続きました 前回よりも長い
エロはファンタジー!現実と異なる部分が多くあります
「いまどんな感じ?」
「ん…、やっぱなんかへん…」
初夜が失敗に終わったあの日から一週間と少し。手探りながらもそう遠くないうちに訪れるであろうその日の為に二人は思案を巡らせていた。ぺいんと曰く、一人では準備が中々上手くいかなかったらしい。小指の先が限界だったという話を後日聞いて、驚いた。そもそも、彼が準備をしてくれていたという事実をその日まで全く知らなかったのだ。言ってくれれば手伝ったのに、と思ったりもしたが、任せてほしいと宣言したのは他の誰でもない自分だったため致し方ない。ともかく、あの日上手くいかなかった原因は彼の身体が受け入れるに足る状態ではなかった、という結論に至った。
次挑む時にはああならないよう、開発という程ではないが、夜時間が合う時は入浴のついでに後ろを解すようにしている。提案した当初は恥ずかしいだなんだと抵抗されたが、あの日ぺいんとにされた発言を蒸し返してやると大人しくなった。少し怒られはしたが。最近は少しずつ自分から身体の状態を話してくれるようになった。そうして継続は力なりと言うべきか、三本の指を難なく呑み込めるぐらいには良い具合になっている。それでも彼としてはまだ違和感、なんか変、と上手く気持ち良さとしては変換できていない様子だった。
「まだだめそう?」
勿論、相手に気持ちの準備が出来ていない状態で挑めばまた何か壁にぶつかる、なんて事は承知の上で。それはそれとして、こちらとしては長い事お預けを食らっているようなものだ。ついそんな事を聞いてしまった。これ以上無理はさせないと決めたのに、結局自分の欲に正直だった。彼は首を捻って随分と長く悩んでいる。まずいな、と思った。いや、でも、やっぱり。先の発言をどう撤回しようかと考えても結論めいたものは浮かばない。
「わかんない、けど…シたい、かも」
長い沈黙の後。あれやこれやと考えている間、耳に届いたのは全く予想だにしていなかった言葉だった。え?と思わず口から漏れていた。したい、って、どういう。思考停止、という言葉を本当の意味で理解した気がした。
「…なんかいってよ」
痺れを切らした彼に手を握られる。自分の心臓の音が伝わりそうで、汗がじんわり滲む感覚を鮮明に感じた。彼は随分とお誘い上手だ。自分は曖昧で焦れったいような話しか出来そうもないのに。
「聞き間違いじゃない、よね?」
「二回もいわせようとすんな、あほ」
心の準備が足りていなかったのは彼ではなく、俺の方だったのかもしれない。
そのまま淡々と入浴を終えた。お互いの髪を乾かし、その洗いたての感触を楽しむ。いつも通りのその光景。ただ一つ違っていたのはこの後セックスをする、ということ。そう遠くないうちにやって来る、と思っていた日が今日になるなんて誰が予想出来ただろうか。避妊具や潤滑剤を用意する手にびっしょりと汗をかいている。一度目は行き当たりばったりというか、感情に任せて進んでしまったという自覚があった。しかし今日は違う。歩み寄った時間が、圧倒的に。漠然と張り切らなければという気持ちがあった。
「らだぁ、顔こわーい」
下着だけをつけた状態でベッドに腰掛けるぺいんとがそう言って笑う。いつも通りすぎるその表情になんだか安心すると同時に、これからセックスするというのに随分と呑気だな、と思った。俺が深く考え込みすぎているだけなのかもしれない。
「本当にするよ?いいの?」
「らっだぁくんってば心配性なんだから〜」
そう言ってぷぷぷ、と嘲笑われた。ああもう、どうなっても知らないからな。勢いに身を任せ、そのままぺいんとを押し倒した。
下着を脱がせると、緩く持ち上がっている彼のものが目に付いた。ぺいんとも興奮している、という事実に息を呑んだ。つい先程まで触れられていた後孔はまだ柔らかい。潤滑剤を手のひらで軽くあたため、そこに入れる。まるで愛液のような音を立てるそれに頭が揺れた。潤滑剤が彼の体温に馴染むように、後ろを触りながら首筋や鎖骨にキスを落とす。明日には消えているであろう薄い痕をいくつも付けた。しつこい、なんて言いつつも、その度にぴくりと震える身体が愛らしい。
そうしているうちに、段々と彼の体温が上がっていくのを感じた。挿れるための準備としては充分だ。指を中でくるりと一周させ、そのまま引き抜く。履いていた部屋着のスウェットと下着を下ろした。彼は反り勃った俺のものを見て、口をあんぐりと開けている。
「あんま見ないで…」
少し顔を逸らしながら自身に避妊具を付けていく。根元の方まで纏っていくうちに、今から恋人を抱くという事実を深く受け入れ、段々と鼓動が早くなっていくのを感じた。
「力、抜いてね」
そのまま所謂正常位の体制になり、潤滑剤でどろどろになったそこに先端を埋めていく。薄膜越しでも中の熱さが伝わってきている。
「ふ、ぅ、んん…っ」
彼はというと、頭を少し下げ、目をぎゅうと瞑り、眉間に皺を寄せていた。指先でシーツを掴み、あまり身体全体の力を抜けているというようには見えない。初経験だ、怖くて当たり前だらう。
「こっち、むいて」
下ばかり向いていたその頭が持ち上がり、目が合う。閉じられたその唇に触れるだけのキスを何度か繰り返し、彼が絆されたところで深い方をしてみせた。舌で唇を叩けば、吃驚した様子で目を見開くものの、きちんと口を開けてくれるのが従順で可愛らしい。彼が自然に身体の力を抜けるように、少しずつ彼の心を溶かすようにしつこくキスを続けた。呼吸が苦しいはずなのに一生懸命応えようとするその舌がいじらしい。無理矢理割開きたくなる気持ちを堪え、少しずつ腰を前へと進めた。おおよそあと半分といったところで唇を離す。名残惜しげに切れた銀色の糸。彼の蕩けた瞳に心を乱された。
「つらくない?」
汗で張り付いた彼の前髪を払いながらそう問えば、真っ赤な顔を縦に振るのが見えた。狡い質問をしてしまったと思う。辛くない訳がないのに、目に涙を溜めながらもそう答えてくれる健気さになんとも胸がいっぱいになった。こんなにも限り限りで保ってくれている恋人の姿を見て尚膨張する自分の陰茎には説教をしたくなった。
「もうすこし、だから」
じんわりと汗をかいたその髪を撫でる。すると、首に彼の腕が回ってきた。
「て、…つないで」
か細い声で放たれたその要求に、崖の縁でわずかに耐えていた理性が限界を迎えた。心臓が早鐘を打ち、脳が煮えたように熱い。ぐちゃぐちゃの脳内に気づかれる前にあくまで平然を装いながら肯定の返事を口にすると、俺の肩に埋めていた頭を離し安堵したように笑う。差し出された手の指の隙間に自分の指を通し、きつく握ってみせる。ひと呼吸置いた後、またゆっくり、ゆっくりと彼の中に自身を進めた。今、直ぐに奥まで穿いてみせたらどんな反応をするだろうか、なんて最低な事を考えながら。はくはくと浅い呼吸を繰り返すその口許にキスをし、しつこく唾液を交換し合う。混ざり合った唾液を嚥下する彼の喉にどうしようもなく唆られた。そうしているうちに、俺の骨盤と彼の臀部が、たん、とぶつかった。
「は、いっ…たぁ、?」
不安げに尋ねる彼の目を見て頷けば、たちまちその表情は解けていった。大きく息を吐いてよかった、と言う彼の身体を抱き寄せ、後頭部を撫でる。頭の頂点から爪の先に至るまで、何かあたたかいもので満ちていくのを感じた。長かったと思うと同時に、こんなにもきちんと向き合ってくれたぺいんとへの愛しさが募っていく。しばらくこうしていたいと思った。彼の頬に光る涙の軌跡にキスをする。じっくり身体を馴染ませるように、体温で境目が曖昧になるように、撫でたり触れたりする程度の柔らかな愛撫を繰り返した。
「ら、だぁ」
涙のせいで蕩けた瞳に見つめられたかと思えば、腰に足を回された。それが何を表しているのか、今の俺には容易に分かってしまう。
「へいき?」
ぺいんとは、目を逸らしながらゆっくりと頷いた。
「いたくない?」
「ぅ、ん…ッ、いたく、ない…」
出来るだけ身体に負担がかからないように、狭いストローク幅で奥を刺激する。痛くない、という事が嘘ではないと思うのだが、苦しそうなのは確かだった。これは初めてであまり感覚にピンと来ていないのか、はたまた俺が下手なのか。出来れば前者であって欲しいのだが。女性とは中の造りがまるで違うので、もしかしたら奥に触れることが間違っているのかもしれない。後ろの性感帯も人によって違うのだろうか。しかし今試すほどの余裕はぺいんとには無いだろうな…。
一人では到底結論を出し得ない疑問が脳内を巡っていく。俺の意識が今目の前にいる彼から少しずつ逸れていっていることを察したのか、彼はゆっくり口を開いた。
「あ、のさ、」
言葉をじっくり選んでいるのか、瞳をうろつかせている。口許もどこか忙しない。
「もうちょっと、てまえ?のほう、なんか、さびし、くて…」
触って、欲しい。
劣情を孕んだ瞳に見つめられ、時が止まる。そんな強請り方、どこで覚えたんだ。まるで初めてとは思えないほど、脳細胞を刺激するその言葉。考えるよりも先に中の浅いところを探っていた。ぐっと腰を引き、また中へ自身を埋めていく。入口からもう少し先、そこを亀頭が通った瞬間だった。
「ッ、あ!?♡」
こり、と何かに引っかかる感覚がすると同時に、目の前の白い喉が反った。彼は自分から出た声が信じられなかったのか、口を塞いで目を見開いている。え、なに、だとか、意味を成さない言葉ばかりを短く発する彼を気にも留めず、もう一度その突起を擦る。すると眉を顰め肩がびくりと大きく震え、シーツを握る手のひらに一層力が入った。ここか、と何か確信めいたものを得た。
「ここ?きもちい?」
頭に疑問符を浮かべながらぎゅっと目を瞑っている。答えは出ているも同然だった。
「ゎ、かんな♡わか、っ、なぃい♡」
厭らしい音を立てながら同じところを陵辱する。未知の感覚に混乱しているのか、いやいやと首を振りながら俺の肩口に頭を寄せている。ぱさぱさと当たる髪の感触が擽ったい。こんな小さな突起に触れるだけでこんなにも乱れてしまう事実にひどく興奮した。背中が後ろに倒れていく。彼の背は仰け反り、シーツと彼との間に綺麗な曲線が描かれている。前髪を払い、普段は隠れている方の瞳を確かめる。潤んだ両目が俺をとらえた。
「や、ぁ…みないで…ッ♡」
「かわい…」
必死に顔を隠そうとするその両腕を掴み、そのまま彼の頭上でまとめる。無防備になったその唇にキスを落とせば、抵抗しながらもすんなり舌を迎え入れた。欲したのは彼自身なのに、みるみる快楽に染められ馬鹿になっていく。策士策に溺れる、憐れな姿に自分の中の昏い欲望が満ちていくのを感じた。
「ぁ、♡だ、ぁめ、イ、けな♡」
腹の中で渦巻いているのに発散出来ない熱に苦しそうに顔を歪めている。中だけで射精できるまで弄り抜きたいところではあるのだが、少し可哀想なのでやめることにした。決定的な快楽を求め互いの間で揺れる陰茎に触れる。先端で前立腺を押し潰すようにするのと同時に前を擦ってみせると、せり上がってくる快楽に耐えきれないのか、長い髪の毛を振り乱し、力無い手のひらが空を掴む。先程よりもきつく窄まる蜜壷に俺も息を呑んだ。
「ま、て♡だぁ、め♡イっちゃ、から…ぁ!」
「いいよ、ッ…イってよ」
逃げようとする腰を捕まえ、躾けるようににまた弱いところを叩いた。中で感じることを覚えさせるために、執拗に抽挿を繰り返す。律動に合わせて短い嬌声を上げ、生理的な涙を零している。快楽で震えるその腕が、縋るように俺の背中に回された。頭が興奮で熱くなる。自身を抜ける限り限りまで引き、そのまま一気に奥まで穿く。
「やあ、♡ぁ!あ、〜〜〜ッ♡♡」
背中をきゅうと丸め、膝下から爪先は真っ直ぐ伸ばし、一際大きな嬌声を上げてそのまま吐精した。絶頂のせいでより強く締め付ける中の感触に俺も果てた。肩で息をしているぺいんとの陰茎からは、壊れた蛇口のようにとぷとぷと精液が零れている。汗で厭らしく光るその腹部を白い液が汚していく光景はどうしようもなく淫らだった。
くたりと力の抜けた彼の身体を緩く抱き、暫くそのままでいた。室内には二人の呼吸音しか鳴っていない。絶頂の余韻とはまた別の感覚が身体中を支配していた。
互いに呼吸が落ち着いたところで、中から自身を引き抜く。絶頂の余韻で身体が敏感になっているのか、それだけですら小さく唸りを上げていた。自身から避妊具を外し口を縛る。その中に溜まった自分のものの量にゾッとした。中に出していたら孕んでいただろうな、なんて浮ついた事を考えるほどに。
「シャワー浴びれる?」
「……むり」
「だよね〜、ちょっとまってて」
ふわりと頭を撫でると彼はゆっくり瞼を閉じた。下着だけをつけて洗面所へ向かい、ぬるま湯で濡らしたタオルを用意する。その時洗面台の鏡に映った自分の肌がここ最近で一番良い色をしていた。あまりにも単純すぎる自分の身体に思わず吹き出してしまう。
「起きて」
ぺいんとはふてぶてしく目を開け、こちらを向いた。きちんと起きていることを確認して汗や精液で汚れた身体を優しく拭く。自分で出来るだなんだ文句垂れているが、今にも眠りそうな顔をしているため無視した。
「ほら、服着て」
粗方拭き終わったところで声を掛けるも、あまり反応がない。ぺちぺちと頬を叩いてみたところでやっと瞼が持ち上がり、とろんと蕩けた瞳に見上げられた。そのまま小さく口を開き、名前を呼ばれる。
「………すき」
へなりと笑ってそう言った数秒後、規則正しい寝息が聞こえてきた。こいつ…。とりあえず下着を履かせ、上から布団を被せる。せめて服を着てから寝ろとか、ベッドの真ん中でそのまま寝るなとか、言いたいことはいくらでもあった。ただそれ以上に、目の前の彼がどうしようもなく愛おしく思えた。
難産でしたが無事書き終えました
前回にたくさんの反応ありがとうございます〜励みになる らぺ界隈は明るい
コメント
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語彙力がつよつよすぎてつい見入ってしまいました、、内容も大好きです最高でした🥰