祐希side
‥時計を見ると、予定していた時刻をとっくに過ぎていた‥。
遅くなるとは伝えていたが‥
大急ぎでタクシーに飛び乗り目的地のホテルへと向かう。
それにしても珍しい‥。
智君から話があると呼び出されるのは‥初めてなんじゃないだろうか‥。
考えを巡らせるが‥
理由は一つしか思い浮かばない‥
きっと、小川の事だと思う‥
しかし、小川は藍と‥‥‥‥。
ああ‥悪い癖だ‥
藍をよろしくと伝えたのに‥
思い出すのは藍のことばかり‥。
ホテルに着き、フロントに名前を伝えると、伝言を貰っていたらしくルームキーを渡された。
部屋の前に着き、チャイムを鳴らす‥。
‥‥‥‥‥‥。
応答は‥ない。
シャワーでも浴びているのだろうか‥そう思いながらルームキーを取りだし‥室内へと入る。
室内は薄暗く‥しんと静まり返っている‥。
「智君‥いるの?」
声を掛けるが‥返事がない。
ふと‥テーブルの上を見ると‥ワインの空のボトルと、グラスが2つ置いてあるのが目についた。
あれ?他にも誰か‥
「‥ん‥」
ベッドの方で動く気配がし、智君かな?と目を凝らすと‥
そこには‥‥‥‥‥‥‥‥
藍がいた。
藍?なんで‥?
信じられずに近くまで来て‥確認する。
ベッドの上で横向きになり、すやすやと寝ているようだった。
頬はかなり赤い‥そうか、ワインを呑んだからか‥
そうやって寝顔を暫く見ていたが、久しぶりな事もありつい欲が出てしまう‥
気持ちよさそうに眠る藍の頬を触ると‥アルコールの匂いがだいぶ染みついているようだ‥
「‥酒くさ‥どんだけ呑んだんだよ‥笑」
思わず悪戯心で、頰をギュっとつまむと‥イヤイヤをするように頭を振っている。
そして、またすぅすぅと寝入ってしまった‥。
それにしても‥智君は?
‥どうやら部屋の中にはいないようだ。一通り部屋の中を探して‥ さっきのテーブルに白いメモ用紙が一つ置いてある事に気付く‥
“ごめん、実は藍も呼んでて、ワイン呑んでたら潰れちゃってさ‥介抱してたんだけど急な用事で出かけないといけなくなったら‥祐希!後頼む!“
はぁ‥溜息をつきながら、メモ用紙をテーブルに置く‥。
なぜホテルで藍と呑んでいたのか‥。
理由を知りたいが‥藍があの状態なら聞くことも出来ないだらう‥
しかも、よりによってこのホテルか‥。
ドサッ。
急な衝撃音に咄嗟に振り向くと‥ベッドで寝ていたはずの藍がずり落ちている。
「藍!?」
慌てて駆け寄り‥身体をチェックする。どこか打っていないか‥
幸いにも布団がクッションとなったようで、怪我はしていないようだ‥
しかし、その衝撃で気がついたのか‥
「ん‥‥‥」
藍の瞳が開く。
「藍?大丈夫か?」
顔を覗き込み問いかけるが、どこか焦点の合っていない瞳はボーッとしている。
それでも小さな声で‥
「みず‥」
と聞こえ、慌てて水を取りに行き‥藍の口に注ぐ。
‥しかし、水は藍の口から溢れるだけで飲めていない。
「藍!水だから飲んで」
声を掛けるがどうしても溢れてしまう。
埒が明かない‥咄嗟に水を自分の口に含むと、口移しで藍に飲ませる事に‥
ゴクンと喉がなる。
数回、口移しで飲ませていると‥
突然、藍の舌が割り込んできて思わず、水が零れ落ちる‥
「‥冷た‥何なんこれ‥」
自らの口からポタポタ水が零れ落ちるのを不快そうに拭った後に‥やっと目の前の俺を見つめる。
「ゆう‥き?なん‥でおる‥ん?」
声が辿々しい‥。まだ酔いが抜けていないようだ。
ふらふらとよろけながら近付き‥俺の頰を撫でる。
「ふぅん、夢やからまた来てくれたん?」
「えっ?」
「ゆうきは律儀やね‥夢の中だといつも会いに来てくれる‥」
ギュッと‥
抱きつき、頰を擦り寄せられる。
子供が甘えるようにスリスリと寄り添う姿は‥昔の付き合っていた頃を思い出させてくれる‥
きっと、酔った藍は‥今の俺が夢だと思っているんだろう‥。
「藍‥」
優しく頭を撫でる。
「祐希‥もっと撫でて‥好き‥」
まるで独り言のように呟き、身を委ねる藍を‥いけないと分かりつつも‥両手で抱きしめた‥
今だけ‥‥‥。
暫く‥抱きしめていると心地よく目を瞑っていた藍だったが‥
突然‥
顔を埋めながら‥泣き出した。
「ら‥藍?」
「ゆう‥きなんか、嫌いや!」
‥さっきと言ってることが真逆だ。酔っているから仕方ないのかもしれないが‥
落ち着かせようと背中を撫でるが‥逆効果なのか‥余計に手足をバタつかせ暴れ始めた。
暴れる手を掴み、弾みで後ろに倒れ込んでしまう。
自由が無くなり‥藍の潤んだ瞳から涙が零れ落ちる。
「藍‥落ち着けって」
「嫌や!ゆうきのアホ!」
「あ‥アホ!?」
思いがけない言葉に思わず自分の声も大きくなってしまう。
「そうや、ゆうきはアホや!なんで‥なんで俺の事迷惑やって思ったん‥いなくなって良かったって‥なんで‥なんで、そんな事言うん?」
最後の方は‥嗚咽混じりだった。
「愛してない日はないって言うたやん、ゆうきの嘘つき、嫌いや」
嫌い‥顔を歪ませて泣く藍を、どうしていいのかわからず‥
気付けば無我夢中で藍の唇にキスをしていた。
それでも暴れる‥
暴れて泣く藍をただキツく抱きしめた‥。
藍‥
俺は間違えていたんだろうか‥
お前のためになると思った選択が、
お前を苦しめていたんだろうか‥
今となっては取り返しがつかない‥
‥暫く抱きしめていると‥
暴れていた藍が急に大人しくなった。
寝た‥‥‥‥?
そう思いそっと藍の身体から離れようとした時‥
藍の手がギュッと腰にしがみつく。
「ゆうき‥さびし‥そばに‥いて‥」
もう途切れ途切れのような声‥。
意識はないのかもしれない。
閉じられた瞳から涙が溢れる‥それを指ですくい‥
「藍‥俺は藍のこと、迷惑だなんて‥いなくなって良かったなんて‥思ったことはないよ。
愛していない日がないのも本当だった。
ごめん‥小川によろしくなんて言ったから。
それを聞いたのかな‥
藍‥
俺は今もお前が好きだよ‥
その言葉に嘘はないよ」
もう伝えないでおこうと決めた自分の気持ちがあふれてしまう‥
閉じられた藍の瞳はそのまま‥
俺の言葉は、届いていないかもしれない。
ゆっくりと藍の身体をベッドに戻し
そっと手を握る‥
藍は‥
寂しがり屋だから‥
そばにいてあげたい。
この夜が全てを包み込んでくれるように‥
俺達を隠してくれるように‥
そう願わずにはいられなかった‥
コメント
18件
ついに!愛しの王子様が!めっちゃ続き楽しみです😆
コメント失礼します☺️ 祐希さんがやっと本当の気持ちを言っていて藍くんに届いているといいなと思いました♪やっぱり祐希さんと藍くんの絡みを見ているとやっぱりこの2人が私的には良いなと思ってしまいました🤭また続きを楽しみに待ってますね♪これからも頑張ってください! 応援してます📣
やぁぁぁぁぁ!!祐希王子が来たよ!眠り姫の藍くん!目を覚まして!!あなたの大好きで愛しい王子が目の前にいますよ~!!