疑問に思った私は憂に聞いてみることにした。
「ねぇ,憂,なんであんなところにいたの?」
「あんなところ?」
「あの…はじめて会った時のところ!」
「え?あぁ…」
一瞬,憂の表情が,声色が冷たくなってゾッとした。ダメだ。これ以上聞いちゃいけない。自分の本能がそう言っている気がした。
「そうなんだ!」
「うん。ほら,そんなことより次のとこ行くぞ。」
すぐに憂はさっきまでの顔に戻って先を歩いていったけど,私はさっきより楽しめなくなっていた。どうしよう。憂のこと…ちょっと怖くなっちゃった。聞かれたくなかったのかな…悪いことしちゃった。
「あー…あんま気にしなくてもいいぞ?俺の都合なだけで,お前には関係ねぇから」
?!なぜバレた。なんでそんな分かんの?もしかして心でもよめる?いやいや,まさか…うん。やめよ。なんか怖いわ。
「なんでそんな考えてること分かるわけ?」
「ん?お前顔に出すぎなんだよ。表情豊かすぎだろってくらいもろバレだぜ?」
「なんだって…言われたことないよ?」
「嘘つけぇ!」
ホントなのに…まぁいいか。でもほんとにそうなのかな…自分じゃわかんないし,人にそう言われたのもはじめて。
(いや…言ってくれるくらい話した人がいないだけか…)
「…い,おい,愁花!」
「わぁッ!び,びっくりしたぁ…」
「なんか思い詰めてる顔してらっしゃるけど大丈夫そ?」
「え、あ、大丈夫」
答えた瞬間に頭をクシャクシャッと撫で回された。ちょっ,頭ボッサボサなんだけど…
「なら,良かったよ」
ッ…なんだその顔!美形がそんな顔でそんなこと,言うな!
なんだか恥ずかしくなった私は憂より少し先を歩いた。なんだか顔が熱い。いや,これは夏の暑すぎる気温のせいだ。そう思っておこう…
私は自分に納得できるような言い訳をして,2人でまた夜の街を歩いていった。街の灯りの中に,出来損ないの影が映り込んで去っていく。歪な形の影に気づかずに私は散策を続けていた。その時の憂の表情なんて知らずに。
コメント
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神作品過ぎて100♡にしちゃったよ