テラーノベル
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羽海汐遠
13,997
奏
14
この世界には「心能力」というものが存在する。これははるか昔からあったものかと言われるとそうではない。近代、現代初期と人々が世界を巻き込む巨大な戦いに巻き込まれていた時代、明日への希望、自分の命が脅かされることへの不安、未来への思い、人々は数え切れないほどの思いを抱えていた。これが心能力が生まれる起源になっているという説もある。そして、20世紀初期、初めての「心能力」が芽生えた
。これを境に世界中で数多の心能力者が誕生し、世界人口の半数が心能力を保有するようになった。二度の世界大戦中、心能力者は兵士として強制的に戦場に出され、その多くが命を落とした。先人たちは同じ過ちを二度と繰り返さぬよう、二十世紀中頃、「世界心能力抑制宣言」が出され、戦争や犯罪行為、人徳に違反する行為に心能力を使うことを禁ずる内容の条約が発足され、世界中で承認されている。
「あ」
家を出る十分前。何を思ったかボクは長くなった前髪がうざったらしくなり、思い切ってきってしまった。結果はまぁ、、、カッパのような、、、日本人形みたいなものになってしまったのだが。
「やっべー、、、、」
「新学期早々これかよ、、、、」
背に腹はかえられない。渋々リュックを背負っていつもの電車に乗り、自分の通う高校へ向かった。道中視線を感じたような気もするが、気にしないようにする、、、ことなんてできず、ガラスの反射やスマホのインカメで前髪を触ったり確かめては、ため息が漏れる。
「前髪命の女子高生かよ、、、」
そう呟いた途端。
「おっはよーー!!!キョーヤ!久しぶりだな!」
大きな声とともに背中に衝撃が走る。背中を叩いたのはボクの友達のライトだ。まぁ名前の通り電気に関する心能力を持つ。ちなみにボクは非能力者だ。ただボクは前髪と額を右手で抑えたままだ。
「、、、おはよ」
「?あれキョーヤどうしたん?なんでデコ抑えてんの?」
「別に」
「え〜?いいからどかしてみろよ🎶」
「ぇ、ちょまっ」
日本人形前髪が露わになる。
「、、、、、、」
「アハハハっ!!」
「どっ、、、どーしたそれっ!アハハハっ」
「うっせーなー!だから嫌だったんだよ!」
不貞腐れながらつぶやく。
「わりーわりー!でも似合ってるぞ!キョーヤ目きりってしてるかんな!目元のインパクトいいと思うぞ!」
「ところで冬休みさー、、、」
他愛のない話が続き、学校につき、教室の戸を開ける。
「おはよーー!」
「おはよ」
ボクたちの挨拶がこだました途端、視線がボクたちにうつって、、、ボクの前髪に写った。
「あれ!?キョーヤ君どーしたのー!?」
「かーわいい!」
「似合ってんぞー」
三者三様な言葉が耳に入る。女子の冷やかしか本心かわからん可愛いの連呼と、男子の100%面白がってる冷やかしの声。
「あれ?ここちょっと長くない?」
女子のひとりがそう言うと開いた手鏡を持って、近づいてきた。
「イヤ、チョットゲンジツミタクナイカラ、、、、」
そう言って逃げようとするボクの肩を掴んで鏡を差し出された。ボクは咄嗟に鏡を手で覆うように鏡に触れた、、、途端
「ぬるっ」
鏡の中にボクの手が入った。
「、、、、は?」
周囲が困惑の渦に巻き込まれる中、ライトは一瞬眉をひそめたがすぐに戻し、
「キョーヤ、、、お前心能力者だったん!?なんで黙ってたんだよ〜」
ライトがボクに肘でちょいちょいっといじってきた。
「え、、?いや。知らな、、え?」
「俺は非能力者のはず、、、だけど」
「でも鏡ん中に手入ったじゃん。もっかい突っ込んでみろよ!」
ワクワクしたようにライトが言う。
ボクは同じく状況を読み込めてない手鏡に持ち主の女子生徒から手鏡を借りて、
指でそっと鏡に触れると、、
「入った、、、」
それからというもの、周囲にいた人間には一応箝口令を出して、言いふらさないようにお願いした。新学期初日の学校は始業式だけで、一瞬で過ぎ去り、帰りのホームルームを終えてそれぞれ放課後の予定に取り組もうとする中、、
「キョーヤ!今日お前ん家行ってもいい?一緒に今朝のそれ調べようぜ!」
ライトがボクの元へ来た。
「確かに特にやることも無いし、、、能力者のライトがいた方が色々わかることもあるか。いいぞ。コンビニでお菓子でも買うか」
「さんせー!!」
そしてキョーヤの家にて、キョーヤの家は母親とキョーヤの二人暮しだが生活には困っていない。話は戻るが、2人はキョーヤの部屋でそれぞれひと段落ついている。
「相変わらずお前の部屋物ねーよなー」
「もっとなんかインテリアに興味もてよー?参考書ばっかじゃつまんねぇじゃん。」
「そんなこと言うならお菓子開けねぇぞ」
「わっ!ごめんてー!!」
「はいはい笑。お茶でも入れてくるから待っとけよー」
「ありがてぇ!」
バタンっと扉が閉まるとライトの目が変わる。瞬時にキョーヤの部屋を調べるように見回す。
「、、、今流行りの薬物ではないか?、、、ただの遅咲きなのか。、、会話も精神状態も安定だから、、やっぱ違うか」
廊下を歩く音がし、ライトは何も無かったようにキョーヤを迎えた。
「おかえりー」
「はいよ。ライトは緑茶。」
「ボクはほうじ茶 。いつも通りね」
「サンキュー!」
「よし!それじゃキョーヤの心能力?研究会のはじまりはじまり〜!」
「なんかめっちゃ乗り気じゃない?」
〜1時間後〜
「まぁこんなもんかな〜」
キョーヤが今日の成果を紙にまとめ、その紙をライトが見る。
「他人の心能力(物理)を跳ね返すことができる、または取り込めるし、それを好きなタイミングで放出することもできる、、、ねぇキョーヤこれ合わせ鏡とかしたらどうなんの?めっちゃ複製できたりする?!俺の電気とかさ!」
「、、、、、、、、なぁ。なんでお前そんなに心能力についての深掘りというか探求?に手慣れてるの?」
じっと見つめる。なんか違和感がするのはボクの気のせいだろうか。
「、、、、、、やだなぁ!なんだよ急に!」
「普通に俺も自分の心能力の研究とかするからさ!」
「ふーん。」
「まぁ今日はこんぐらいにしとくか。もう暗くなり始めてるし早く帰れ。」
「はいはい。」
そう言ってライトは荷物をまとめて
「おじゃましましたー」
と出ていった。
、、、、、、、、さっきからスカしたような態度をとっているけど実はボクは内心めちゃくちゃ嬉しい。この世界は心能力者が多少優遇されるような形になっている。心能力を直接的に使う機会はないし、多くの制限がかけられているものの、やはり非能力者よりも生物的に上とでもいえば良いのだろうか、本能的な何かで心能力者は優遇されるのだ。そして物心ついた頃からボクは心能力が欲しくてたまらなかった。ロマンはどうしても諦められない。ちっぽけな力でもいいから他者とは違うものが欲しかった。あいにくボクは生まれた時に心能力発現の2分の1を外してしまったが、今はそんなことどうでもいい。結局ライトが帰ったあともボクは心能力研究に明け暮れてしまった。
ーーーAHACA本部にてーーーー
「イト〜。心能力が10代半ばで発現することってよくある〜?」
ライトの間延びした声がAHACA本部(対心能力犯罪機関:Anti heart ability ccrime agencyの略)の一室で響く
「ん?どうしたんですか急に?」
素朴な顔をした、20代半ばの男が答える。
「いいからいいから〜」
「えぇー?まぁあんまないんとちゃいますか?あんまり聞いたこともないですし。」
「、、、、、、、、ありがとー」
ふと、ライトの中である考えが構築された。
ーーーー翌日、役所にてーーーー
翌日、役所にはキョーヤとその母親の姿があった。何故かって?この国では円滑なコミュニケーションを行ったり治安維持のために、心能力者に自らが保有する心能力を模した絵が描かれたタグを身につける必要がある。それをお役所で発行してもらうためだ。
「以上で手続きは完了となります。1週間後にご自宅の郵便入れに配送致しますので、ご確認の程よろしくお願いします。改めまして、心能力の発現、おめでとうございます」
ずっと相手をしてくれていた、役所のお姉さんが微笑んでボクに言った。
「ありがとうございます」
少し照れてボクは言う。すると隣にいた母が口を開いた。
「あの、、、この年での心能力を発現された方ってあんまりいない印象があるんですけど、、、実際のところどうなんですかね。」
「はい、確かに稀だとは思います。ですが極めて稀という程ではないですね。 」
「そうですか、、、っ」
少し安堵したような母の声。いきなり息子が心能力者になったのだ。不安もあるだろう。しかしボクは相変わらずこれからの心能力者ライフの事で頭がいっぱいだった。
、、、、、、、、早く1週間後になんないかな。
時は意外と早く過ぎ去り、郵便うけには丁寧に梱包された、タグが入っていた。
自分の部屋で早速開封し、しばらく堪能した後にライトに写真とメッセージを送る。
「どう?かっこよくね?」
というメッセージとともに、タグの写真を添付して送信すると、すぐ返信が来た 。
「大人っぽくてかっけーー!」
(目を輝かせたスタンプ)
「晴れてキョーヤも心能力者だな!! 」
ライトっぽい返信が届く。
「うん。」
「、、あのさ。これからも心能力の特訓に付き合ってもらってもいいか?」
ボクは送る。すると少し間が空いた後、
「もちろん!!!」
っというメッセージが目に入った 。
キョーヤが心能力を発現してから一回目の春が来て、高校二年生になった。学校では「非能力者のキョーヤ」だったことから「心能力者のキョーヤ」になったことで特別変わるなんてことはなかった。キョーヤはその現実に、当初少し落胆していたが、今では何も思っていない。相変わらず2人の放課後に行う心能力の特訓は続いている。心做しか、日を増すにつれライトの指導はどんどんと熱が入ってきているようにも見えた。2人が特訓をしている場所はキョーヤの家の近くの河川敷だ。そして今は今日の特訓を終えたところだった。
「どう?ライト、随分様になってきたくね?」
ライトに問いかける。すると、ライトの口がもごもごと動く。まるで言いたいことがあるかのように。
「?どうしたんだよ。全然そんなことないってか? 」
「いや。そんなことない。むしろ才能があると思う。」
ライトの真剣な眼差しがボクを貫いた 。ボクが口を開くより先に、ライトが言った 。
「なぁキョーヤ。将来なりたい夢とかさ、職業でもいい。なんかある?」
「なんだよいきなり。」
「答えて欲しい。」
これは俺にとって博打だった。これを言うにはキョーヤがそこそこ戦えるようになった今じゃないとダメなんだ。ここで「ない。」と答えてくれたら、事は俺が望む方向へすすんでくれる。アハカはバディ制だ。2人1ペアで任務に当たる。俺はまだ未成年だから戦闘任務当たっていないが、来るその日に向けて、教育、訓練は受けている。そして18歳になったら組織から相手を伝えられる。俺にとって、この仕組みは実にめんどくさい。普通に自分で相手を決めたらいいじゃんと。だが相性が〜とか言って毎回有耶無耶にされる。そこである考えが浮かんだのだ。ならば自分で、相性がよくてある程度連携も取れて戦闘能力が高い相手を見つければいいじゃないかと。そんなことを考えていたら、タイミングよく親友のキョーヤが心能力者になった。チャンスだと感じた。キョーヤは、組織が求めるであろうバディの条件の半数を満たしている。あと足りないのは戦闘能力と連携だけ。そして、その日から俺の「キョーヤ育成計画」は始まった。勝手にこんなこと考えていて身勝手だとは思うが、出来ればこの数カ月を無駄なものにしたくない。「ない。」と答えて欲しい。
「ないけど。」
「いきなりどした?まじで」
キョーヤの声が俺の耳に響く。「よっしゃあ‼️」と叫びたくなるのを抑えて、口を開く。
「いや、ありがとう。なんでもない。話変わるけど、キョーヤはさ、最近ずっと心能力の特訓してきたじゃん?、、それって心能力を使って戦いたいとかそういう理由?」
「めっちゃ話変わるなっ。ん〜っとまぁ心のどこかではあるよね。だってロマンじゃん。人知を超越した力を扱いこなすって。あとライトも知ってるだろ?ボクがバトル漫画好きなの。まぁ現実は理由もなく心能力使ったらお巡りさん行きだけどな。」
「もし、心能力を使ってもお咎めなしの職業があったら、働きたい?」
畳み掛けるようにライトが言った。
そんな職業があるのか?果たしてそれは職業なのか?もしこれで「強盗ですー 」とか言われたらどうする。一気にボクの顔に不審の念が現れた。
「どうする?」
ライトは答えを待っている。
「そりゃぁ働きたいよ。その職業? がしっかりと人様に誇れるものなら。」
ボクの返事を聞くと、ライトの顔が少し明るくなった。
「ガチで?」
「まじで」
「ほんとに?」
「ホンマに。」
そんな掛け合いをした後、ライトは笑みを浮かべながら言った。
「「対心能力犯罪機関」って知ってる?警察とかのことではないよ。警察とは別の機関。」
対心能力犯罪機関?なんだそれは。人並みに知識はある方だと思っていたけど初めて聞いたものだった。
「なにそれ」
「えっとねー「世界心能力抑制宣言」は知ってるよね?公民でやったし。」
「あぁ」
「これって悪いことに心能力使うなーってやつだけどさ〜、でもやっぱりさ、ルール破りたがる悪い奴らっているじゃん?心能力を犯罪に使うやつとか。さぁここで問題!非能力者の警察官と、心能力者の犯罪者!どっちが優勢ですか? 」
「?そりゃぁ犯罪者だろ。」
「そうなんだよ。今はさ警察の中にも心能力者がそこそこいるようになったけど昔はそんなに少なかったんだ。でもそれだと治安維持が難しくなっちゃう。ならどうする?そう、昔の人たちは「対心能力犯罪機関」を作ることにしたんだ。名前の通り心能力犯罪に特化した機関で、心能力者たちで構成されている。あっちなみに政府公認ね?それでs」
「なんでそんなこと知ってるんだよ。 」
ボクの言葉が、ライトの言葉を遮った。
するとライトは言った。
「俺がその組織の訓練生だからだよ。」
「ねぇ。キョーヤ、俺と一緒に訓練生やんない? 」
ライトの背後を夕日が照らしている。ぼくにはそれがとても眩しいものに見えた。
コメント
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わあ、第1話読了しました…!まず、キョーヤが前髪切っちゃうところから始まるのがもう可愛くて、でもその後の展開が一気にシリアスになるギャップがすごく良かったです。ライトくん、明るくていい奴かと思いきや、ちゃんと裏で何か考えてる感じがして好きです…。最後の「俺と一緒に訓練生やんない?」のセリフ、夕日を背にした描写が胸に刺さりました。心能力の設定も丁寧で、今後の展開が気になります…!続きが楽しみです🌙