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☆yatio☆
37
#TL
瀬名 紫陽花
64,864
𝒩𝑜𝒶 𑁍𓏸𓈒
250
まず俺は、綾咲に妹――つぐはのことを話した。
すると意外なことに、綾咲にも妹がいるらしく、しかも同級生だという。
「それなら、何かわかるかも」
そう言って、綾咲はすぐにスマホを取り出し、妹に連絡を入れてくれた。
どうやら直接の面識はなかったらしいが、友達づてに聞いてくれるらしい。
「ありがとな、綾咲。助かる」
そう言うと、彼女は軽く首を横に振った。
「気にしないで。それに、まだ悩みが見つかったわけじゃないでしょ?」
そう返されて、少しだけ言葉に詰まる。
確かに、原因がわからないままじゃ何も解決できない。
「あ、返信きた。今読むね」
スマホを見つめながら、彼女は少し真剣な表情になる。
――こういうところを見ると、意外とちゃんとしてるやつなんだなと思う。
もしかしたら、俺はこいつのことを勘違いしていたのかもしれない。
「えっと……ゆうたの妹さんは――」
「おい、ゆうたって呼ぶな」
思わずツッコミを入れると、綾咲は一瞬だけこちらを見てから、何事もなかったように言い直した。
「……水奈戸の妹さんは、友達からもらったペンダントをなくしたみたい」
「ペンダント……?」
「うん。親友からの誕生日プレゼントだったんだって」
――知らなかった。
つぐはに、そんな大切な友達がいたなんて。
「でも、どこで失くしたかはわからないって」
「それなら、見当はつく」
昨日、あいつがしゃがんでいた場所。
あそこなら、可能性は高い。
「行ってみよう」
◇
俺たちは昨日の場所へ向かった。
だが、いざ着いてみると、はっきりとした場所は思い出せない。
「たしか……この辺だったと思うんだけど」
周囲を見回しながら言う。
夜だったこともあって、記憶が曖昧だ。
「悪い。これ以上はちょっと……」
そう言いかけたときだった。
綾咲が無言で袖をまくる。
「……じゃあ、探そっか」
その一言は、あまりにもあっさりしていた。
でも――
妙に、頼もしくも感じた。
「……頼む。手伝ってくれ」
「任せて」
軽く笑いながらそう言う彼女に、少しだけ驚く。
俺の中にあった“綾咲真乃”のイメージとは、少しずつズレていく。
◇
探し始めてから、一時間半が経っていた。
やはり簡単には見つからない。
気づけば空は暗くなり、周囲の視界も悪くなっていた。
「……そろそろ、引き上げるか」
手を止めて言う。
「綾咲も、長く付き合わせて悪いな。今日はもう帰っていい」
ここまで手伝ってくれただけで、十分すぎる。
だが――
「まだ平気だよ」
即答だった。
その言葉に、思わず言葉を失う。
俺が知っている綾咲真乃は、こんなやつじゃなかった。
もっと適当で、自分勝手で、他人なんてどうでもいい――そんなイメージだった。
でも、目の前のこいつは違う。
もしかしたら、それは俺が勝手に作り上げた姿だったのかもしれない。
「……ありがとな。でも、これ以上はさすがに悪い」
少しだけ苦笑しながら言う。
「今日は帰ろうぜ」
すると彼女は、少しだけ不満そうな顔をしたあと、小さくうなずいた。
「……わかった」
◇
「途中まで送るよ」
そう言って、一緒に歩き出す。
しばらくして、ふと違和感に気づいた。
「……あれ?」
「なに?」
「帰り道、俺の家と真逆じゃないか?」
そう言うと、綾咲はあっさりと答えた。
「そうね」
「なんでわざわざこっち来たんだよ」
すると彼女は、少しだけ笑って言った。
「言ったでしょ。一緒に帰りたかっただけ」
「……」
どこまで本気なのか、まったく読めない。
それでも――
さっきまでの行動を見たあとでは、完全に否定することもできなかった。
「ここまででいいよ。ありがとう」
「あぁ」
「その……また明日」
「おう。また明日」
そう言って、彼女と別れる。
◇
――だが。
「……もう少しだけ探すか」
結局、俺は一人で戻っていた。
ここでやめるわけにはいかない。
あいつがあんな顔をしてた理由が、少しだけわかった気がするから。
◇
それから何時間か経って、ようやく家に帰った。
かなり遅くなってしまった。
リビングに入ると、妹がいた。
「あんた、帰宅部でしょ。なんでこんなに遅いのよ」
不機嫌そうに言われる。
「ちょっと、友達と喫茶店寄ってて」
適当にごまかす。
……なんで俺、怒られてるんだ?
妹はムスッとしたまま立ち上がり、そのまま自分の部屋へ戻っていった。
その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐く。
――でも。
少なくとも、何もしていないわけじゃない。
ほんの少しだけでも、前に進めた気がした。
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