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「君には勝てない」の続き
車内の小話
どうも、マネージャーです。
大森とは古くからの付き合いです。
若井、藤澤とも、それなりに良い関係だと思います。
自分は今、『メンバーを全員安全無事に家に送る』という本日最後の仕事をしています。
真夜中なのに東京はとても明るい。
街灯りも車も多いし、道行く人もたくさんいる。
なんの変哲もない、どこにでも見かけるミニバン。
なんの変哲もない、サラリーマンみたいな自分が運転手。
まさか売れっ子バンドが乗っているとは誰も思わないだろう。
更に、その車内がカオス状態だということにも、誰も気付かないだろう。
大きな溜息をつく。
いつもより大きめのラジオの音が正直、煩わしい。
その合間に聞こえる藤澤の声。
全然ラジオで誤魔化せていないし、なんならラジオDJの後ろでAV撮影でもしてますか、と言いたくなる。
バックミラーでちらっと確認すると、3列目の座席で大きな黒い塊が動いてる。
そりゃあ大の大人2名がアレコレなってるので大きな塊ですよ。
多分、外からは見えていないだろうから、大丈夫。
それよりも、2列目シートの若井がめちゃくちゃニヤニヤな口元隠してる。
イヤホンはしているが、全然丸聞こえの様子。
それより、インカメで動画撮ってますね、アレ。
後で動画消去するように言っておかなきゃ。
バレたら死ぬかもしれないぞ、と。
入れないとかなんとか言ってたけど、本当か?
藤澤、完全に泣いてるし。
…鳴いてる、ともいいますけど。
大森のわがままスキルの高さ、自分なりに理解してるつもりだけれど、さすがに藤澤が陥落された時はマジか。と思った。
藤澤に関する事、対しては、大森は際限なくわがままで我慢が効かない。子どもみたいに。
自覚があるから、タチが悪い。
この先の信号が黄色になったのが見えて、緩くスピードを落とす。舌打ちが出そうになった。
ここの信号捕まると、長いんだよな。
早く家に帰してやりたいのに。
誰を?と聞かれれば、各々を。と答える。
いくら我慢が効かないとは言っても、超絶独占欲の塊の大森が藤澤のそういう姿大っぴらにしたくないだろうし。
(見せびらかしてる説も無きにしも非ず)
藤澤は、一応年長者としての威厳とか?矜恃?みたいなものもあるだろうし。
(藤澤から威厳とか感じたことはないけど)
まあ、若井は楽しそうだからいいか。
(またつっこみが飛んできそうだ)
あと、自分も。早く帰って休みたい。
彼らは仕事以外の面が自由すぎて、苦労が耐えないのですよ。
信号がようやく青になって、左右を確認してから発進する。
とにかく、早くそれぞれを家に送り届けないと。
色々犠牲者が出そうだ。
その後、
「おつかれーっ」
と嫌に憑き物が取れたようなサッパリとした表情で大森が言い、ふらっふらで足下が覚束ない藤澤を支えながら二人で車をおりていく。
本当に入れてないんだよな?と聞きたくなる。
挨拶は大事だよな。でもしょうがないよ、藤澤。わかる。言える状態じゃないんだよな、きっと。
あの大森に固執されてるんだから、同情する。
止められないけど。
じゃーねーとこれみよがしにイヤホン外しながら若井が二人に手を振った。
運転席からボタン操作でスライドドアを閉める。
ピー、ピーと無機質な音。
「動画、消してね」
ドアが閉まる直前、大森の地を這うみたいな声が聞こえた。
一瞬できゅっと心臓が縮む。
にっこにこな笑顔を顔に貼り付けたままの大森と、ドア一枚挟んで若井が絶句、フリーズして見つめあってる。
こわ。と小さく呟いた若井の声を聞いて、溜息をついた。
「今の、『消さないとお前を消すよ』が語尾についてたわ、絶対」
若井は若井で、大森のことをよく理解してる。
先程の、人刺せそうな大森の言葉を意に介した様子もない。
明日明後日の休みのあとが修羅場になりそうだ。
そう思いながらもう一度溜息をつき、車を発進させた。
おわり
続きのもりょを書こうとしてすぐに逃避
そういう場面が難題すぎる
筆進まず、小話でした
この場を借りて…
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長い文章で皆様の目がしょぼしょぼしないか心配です