そうコンヴィクトサイズ、『断罪の大鎌』とは、敵愾心(てきがいしん)を持つ者の身だけを切り裂き、味方に振るっても一切の怪我を負わせないと言う、超絶チートな技であったのである。
こんな技を取得しているのも、裏切り、騙し合い、嘘の中を生き続けて来た兄弟ならではと言えるのでは無いだろうか、悲しい事である……
とは言え…
地面に美しい所作で着地したオルクスはニヤリとした笑いを浮かべて言うのであった、その笑顔は自分の仮定が証明された事に対する満足や安息も含まれていたのかも、いいや含まれていた。
「ヤハリ、ナ、キサマ、ハ、ナカマ、イイヤ、コレヨリ、トモニアユム、イッシンドウタイノ、パーティ――――」
ドヒュッ!
言葉の途中だったのに、哀れオルクスは凶暴な熊の爪の横殴りによって吹っ飛ばされてしまったのであった、何を言いたかったかは永遠に分からないのであろう、くぅぅっ、残念至極!
殴り付けたのはタマちゃんでは無い、そりゃそうだろう、彼自身はオルクスや兄弟たちのことも確り(しっかり)覚えていたし、コユキの仲間、つまり自分の仲間と認識していたのだから。
なんだったら、今さっきの『断罪の大鎌』に対しても殺気も感じる事無く、何の心配もしていなかったのだから……
では、殴ってしまったのは誰かと言えば……
可愛らしいリボンをつけた雌熊、実の所『弾喰らい』にご執心だった女の子である。
大好きでたまらないタマちゃんが切られた! そう思ってしまった彼女は、我知らず、ほぼ反射的に攻撃者、スタンで固まり回避行動の一切を封じられたオルクスを、その力強い爪で抉り(えぐり)吹き飛ばしてしまったのである。
ぴゅ――ん!
気を失い吹っ飛んだオルクスであったがまだツキは残っていたようである。
進行方向には、訓練が嫌で嫌で仕方なくわざとらしく倒れている善悪の姿があったのだ。
「お、オルクス君! ぬぅ! ムッシュムラムラァッ!」
ガバっと立ち上がった善悪は高速で飛んできたオルクスをその体で受け止める瞬間、誰にも聞こえないような小さな声でそっと呟いたのである。
「エクスダブル」 ボソッ!
そしてオルクスをノーダメージで受け止めると誰にも聞こえる大声で言い放ったのであった。
「あ、ああー痛い、痛い、イタタタタァ! で、ござるぅ! も、もう、ダメでござるぅ! 訓練できなくなってしまったので、ござるよぉぅ~」
嘘丸出しであった…… とほほ、残念至極!
にやりと笑いながらサボる為に倒れ込んだ善悪の嘘は、魔神たるアスタ、アスタロトには簡単にそれこそ最初から丸バレだったのである。
「おいおい、善悪! そんな事で又サボろうとして…… んな事じゃ、いつまで経っても強くなど…… むっ! い、いかんっ!」 ブバッ!
話しの途中でアスタは姿を掻き消してしまった、何故だろうか?
答えは簡単だったが、善悪的には奇跡であった。
奇跡を起こしたのは『弾喰らい』タマちゃんの側近、僅か(わずか)な反応速度の遅れでリボンの可愛い雌熊ちゃんに後塵(こうじん)を拝(はい)して僅かに後れを取ってしまった熊さんが、挽回しようと近くに居た生物を無差別に襲おうとした事によるのである。
近くに寄ってきた生物、それは「何事? ふぁぁぁ~」と欠伸(あくび)しながら近付いてきたコユキの祖母にして、善悪の現師匠、トシ子であったのだ。
言うまでも無くアスタの思い人、ぞっこんメロメロの意中の人である。
当然の様に、仮病続行中の善悪なんかどうでも良い感じでトシ子の横まで移動して、ガッシッと肩を抱き『反射(リフレクション)』を展開したのである。
なるほどね…… そう言った経緯でこんなカオスになっていたと……
まぁ、いつもの事とは言え、本当にコミュニケーション不足のメンバーばかりで困った物だな、やれやれ全く……
普通に話せば分かり合えるだろうに……
考えてる事とか、思った事のままに普通に話せば殆ど(ほとんど)問題ないじゃない?
んもう、不器用系で鈍感系の主人公 (イライラ)じゃないでしょうに!
と言う訳でコユキが目にした風景に繋がっているらしい事が判ったのである、良かった良かった♪ かな?
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