しっとりと汗ばんでシーツに散らばる私の髪を、彼が手の平で優しげに撫でつける。
「……。私はいつも独りだったから、家族となってくれる人がずっとほしかったんだ」
「ええ、よくわかっていて……」
彼の負った寂しさが痛いくらいに伝わって、その背中をぎゅっと抱き寄せた。
「君が、私とともに生きていくことを望んでくれたのを、心から幸せに思う」
「私も……」それ以上の言葉が続かなくなる。どうしていつも彼の言葉は、私を泣き虫にさせるんだろう……。
私の頬に流れた涙を、彼が指先で拭って口を開く。
「感涙する君は、とても愛おしいが、君には笑顔が似合うから。だからこれからは、どんな時にも君が笑っていられるよう、私が力を尽くして守ろう……彩花」
「はい」と頷き、口角をゆっくりと上げる。まるで挙式の誓いのようなその語り口に、私の笑顔が望まれるのなら、この人の前ではずっと笑っていたいと、心から思った。
そうして彼なら、きっとどんな時だろうと言葉の通りに全力で守って、笑顔でいさせてくれるだろうと信じて疑わなかった──。
「……貴仁さん、抱いていて……」
「ああ、こうしている」
片腕に頭が抱えられ、温かな胸に押し当てられる。
「このまま……抱いて寝て」
応えるように腕の力が強まると、彼と共にいられる歓びが全身にじんと沁みて広がった。
そうして互いの余熱を分かつように、私たちはブランケットに包まって抱き合い、心安らぐ眠りについた……。
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