られ、部屋へ連れ込んだ彼女をお仕置きと称してベルトで縛り上げた。
ベッドの柵に手首を拘束して、傍らに腰を落とし、ウイスキーをロックで口にする内……、
放置をされていることに気づいて羞恥に赤くなるのを見ていたら、わけもなく込み上げていた溜飲がようやく収まるのを感じた。
「……君は、そうやって私の言う通りにしていればいいんです……」
気持ちが落ち着いてくると、俄かに酔いがまわった。
普段はそうそう酔うことはないのに、手首を革ベルトで拘束した彼女の痴態を眺めていたら、
アルコールの巡りがいつもより早まるようだった……。
細い首筋を舌先で舐ると、
「ん……」
彼女の口から甘やかな声音が漏れて、
「……いいですね。私を煽るような、その声……」
口づけて貪り求めなければ、突き上げる本能を抑えられそうにないと感じる。
欲望に掻き立てられるように抱きながら、
「……はずしてほしいですか? これを」
拘束した手首が薄赤くなっているのを見咎めて、
「素直に頼めば、はずしてあげますよ…」
そうしなければ自らが翻弄され官能に押し潰されてしまいそうにも思えて、いくら子供じみた考えだろうと彼女の口から嘆願をさせて、自分が優位にあることを知らしめずにはいられなかった……。
「…………はずして……」
「では、素直に言えたので取ってあげますよ…」
彼女の手首に残る赤みを撫でさすりながら、言葉を引き出せたことにクッ…と満ち足りた笑みがこぼれる。
「……こんなに真っ赤になって、かわいそうに」
と……さすっていた手が、「やっ…!」叫んで唐突に振り払われて、
「……そろそろ気づいたらどうです? 拒んだりすれば、よけいにこちらの気を煽るだけだということに」
まだ抵抗をするのかと、不意に憎らしさが込み上げて、ぶつけずにいられなかった激情が、
「……どうして、こんなことをするんですか? ……真梨奈には、優しくしたんですよね?」
彼女の切ないまでの台詞を耳にした刹那、一気に削がれるのを感じた──
しかし──伝えるべきはずの、(君を思い通りにはできない焦りから、笹井さんを受け入れたに過ぎない)という、肝心なことは言えずに、
自らの口を出たのは、
「君も、優しくしてほしいとでも……?」
彼女をより煽り立てるような言葉だった……。
私には、簡単に本音など言えるはずもない……。
まして、長く隠し通してきたはずの本当の自分を、安易に晒け出すようなこともできなかった……。
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