カランカラン
「おはようございます~♪」
そう言いながら入って来たのはおおはら男爵。
「おはようございます~!」
おおはら男爵を真似しながら入ってきたのはおらふ王子。
「おらふ王子は来た理由わかるけどMENは何しに来たの?」
起きたばかりでくしゃくしゃの髪を少しずつ整えながら問いかけてみる。
「おんりーチャンの朝ごはん食べたいから〜….ですかね」
最後の方は小さすぎて聞こえなかったが、だいたい理由は聞けたので良しとしよう。
「はぁ…..」
おんりーが面倒くさそうに朝ごはんの準備を始めようと階段を降りていったので急いで追いかける
「ちょっとまってよ〜!」
おらふ王子が拙い足取りで追いかけてきた。
「今日の朝ごはんはあんまり豪華じゃないけどいいの?」
「ぜんぜん食べます」
即答した。お腹が減っているのだろう。
「おらふ王子の口に合うかわからないけど…..」
「…..とりあえず食べてみる!」
こちらはちょっと悩んで答えた。いろいろ悩んだ結果食欲が勝ったのだろう。わかりやすい。
「MEN。もちろん手伝うよね?」
少し微笑みながら高圧的に問う。
「えー。面倒臭いんすけど」
腹が立つくらいにぐーたらしながら答えた。
「何言ってんの。いい歳した大人タダ飯食べれる訳がないでしょ」
と一喝して手伝わせる。
「僕も手伝う….?」
さすがに王族には手伝わさせられないので聞こえないふりをする。
「今日はフレンチトーストだから他のものも作らないと」
とおおはら男爵を睨みながら言う。
「なに作ればいいんすか」
不愉快そうに答えた。
「じゃあサラダ作って」
比較的簡単なものを頼んだはずなのに「えぇ….」という声が聞こえてきた。
「おらふ王子。食器とお茶出してくれない?」
これくらいなら手伝わしても大丈夫だろ。と思い目を輝かせながら待っているおらふ王子に頼んだ。
「わかった!」
おおはら男爵とは大違いないい返事が帰ってきた。
「手伝うのそんなに嬉しいんすかぁ?」
「ありえない」というような表情をしながらおおはら男爵が問いかけている。
「口より手を動かして」
そうおおはら男爵を叱るのと同時に耳を取った食パンを砂糖と卵ともろもろを混ぜたものにつける。
「うわぁ….すごい美味しそう….」
おらふ王子が覗き込んできた。
「これは1時間ほど置いておきます」
「えぇ…..」
フレンチトーストができるまでにもう少しかかることを伝えたらしょぼんとした顔でこちらをじっと見つめられた。
「フレンチトーストができるまでの間は他のものを作りますよ」
「俺、サラダ作ってるよ?」
「それだけじゃ足りないでしょ…」
呆れたように言うと「たしかに」と言いながら作業に戻った。
「じゃありんごパイでも作ろうかな」
そう呟くと約2名、目をキラキラさせながらこっちを見てきた。
「なに」
引き気味で聞くとさらにずいずい来た。
「そこの剣取って」
フクロウのような見た目をした従魔にそういうと2人はぴゃっと元の作業に戻った。
「あ、MEN。そこにりんご何個かある?」
「ないっすね」
買いだめておいたはずの果物がない。絶対だれか食べただろという眼差しで2人を睨んでみる。
「絶対おらふ王子だ」
おらふ王子だけ異様に目を逸らしたので犯人がわかった。
「えーっと…..なんのことかなぁ….?」
めちゃくちゃわかりやすい。
「おらふ王子。MENと一緒にりんご買ってきてください」
おらふ王子はしょぼんとしてる。反省したのだろう。
「ごめんなさい…」
「え?!なんで俺も巻き込まれてるすか?!」
やっと気づいた。おおはら男爵1人で残すのは危険すぎる。物色されそうだ。
「連帯責任」
連帯責任ということにしておく。
「じゃあいってらっしゃい」
もちろんおおはら男爵の自費で買ってきてもらう。自分のお金を渡したら別のことに使われそうだからだ。
「いってきま〜す!」
おらふ王子たちが出ていった。
「何事も楽しんでやってそう」
そういって笑う。
何事も強制させられていた自分と比べたらそうとう幸せなのだろう。
そんなことを考えながらパイ生地をこねる。
無心でパイ生地をこねていたら元気な声が聞こえてきた。
「たっだいま〜!」
「おかえりなさい〜」
少し声を張って返事をする。
走ってきている音がよく聞こえる。
「りんご!ちゃんと買ってきたで!」
おらふ王子が袋を上に掲げ誇らしそうに言った。
「よくできましたね。ご褒美にりんごパイを作りましょうか」
ちょっと母親っぽく言ってみる。
「オカン?!」
おおはら男爵がわざとらしく驚いたように言った。
みんなが笑った。幸せとはこういうことなんだ。
そんなことを考えながら微笑む。
「さてと!あとはりんごのっけて焼くだけだよ!」
意気込むとこんなリクエストがきた。
「僕、おんりーの魔法見たい!」
「魔法」その言葉に少しビクッっとしてしまった。
「魔法を使うのは好きじゃないけど…..生活するためならいいよね…..」
そう呟いてから答えた。
「いいよ。久しぶりに見せてあげる」
パチンッと指を鳴らすと皿の上のパイから火が上がる。
「うわっ…」
おらふ王子はびっくりした様子で少し後ろに下がる。
シュッと音をたてて火は消え、宝石のようなりんごパイが出てきた。
「わぁ……すごい….」
おらふ王子は興味津々。おおはら男爵はなにか言いたげな様子。
「MEN。なにか言いたそうだね」
問うと焦って首を振った。
「じゃあフレンチトーストも焼こっか」
そう言いながら卵液から取り出してフライパンで焼く準備をする。
「え!魔法で焼かんの….?」
しょぼんとした顔でそう聞いてきた。
「フレンチトーストはフライパンで焼いた方が美味しくなるんだよ」
嘘と言ったら嘘な嘘をつく。
「そっか!」
騙されてくれた。
目を輝かせながら焼くのを見ているおらふ王子と談笑をしながらたんたんと焼いていく。
綺麗に焼き上がったフレンチトーストを皿にのせて席についた。
[ここからはおおはら男爵視点]
「いただきます!」
みんなで元気よく言って食べはじめた。
「ほわぁ……」
おらふ王子が顔を少し赤くして漏れ出たような声を出した。
「どうしたの?」
おんりーが心配した。
「いや…なんでもあらへんで….」
更におらふ王子の顔が赤くなった。
「あまりにも美味しくて….」
誤魔化したのが丸わかりな声色だ。
「そっかぁ。よかった」
おんりーが少しへにゃっとして笑う。
本当に人間か疑いたくなってしまうほどにおんりーは顔が整っているため男でも余裕で惚れる。
この街でもおんりーを信仰する人が絶えない。
「本当は?」
おらふ王子に小声で聞いてみた。
「うぇ?!本当は….?」
めちゃくちゃ焦ってる。
「おんりーチャンが美しすぎた?」
「う….うん…」
冗談半分で言ってみたら思わぬ返事が帰ってきた。
「おんりーチャンってなんでナイフ使ってんの?」
驚きのあまり話を逸らす。
「MENも使ってるでしょ?」
もちろん農民上がりの俺はナイフなんざ使わない。
「使ってないっすね〜」
そう伝えるとめちゃくちゃびっくりしたみたいで固まってる。
「めんって農民上がりなんやろ?農民はナイフ使わんって聞いたことあるで」
またもやめちゃくちゃびっくりして固まっている。
「え…..そうなの…….」
固まりながら返事をした。
「じゃあ俺めちゃくちゃバカにした感じになってたってこと?!」
焦りすぎて一人称が俺になってる。
「ぇぁぁぁ……ごめん……」
なんか急に謝ってきた。
「別にそんな風には感じてないから大丈夫」
爆笑しながら落ち着かせたらしょんぼりしてた。かわいいの一言につきる。
「本当に大丈夫…..?ごめんね…..」
さらにしょんぼりしてしまった。
「ナイフを使う美しいおんりーチャンが見れたので全然大丈夫よ」
空気を変えるために本人に言ってみた。
「ぇ….あぁ……….」
めちゃくちゃ照れて声にならない声が出てる。
「う、うるさい…….」
そういいながら乱暴に食器を片付けはじめた。
「おんりー照れた〜!」
おらふ王子がからかう。
「おらふ王子。鍛錬、楽しみにしておいてくださいね」
圧がすごい。遠回しに覚えておけよと言っているようなものな気がする。
「えぇ?!やだ!」
おらふ王子が逃げながら言った。
「今すぐでもいいのですよ?」
とにかく笑顔だがめちゃくちゃ怖い。
「剣。取って。」
従魔に呼びかけてるけど従魔が震えてる。
「ギャァァァァァァァァ」
悲鳴が聞こえた。おらふ王子…….どんまいだ…..
コメント
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めっちゃ嬉しいです!続き楽しみにしています。待ってます!