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FORSAKENの核心、支配者スペクター様が鎮座する謁見の場。
その静謐なる空間から退出してきたMowlの佇まいは、いつになく痛々しいものであった。
「……はぁ……。スペクター様からのご愛顧は、臣下としてこの上ない誉れ……でございますが……っ」
黒ハチワレ猫頭の紳士、Mowlは胸の黄色いリボンを力なく整えようとしたが、その前脚は微かに震えていた。
事の始まりは、本日の「絶望の収穫」におけるMowlの手際を、スペクター様がとりわけお気に召されたことだった。
主は、最高級の「愛猫(ペット)」を可愛がるかのように、Mowlの黒ハチワレの頭部を、その圧倒的な力でガシガシガシッ!と強烈に撫で回されたのだ。
主としての慈愛——しかしその腕力はあまりにも絶大であった。
Mowlの完璧に切り揃えられていた黒ハチワレの毛並みは無惨に押し潰されて「凹み」、愛用のモノクルは明後日の方向へと曲がり、頭頂部にはスペクター様の持つ特有の、重厚な支配者の香気が濃密に染み付いていた。
「……コホン。何はともあれ、自室にて毛並みを整えねば……」
フラフラと足元を覚束なくさせながら回廊を歩くMowl。
だが、私室の扉をくぐる直前、影の中からぬっと現れた巨大な腕によって、衣類ごと強引に室内へと引きずり込まれた。
「み゛っ!?」
背中から重い木製ドアに押し付けられる衝撃。
目の前に立ちはだかったのは、右目の黒い眼帯を凶悪に歪め、左の鮮烈な赤目を血走らせたウェアウルフであった。
ウルフの鼻孔が、ピクピクと激しく蠢いている。
次の瞬間、ウルフの鼻先が、Mowlの凹んだ頭部へと急接近した。
スーーッ……、ハぁ……っ!
深々と匂いを嗅ぐ荒い息遣い。
そして、ウルフの顔が怒りと不快感で猛烈に引きつった。
「……チッ。胸くそ悪い匂いがプンプンしやがるな……っ!」
「ウ……ウルフ殿……!? 一体何を……っ! 離してくださいませ……っ!」
「スペクター様の匂いだろ。あの野郎、お前の頭を撫で回しやがったな?」
地鳴りのようなウルフの低音が、Mowlの鼓膜を震わせる。
ウルフの中に眠る、凶暴な肉食獣としての縄張り意識と独占欲が狂い咲いていた。
主であるスペクター様への忠誠心とは別に、ウルフにとってMowlは「自分だけが貪り、自分だけの印を刻み込むべき獲物(猫)」なのだ。
自分の所有物に、別の男——たとえそれが絶対的な主であろうとも——の匂いが上書きされているという事実が、ウルフの理性を完全に焼き切った。
「俺以外のヤツの匂いをつけてんじゃねえよ……ッ!!」
「あッ……!? ウ、ウルフ殿……っ! 服を……っ!」
バリリッ!
ウルフの太い指先が、Mowlの胸の黄色いリボンを一瞬で剥ぎ取り、赤い服の襟ぐりを強引に左右へと引き裂いた。
茶色のマントは床へと叩きつけられ、Mowlの華奢な身体が、無防備な姿で露わになる。
「な、何を……何をされるおつもりですか……っ!」
「決まってんだろ。『清掃』だ。あの野郎の匂いを、綺麗さっぱり消してやるんだよ!」
言うやいなや、ウルフの熱く大きな舌が、Mowlの額から凹んだ頭頂部にかけて、一気に擦り上げられた。
ズリシァッ……!
「ーー〜〜〜っっ!? ひにゃああっ……」
Mowlの身体が弾かれたように反り返った。
ウルフのざらついた肉食獣特有の舌先が、スペクター様に撫でられて凹んでいた毛並みを、強烈な力加減で無理やり起こし、唾液で濡らしていく。
「んぁっ……! ウルフ殿……頭を……頭をそんなに舐め回さないで……にゃあっ!?」
「黙ってろ! 頭だけじゃねえ、全部だ!」
ウルフの執着は頭部だけに留まらなかった。
スペクター様の支配の残り香を一切逃さぬよう、ウルフはMowlの黒ハチワレの顔面、耳の裏、首筋、そして露わになった胸元からお腹へと、粘着質に舌を這わせていく。
ジュプ……! ズリッ、ズリッ……!
「んんぅっ……! 舌が……唾液が重いです……っ! ウルフ殿っ……! 濡れて……私めの毛並みが……にゃあぁっ……!」
Mowlは逃げ出そうと前脚を動かしたが、爪の飛び出た手首はウルフの大きな片手によって頭上へと押し固定された。
宙に浮いた脚が虚しく泳ぎ、モノクルは完全にズレ落ちて、涙が滲み出る。
ウルフはMowlの喉元に深く顔を埋めると、牙で軽く肉を噛み引きながら、濃厚な体液と自身のオス狼特有の強い体臭を、毛の奥の肌へと上書きするように叩き込んでいった。
ズリュ、ズリュ…、ズチュッ…
「ハァ……ハァ……っ! 消えろ……消えろ……っ! お前は俺の猫だ……! 俺の匂いだけで満たされてりゃいいんだよ……っ!」
「にゃぁっ……! ……舌が奥まで……にゃっ……♡」
ゴロゴロ……っ!
耐えようと口を固く結んでいたMowlだったが、ウルフの圧倒的な体温と、執着に満ちた熱気に包まれ、胸の奥から喉鳴りが漏れ出し始めた。
スペクター様の冷徹で圧倒的な「手」の記憶が、ウルフの荒々しくも熱い「舌」と「体臭」によって、急速に塗り替えられていく。
「ほら……お前の体から、俺の匂いしかしてねえぞ」
ウルフはMowlの全身を舌で舐め尽くすと、唾液でドロドロに乱れ、ウルフの体臭に染まりきったMowlの耳元で、残忍に嘲笑った。
「……ん……にゃ……っ♡」
Mowlはウルフの胸元に黒ハチワレの顔を「すりっ……すりっ……♡」と自ら擦り付ける。
そしてウルフの黒い毛並みに震える前脚で爪を立てるのだった。
城プル
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
1,088