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ッ…あれ…?
「家…?」
どうやって帰って来たんだっけ…
電車に轢かれて死ぬ計画が…あぁ、もう嫌だ…
私はおもむろにカッターを取り出し、腕を切り付けた。
たらたらと血が流れ出た。
痛くない…
まだ、まだ切らなきゃいけない…
…少し、好奇心で血を舐めた…
「ッはは、美味しい…」
もっと、もっと飲みたい。もっと…もっと…
「ぺろ…ぺろ…」
「ッはは、ははははははッ…」
何だか、少し笑えてしまう…
その時、コンコンとドアがノックされた。
「父さん?急に笑い声が聞こえたけど…どうしたの?」
息子のカナダの声だった。
「あー、何でもないです。気にしないでください。」
「…心配だな、開けても良い?」
不味い、開けられたら腕を見られてしまう…
「いや、ちょっと…開けないでください。」
「どうして?」
「それは…えっと…」
不味い、本当に不味い…何か言い訳を考えなくては…
「開けるよ?」
「待って、それだけはッ…」
ガチャ…と音をたてて、ドアが開けられてしまった。どうにかして腕を隠さなきゃ…
「何で開けたんですか…」
「…それより、こっち見て」
「?」
「何、このカッター。血が付いてるんだけど…」
不味い、バレてしまう、私のリスカが、バレてしまう…
「そ、それは、血、じゃなくて、その、」
「何で腕庇ってるの?見せて?」
「か、庇ってないです…」
やだ、失望されたくない、嫌だ、私の本性を見ないでくれ
「…父さん、僕に隠し事するの?」
ぎゅっ…と抱き締められ、自然と涙が溢れ出してしまう。
「…ッ…ひぐッ…ひっぐッ…ぐすッ…」
「大丈夫だよ、父さん。僕は父さんの事、否定しないよ」
背中をゆっくりと、優しく撫でられ、子供のように泣きじゃくってしまう。
「ほッ、ほんとにッ、私の事ッ、ひぐッ、否定しなッ、否定しないッ?」
「勿論。否定しないから、父さんに隠し事してほしくない。」
「わかッ、分かったッ、見せるッ…」
優しい言葉に完全に安心しきった私は、不用意にカナダに腕を見せた。
「わ、痛そう…腕切っちゃうぐらい、辛かったんだね」
あぁ、私はこの言葉を求めていたんだ。誰かに優しくされたかったんだ。
「ごめんね、気付いてあげられなくて。」
彼はまた私を優しく抱き締めた。
翌日、私は有給を取り、病院へ出掛けた。
「二人だけで出掛けるのも、久し振りだね」
「そうですね…」
カナダの揺りかごのような優しい運転と、春の暖かな陽気に包まれ、私は眠たくなっていた。
最近全然寝れていなかったのもあるだろう。
「寝てても良いよ。着いたら起こしてあげるから」
「ん…」
赤信号に捕まり、カナダは私を撫でた。ふかふかの座席、カナダの大きな手、暖かな光に包まれた私が眠るのは、想像より容易かった。
「父さん、起きて。病院着いたよ?」
私はむっくりと起き上がり、まだ眠たい目を擦った。
「おねむかな?」
優しい口調で話し掛けてくる彼の胸に、私は顔を埋めた。
「おはようございます…」
「おはよう。帰ったら、一緒にお昼寝しよっか」
あぁ、たまにはこんな優雅な休日も良いな。
車を降り、病院の受付へ向かう。
平日にも関わらず、病院は混雑していた。
カナダが受付で色々な手続きを済ませている間に、私は待合室のソファに座る。
フランスに似て、カナダは身長が高い。
あ、カナダが戻ってきた。
「混んでて、3時間ぐらい待つって。」
「思ったより待つんですね…」
「そうだね」
私はソファに座ったカナダの腕にすがるように抱きついた。
数時間後、私が呼ばれた。
診察室に入ると、幾つかの質問をされた。
何だか怖くなり、カナダの服の裾をぎゅっ…と掴んだ。
彼は私の背中を優しく撫で、小さな声で
「大丈夫だよ」
と囁いた。
その後は、安心したのかぼーっとしていて、内容を殆ど覚えていない…
まぁ、要約すると疲労で軽い鬱状態だったようだ。
帰りに、マックに寄った。
「アメリカ、今仕事かな…」
「んー、そうだろうね。マック買ったって言ったら、残業しないで帰ってくると思うよ。」
ポテトの香りに包まれて、私達は帰った。