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魔女の仲人屋

第7話 - なりたいものは

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2025年10月30日

#猫

#犬猫殺処分

#ファンタジー

#魔女

#動物

#参考あり

月尾珠丸

🧹 なりたいものは

「セレネ。コアと出会ったときのこと、覚えてる？」「もちろん。忘れるわけないわ」セレネは凛とした声で答えました。「コアと出会った場所は覚えてる？」「もちろん覚えてるって。忘れないから。」すると、コアは少しうつむきましたが、すぐに面をあげ、「コアがいたところ、保健所だったでしょ？」「うん。」「もし、セレネが来るの、一日遅かったら、コア、死んでたよ」声は穏やかでしたが、その重みは計り知れませんでした。

「でもあの日、セレネが会いに来てくれたよね」「…」二人の目が、ダイヤモンドのようにキラッと光りました。

「だから、コアは生きてこれた。パートナーじゃなくても、パートナーじゃない意味で家族に迎えてれる人もいたよ。でも、出会えなかったかもしれない。ありがとう。セレネ。パートナーになってくれて。」コアは少し、笑いました。「こちらこそ。」セレネも返します。

「…あ、話が少し、ずれちゃったね」「それで？コアは何を思いついたの？」「それを今話すんだよ」コアはすぅっと一息ついたあと、話し始めた。

「さっき、話したでしょ？コアとあったときのこと、覚えてる？って」「うん」「知ってるでしょ？あそこにいた子があのあとどうなるか。」「…知ってるよ」セレネはうつむきながら答えました。

そう。あそこにいた子は家族やパートナーが見つからない限り、ドリームボックスと言われる箱に入れられ、二酸化炭素で窒息死させられます。最後まで飼い主を信じて。

このように二酸化炭素で犬や猫を窒息死させることを、「犬猫殺処分」といいます。

そしてお世話に手のかかる乳飲み子や子供は真っ先に殺処分の対象となります。

コアは乳飲み子ではなかったものの、手がかかりやすい子猫だったので、翌日、里親が見つからなければコアは殺される予定でした。

「それで？」セレネは聞きました。「コアは、家族が見つからない、良い御縁がない子に、家族やパートナーを見つけたいの」

高い声でいうと、コアはサッと目線をそらしました。きっと、人だったら顔が赤くなっていたでしょう。

「いいね、それ」セレネの声が響き、コアは上を見上げました。「いいと思う？」「もちろん。大事なパートナーが考えることが変なわけないでしょ？」「あたし、それいいと思うよ。やりたい。あたしも、コアと一緒にその仕事をしたい」にっこりと極上の笑顔を浮かべて言った。

「一緒にやろう。セレネ」「うん。」と、いきなりコアが真面目くさった様子でいいました。「でもさ、どうやってやる？セレネは10才のひよっこ魔女っ子でしょ？コアはまだ子猫だしぃ」「ひよっこ魔女っ子って失礼ね」ちょっと口を尖らせたあと、セレネはコアを抱いて肩に乗せた。「！セレネ？」「しきたり。やりたいことが決まった魔女っ子は、肩にパートナーを乗せて、親に言うのよ。『やりたいことができました』って」「へ、へぇ〜。コアの知らないことばかりだ。」「そうよ。あたしだって知らないんだから」「ひよっこだから？」「あのねぇ！」ちょっと言うと、セレネはそのまま部屋を飛び出しました。

「ママ〜！」「はーい？」「あたしね！」セレネはここで区切ると魔女ママの前に飛び出した。「ママ！セラ！ソラ！シイラ！あたし、やりたいこと見つけたの！」顔を火照らせ、コアを右肩に乗せ、叫んだ。「へ？！」魔女ママは驚いてフライパンと落としかけた。猫たちはシンクロして振り返った。「ほ、ほんとですか？！セレネさん！」シイラがグッとセレネたちの顔を覗き込んだ。「うん！ほんとだよ！」嬉しそうに頷くセレネを、コアも嬉しそうに見つめます。「それで？何をしたいんだい？」「ソラ。もっと祝福してやりなよ。」白猫のセラがソラの背中を軽くはたきました。「あのね、あたし、コアと一緒に、動物たちに家族を見つけたい！」

セレネがそういった瞬間、ろうそくの火が消えるように、しゅんっと静まり返りました。

「セレネ」魔女ママの重い声が広がりました。「なに？」「わたしはその仕事聞いたことないわ。魔女と恋人を結ぶ仲人さんはたまにいるけど、動物っていうのはあまり聞いたことないよ」「…‥」黙り込むセレネの横で明るい声が響いた。

「それが何？」「コア？」「いいよ。誰もいなくても。いなくてもいいでしょ？コアとセレネはこの仕事したい。‥…コアがどこから来たか、知ってるでしょ？」この最後の一言に魔女ママだけでなく、猫たちまできっぱりと首を横に振りました。「あれ？知らなかったっけ。じゃあ、話すよ」コアは自分のことを淡々と話し続けました。その間、誰も口を挟みませんでした。

「そう、だったの」話を聞き終え、魔女ママが言いました。そして、言葉を続けた。「わかったわ。そこまで言うなら。」「やった！」喜ぶセレネのもとに魔女ママと猫たちが近づいてきました。「魔女と動物を繋ぐ仲人屋になりなさいな。セレネ」魔女ママはそう言ってにっこりと微笑みました。