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『これからは、美晴さんの夫やターゲット対象者だけではなく、他人と会う場合はいついかなる時でも、必ずスマートフォンで録画・録音をおすすめします。また、わたし(復讐アプリ)のことは口外しないでください。親しい人にも絶対内密にしてください。約束できますか?』
――はい、わかりました。誰にも言いません。
『では、離婚に向けて頑張りましょう』
美晴はふと考えた。幹雄と離婚…。果たしてできるのだろうか。不安になってくる。
――離婚、できるでしょうか?
『はい。美晴さんを苦しめる夫とは、早急に離婚しましょう。そのために証拠を集めるのです。わたしに相談してください。ポイントは必要ですが、持てうるすべての情報を駆使し、美晴さんが有利になるように力を貸します。このまま諦めて辛い人生を送らないでください。応援しています』
アプリから頼もしい回答が返って来た。AIが回答した文字なのに、それは美晴の心に沁みて涙が出た。応援しています――そうだ。自分の人生を諦めてはいけない。お腹の子供を殺した罪を、幹雄に償ってもらわなければ!!
(だめでもともと。――死ぬ気でやってみよう!!)
早速アプリの助言通り、美晴は幹雄の部屋を物色した。彼は実家からまだ帰ってきていない。恐らく今日は戻らないだろう。
今まで彼の書斎には掃除以外で立ち入ったことがない。調査目的で部屋を物色するのはとても勇気がいった。常に心臓がバクバクと高鳴っている。
(幹雄さんは会計士だから、領収書関係は細かく取っていそうね)
幹雄は仕事上とても几帳面な性格をしている。領収書などを余すことなく取っておき、経費に付けそうな気がした。浮気を疑ったことは一度もなかったが、今思い返すと怪しいところはいっぱいあったように思う。
自分が触れたとばれないように、調理用のゴム手袋をはめて指紋が残ったりしないように配慮した。仕事で利用している資料関係を端から順に見て行った。なんてことはない普通の仕事用の資料だ。
(そう簡単に大きな証拠は見つからないかぁ……)
幹雄に女性の影など見えなかった。割と早く帰ってくることが多いし、出張もそれほど多くない。月に1回か2回ほど飲み会に参加するが、遅くなることはあっても泊ってきたことはない。浮気をするなら外泊が多いイメージだが、幹雄はそれに当てはまらない。
(やっぱり愛人がいるなんて……本当なのかな?)
時間はたっぷりあるので美晴は根気よく証拠を探した。すると薄いオレンジのファイルが棚の奥の方に隠れるように挟まっているのを発見した。
(なんだろう……怪しい!)
そっと取り出してファイルをめくってみた。そこにはプライベート用のクレジットカードの明細が保存されていた。完全に個人のものだ。
(これはっ……!!)