テラーノベル
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元の生活に戻ってから数ヶ月が経った。
ただ、戻らなかったこともある。家だ。
私達は正式に同棲することになったのである。
『イタリア君起きてください!』
カンカンッ
「あと5分…」
子供のような我儘を言うイタリア君を見て、孫どころか子のように感じる。
『今日は世界会議ですよ?』
カンカンッ
「えっ…今何時!?」
イタリア君は目を覚まし、焦ったように時計に目を向ける。
『8時半…会議の30分前です。』
本当はもう30分前くらいから起こしていたことは言わないでおこう。
「朝ごはん作らなきゃ…」
一人暮らしの時の感覚が残っているのか、急いでキッチンに向かおうとするイタリア君を引き止める。
『もう作ってありますよ。』
「本当!?ありがとう〜!」
嬉しそうに笑うイタリア君を見て、私も嬉しくなった。
「『いただきます!』」
モグモグ
「そういえば…」
急に思い出したように話を振られた。
「あのカンカンッて音なんなの?」
『フライパンですよ。』
『目覚ましの定番ですよね?』
「ちょっとよくわかんないかな…」
イタリアの方には通じないのだろうか。
「『ご馳走様でした。』」
『準備できましたか?』
玄関で振り返ってみると、手元を睨むようにネクタイと闘っているイタリア君がいた。
「待って待って…ネクタイが結べないよぉ〜…」
『貸してください。』
スッ
『待って待って…ネクタイが結べないよぉ〜…』
いつもは会議室まで行ってドイツにつけてもらっていた。
けれど、今日は違う。
「貸してください。」
スッ
え…まって…近くない!?
そんな首元に手をやられると変なことを想像してしまう。
少し胸が当たってる気がするし…
「できましたよ。」
『あ…ありがとう…//』
物凄く恥ずかしい。
こういう無自覚なところが好きなんだけど…
それとこれとは話が別で…
「行きますよ?」
『あ…うん。』
「あ!女の子だ〜!Bella,Bella,Ciao〜!」
今日も女子を見つけては声をかけるイタリア君。
『…』
イタリア君らしくて微笑ましい半面、少しモヤモヤしてしまう。
この気持ちはなんなのか…
グイッ
「えっ?」
『早く行きましょう?』
抑えきれない何かを隠しながら、全力営業スマイルでイタリア君を急かす。
タッタッ
「ヴェっ…どうしたの日本…」
イタリア君は、着いてきてはくれるが、不安そうに私を見つめて声をかけてくる。
「まだ遅刻じゃないよ…」
『す…すみません。』
『私、15分前に着かないと落ち着かない主義なので。』
適当な言い訳をする。
嘘は付いていない。多分。
「そっかぁ…」
「ごめんね日本…」
罪悪感を抱いているような顔をするイタリア君を見て、こちらも少し罪悪感を感じてしまう。
『いえ、私の価値観を押し付けてすみません。』
「ドイツCiao〜!」
『おはようございますドイツさん。』
「おはようイタリア、日本。」
「聞いて聞いてドイツ〜!」
「〜〜〜」
「〜〜〜〜?」
既に席に座った私には、何を話しているかは聞こえない。
それでもモヤモヤする。
私、どうしてしまったのでしょうか。
『日本?日本〜』
最近日本と一緒に住み始めたというのに、日本はどこか上の空で、挙動もおかしい。
何か悩み事でもあるのだろうか。
俺には話せないなにかなのだろうか。
『日本!』
「あ…え…イタリア君。」
「どうかしましたか?」
何事も無かったかのように日本は微笑みかけてくる。
これからの付き合いに比べればまだ短い付き合いだけど、俺は日本のことを結構知ってる気でいる。
日本が余所余所しい態度や表情をする時は大抵なにか隠してる、ってことくらい俺でもわかる。
『日本、何かあった?』
「あ、えっと、その…」
あからさまに目をそらされてしまった。
やっぱり俺じゃ…
「すみません。失礼します。」
『あ…』
行ってしまった。また、置いていかれた。
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コメント
2件
おっと??嫉妬ですか?最高ですね(?)フェリちゃん!気づいて!いや、気づかないっていう手も…いや、うーんどっちも最高ですね☺