テラーノベル
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【Fクラス・テスト期間】
数ヶ月後、遂に前期テストが始まった――。
Aクラスなら闘志が湧き上がり、教室中に張り詰めた空気が漂っているはずだ。
「ハァ〜」
だが、Fクラスの教室内の雰囲気は暗い。
それどころか、ため息しか聞こえてこない。
「それでは、始めます」
重苦しい空気の中、ヤレヤレといった表情の教師は、無言で答案用紙を配る。
そして、合図と共に一斉に裏返された。
「あぁぁぁぁ……! やべぇ、山が外れたぁぁぁ!」
問題を見たサラは、そのまま固まり、絶望の表情を浮かべる――。
少しでも順位を上げるためには、出題範囲を予測し、山を張って高得点を狙うしかなかった。
(……終わった。終わった……詰んだ……)
必死に勉強したことで、以前に比べれば明らかに学力は上がっている。だが、覚えた問題がことごとく試験に出なかったのだ――。
「落ち込んでいる場合じゃない、頑張らないと!」
それでも何とか最後まで答案を埋め、テスト期間を乗り切った。
【そして数日後――】
サラの手元に、成績通知表が届く――。
そして恐る恐るタブレットを開き――そこに記されていた評価は……。
「E判定」
「……微妙」
「F」ではないので補習は免れた。以前の自分からすれば、確実に前進している。
しかしサラは、何とも言えない顔で通知書を見つめる。
(パパに怒られる)
間もなく夏休みに入る。
この評価だと、締められるのは間違いない。
「ハァ〜」
深いため息しか出てこなかった――。
※※※※※※
【とある研究施設】
「何故だ……なぜクローン体と同期できない。DNAの問題は無いはずなのに……」
以前は保存液の中で浮いていた脳には、電極や人造神経が付けられ、様変わりしている。
モニターに映る神経回路図とクローン体は繋がらず、エラー表示が出ていた。
「グレイス様、少しお休みになったほうがよろしいかと」
「ああ、もうこんな時間か……明日にするか……」
気がつけば、時計の短針は深夜と早朝の間を指していた。
グレイスは幼い頃に亡くなった妹を甦らせようと、日々深夜まで研究を行っていた。
「リリア、必ず生き返らせてみせる。もう少し待ってくれ」
少女の名はリリア・アークライト。
デルタの医療技術を持ってしても、病魔から救うことができなかった――。
兄のグレイスは、十歳の頃から神童と呼ばれるほどの天才少年だった。
彼はクローン技術を学び、リリアを蘇らせるため、研究に没頭していた。
「……」
だが、神童と呼ばれるグレイスをもってしても、リリアを蘇らせるのは困難だった。
保存液に浮かぶ少女の脳は、何も語らない。それでもまるで、静かに復活の時を待っているようだった。
※※※※※※
【王族専用控え室】
テスト期間が明け、学校には喧騒が戻っていた――。
今日は授業が午前中だけなので、なおさらだった。
ゆーり。
35
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「ねぇアイラ、これどうしよう」
控室を訪れたサラの手には、一枚の招待状が握られている。
行くべきか、どうか迷っている様子だ――。
「王族が平民のサラを呼ぶなんて珍しいわね」
それはウルフ王子が送ったお茶会の知らせだ。
王族が一般人を呼ぶ場合、有名人か為政者が多く、こと学校ともなれば、平民など稀だ。
「私って平民枠じゃない、なんで来たのか分からないの」
「接点はありましたっけ?」
ここ最近、EかFクラスの男子としか会話などしていない。
そもそも上位クラスの貴族連中は、ガン無視している――。
「ああ、入学式の時にちょっとだけだよ」
記憶を遡ると、グレイスと揉めた時、割って入った王子の顔が浮かんだ――。
「うーん、よくわかりませんが、出席した方が良いと思います」
「マジで……平民枠だよ……」
お茶会の作法など、幼少期に叩き込まれているから問題はない。
しかし、平民の体なのに呼ばれる理由が解せない。
他国の王子とはいえ、権力を笠に着て破廉恥なことをするような人物ではないだろう。それが目的なら、わざわざ招待状など送らないはずだ。
「というか、私たちには来ていますので、クーン枠で宜しいのでは」
腕を組み、サラは深く考え込む。
(もし後で正体が知られたら、断ったほうが失礼になる)
そう考えた結果――。
「じゃ行くわ、制服のままでいいよね、明日、現地で!」
「もう! 学校の庭園ではないのですわ! 迎賓館ですから、ちゃんとドレスコードがあります!」
「ええっ……めんどくさい……」
最近、平民枠を謳歌するステイシーの私服は、ここぞとばかりにファストファッションで固めている。
高級ドレスは嫌いではないけど、すっかりハンガーに掛けっぱなしだ。
「姫姉様、最近メイクも適当だし、ドレスも着てませんよね」
「あは、あはは(汗)」
痛いところを突かれ、サラは苦笑いを浮かべる。
こうしてサラ(ステイシー)は、明日、嫌々ながらも着飾って、お茶会へ向かうことになったのだった――。
※※※※※
【翌日・迎賓館】
翌日、迎賓館に向かうと、クーン枠の控室が用意されていた。
「では、始めますね」
「えっ?何を?」
サラが部屋に通されるなり、アイラとフィグネリアに捕まった。
「メイクのやり直しです!」
要するに、メイクと水色の高級ドレスとのバランスが悪いのだ。
「え、別にしなくて――」
「それでは駄目です!」
メイクはしていたが、髪は下げっぱなし、普段と変わりがなく、淑女とは言えない。
それに装飾品は無く、まるで「ちょっと高級な服を着た平民」である。
「さぁ始めますわよ!」
「ヒッ!」
ずらりと並べられた化粧品を前に、ステイシーは慄いている。
「……お手柔らかに」
「無理です!」
こうしてステイシーは、二人による本気のメイクにより、平民から貴族令嬢へと変身するのだった――。
※※※※※
【お茶会・会場】
広々とした宴会場に、テーブルと茶器が並べられ、茶会が始まるのを静かに待っている。
「ようこそおいでくださいました」
出入り口に立つウルフ王子は、きっちりとした身なりで、招待客を出迎えている
「お招き頂き、ありがとう存じます」
招待客が次々に入って来る――。
みな、ガッツリ本気メイクで、学校で見る女生徒とは大違いだ。
「あの子だれよ、生徒だっけ?」
「あの赤い髪はもしかして、サラなの?」
クーン一行が席につくと、周りの令嬢から、疑いの視線が向けられる。
それを一心に集めているのは、勿論サラだった――。
赤い髪はアップでまとめられ、品の良い装飾品が飾られている。
二人が施した本気メイクによって、まるで別人の様に光り輝いていた。
(うわぁぁぁ、グレイス派の連中も来てたんだ)
サラは背筋を伸ばし凛とした表情のまま、横目でグレイスの派閥の女子を見つけてしまう。
(もう、波乱の予感しか無いわ)
この場は、アーヴィン王国主催のお茶会だ。
なので、いつもの様に暴れる訳にはいかない。
(お淑やか、何を言われても、お淑やかに)
心落ち着かせる為に頭の中で、繰り返し呟く。
しかし――
「平民がノコノコと来る場所ではないのでは?」
予想通り、嫌味混じりの言葉が飛んでくる。
「クーン王国として、参加しておりますのよ」
アイラが、すかさずフォローを入れる。
分かりにくい貴族言葉を訳すと、「王国の庇護下ですがなにか?」だ。
王族からそう言われてしまえば、これ以上は不敬になる——。
「チッ!」
なので、聞こえない舌打ちをしつつ、キッと睨むだけで終わった。
「えっ?彼女が、あのサラなのか(驚)」
令嬢たちは目敏く、メイクで印象が変わっていてもすぐに見抜いてしまう。
しかし、ウルフは一連のやり取りを見て、ようやくサラだと気がついた。
「コホン」
貴族令嬢達はウルフの表情を見て、サラを気にかけていると思ったらしい。
態とらしく小さく咳払いをする――。
「……お集まり頂きありがとう存じます。アーヴィンのお茶を、どうぞお楽しみ下さい――」
サラに対する嫉妬と殺意。
王子と縁を結びたい貴族令嬢の下心が混じり合う。前代未聞のお茶会が、始まりを迎える――。
コメント
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第6話読みました! テストでE判定…前よりはマシだけど、パパに怒られるって分かってる感じが切ないですね😢 でもグレイスさんの研究シーン、妹さんを甦らせたいっていう執念がひしひしと伝わってきて重くて苦しい… そしてお茶会! アイラとフィグネリアに捕まってメイク直しされるところ、めっちゃ面白かったです笑 「平民がノコノコ来る場所ではない」って言われても、アイラがすかさず守ってくれるの良いコンビですね✨ グレイス派の令嬢たちからの嫉妬と殺意、これからどうなるのかドキドキします…!