俺は猿山らだ男
年齢はいわないが20代後半とでも思っていてくれ
俺は両親に生まれた時から教育という名の枷をつけられ生きてきた
将来の夢は警察官、人の役に立ちたいそう思っていた
だけど俺は両親から権力者になれと言われ続けて来た
政治家になれ。
支配者になれ。
当時の幼かった俺はただ聞き流していた
その日々は俺にとって苦痛でしかなかった
テストは一点でも落としたらご飯をもらえず叩かれる、罵声を浴びせられる、死に際を彷徨っても蔑まれる
俺は生きることを諦めかけていた
だけどそんな俺にも唯一の光があった
天乃絵斗
あだ名はぺいんと
俺の親友だったやつだ
ぺいんとは無口な俺とは正反対で明るく活発で誰とでもすぐに打ち解けるような…太陽のような存在だった
小学校時代クラスで浮いていた俺にも関わってくれた
いいやつだった
人の変化にはすぐ気がつくし何かあった時頼りになる
本当に
いいやつだった…
お前は俺のヒーローだよ
あの事件が起きるまでは
その時小学生だった俺たちはぺいんとが聞いたという七不思議について話しながら下校していたんだ
絵斗 ねぇお前ってこの学校の七不思議知ってる?
らだ男 七不思議?
絵斗 そう
絵斗 この学校って神社あるじゃん?
絵斗 その神社……なんでも願いを叶えてくれるんだってさ
らだ男 へえ…
絵斗 おい!なんか興味なさそうだな!
らだ男 いや普通考えてもありえないじゃん
絵斗 それはそうだけどさぁ…
絵斗 でも…もし……本当だったら…?
俺だってこの七不思議について最初は信じてなかった
でもこのあと信じざるおえない状況になってしまった
らだ男 はぁ… もうぺいんとさそういう時は最初から行きたいって言いなよ
絵斗 え…それって………もしかそれOKってこと!?
らだ男 まぁいいよ
らだ男 面白そうだし
絵斗 よっしゃ!じゃあ今日の夜学校の正門前集合な
そう言って走るぺいんとの姿を俺はしばらくの間眺めていた気がする
そしてその日の夜俺たち2人はこっそり学校に侵入した
雑談しながら一階を歩いている時だった
絵斗 ねぇ屋上行こうよ!
唐突にぺいんとがそう言い始めた
らだ男 えぇー?
絵斗 いやなの…?
らだ男 だって神社ここにもあるじゃん
絵斗 じゃあらっだぁはそこの神社で俺は屋上の神社行ってるからね
らだ男 そんな屋上行きたいの?
絵斗 うんなんか楽しそうじゃん…?
らだ男 はぁ…まぁなら行ってきたらいいんじゃね?
そう俺が答えるとぺいんとは笑顔になり廊下を走った米粒サイズになったところでぺいんとが叫んだ
絵斗 俺なんかあったら叫ぶからその時は駆けつけてくれよー!
らだ男 はいよー
数分…数十分……数時間だっただろうか
ぺいんとの叫び声が聞こえた
俺は走った
呼吸の仕方も忘れて
ひたすら走った
ぺいんとの元へ
屋上前の廊下でぺいんとは倒れていた
黄色くて明るい彼は赤く染まって動かなかった
らだ男 ぺ…いん…と………?
俺は考えたくもない事が何回も頭をよぎった
ぺいんとを持ち上げ揺さぶる
声が枯れるまで彼の名前を呼んだ
? おや
背後から声が聞こえて俺は振り返った
そこには血まみれになった執事のような服を着た男性、その手には赤く鈍く光る刀が握られていた
らだ男 ぺいんとがっ…ぺいんとがっ!!助けてくださいっ!!!
俺は藁にも縋る思いで声をかけた
? その人はもう死んでいますよ
? 医者に連れて行ってももう遅いです
らだ男 お願いだ!なんでもする!!!
らだ男 だからっぺいんとだけはっ………!
らだ男 救ってください……俺はどうなってもいい………だからっ
? ……
? そうですか
? ならば一つだけ助かる方法があります
? この学校の屋上に神社があるでしょう?
? その神社で祈りなさい
? そうすれば願いは叶いますよ
その時の俺は涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも嗚咽しながらも走ってすぐさま屋上の神社に行った
俺は祈った
「ぺいんとをどうか______」
「どうか救ってください」
気がつくと俺はぺいんとと共に屋上の神社で寝てしまっていたようだった
今思うと不可解なことばかりだったと思う
ぺいんとは俺の肩に寄りかかりながら小さな寝息を立てていた
彼の首には斬られたような傷跡が鮮明に残っていた
俺はそのあとぺいんとを起こした
そしていつの間にか手に握っていた黄色のスカーフを彼の首に巻いた
絵斗 無茶言ったの俺なのに寝ちゃうなんてごめんならっだぁ
らだ男 いいよ別に
らだ男 まぁぺいんとが生きててよかった
この事件以来俺は変な幻聴が聞こえるようになった
最初は数ヶ月に一度だった
だがだんだんと期間は早まっていき今ではほぼ毎日聴こえている
その幻聴はノイズがかかった男性の声ですこし年老いている気がした
声は聞き取れるに何を言っているかはさっぱりわからなかった
言語がわからなかった訳じゃないんだろうけど俺にはわからなかった
ぺいんとも俺と同じであの事件以来ずっとスカーフを身につけるようになった
本人は首の傷に気がついていないようだ
正確には見えていないらしい
その後俺たちは運命が別れた
ぺいんとは警察官になり俺は教師になった
今でも羨ましいよ
俺だってぺいんとと一緒になりたかったなぁ
でも俺はもう戻れないから
せめてもの償いだ
俺は死んだとしてもぺいんとの幸せを祈り続けるよ
そしてごめんな
お前にそんな呪いをかけてしまって
こんな俺を許して欲しい