※ついに2ケタいった
「道が…二つ?」
「うん。前はあそこ――天井の、壁梯子の先にあるところの。もう一つは、下に続いてるあれ」
前に来たときにはたしか見あたらなかった道と、行き先の分かっている道。どちらを選ぶか、全員で迷っている。
「本当なら二手に分かれるのが一番いいんだろうが、連絡の手段が無い以上は危険だな…」
「ここは思いきって冒険して みる?分かんないときは、もう勘しかないよ」
アドレーヌの提案。画家の彼女らしい、危険な択だった。
――でも、まあ。
(分かんないを突き詰めるのも、楽しいよね…!)
「…カエデは、どう思う?」
「うーん…」
当人の意見も聞いてみる。あくまでも目的は彼女の友達の捜索。それを忘れて遠ざかっては本末転倒だ。誰も答えは知らないとはいえ、優先される順位は間違いなくカエデのほうが上だろう。
「わたしも分かんないけど…なんか隠し扉のにおいがするような…だから下のほうに賛成っ!」
「え…ええー!?んな適当な…」
「前に出現しなかったということは、そうなのかもしれませんが…道が分かっているぶん、ある程度は上のほうが進みやすいんじゃないですか?…つまり、わたしは上に一票で」
少し適当な理由でカエデは下を、安定をとるリボンちゃんは上を選んだ。
「うーん…あたしも下かなぁ…見たことない道ってちょっとワクワクするし!」
「お、おい…そんな選び方で大丈夫かよ?なら俺は上を選んでおくぞ 」
「二対二ですか…こうなったらもうオイラはカービィさんに任せます!」
「大事な一票をぼくに委ねないで!?」
ワドルディからパスされた決定権の重みをひしひしと感じながら考える。もしぼくがここに初めて来たとして、どっちを選ぶだろう?強い相手から逃げるのなら、上か、下か…
「…よし、決めた!」
全員の視線が集まる。緊張感が高まる。静かな空気が流れて、ぼくは口を開く。
「今回は、下に行ってみよう」
理由はないから、なんとなくだけど。でもそれは、ここにいる全員が同じこと。納得してるのかどうか分かりにくいが、この判断に異論を唱えるひとはいないみたいだ。
「道が決まったのなら、早く行こう。無事かどうか、すごく心配だし…」
カエデの顔が曇る。安否が何も分からない。それが、ぼくの考えている以上に不安を与えている。それを元気づけるのは難しい。だから今できるのは――
「慎重に進もう。これから先、何があるか分からないからね」
ちゃんとリーダーシップをとって、安心させてあげること。それだけで、かなり楽になるはず。せめて今だけは、頼りになる存在としてありたい。その思いが、ぼくを突き動かす。
「…にしても…一本道すぎないか…?一体どこまで続いてるんだよ…」
「なんか、レーズンルインズよりかは控えめな感じだね…ちょっと拍子抜けしちゃった」
少し前に訪れた砂漠の遺跡を思い出す。あそこではよく大岩に追いかけられた記憶がある。その点こっちは圧死スポットが多いとはいえ、配置されているのがシャッツォだからまだマシなほうだ。階段部分にギガッツォを配置されるよりかは絶対。
「…あれ?ここ…行き止まり?」
「いや…よく見て。ここ…何かで動かせそうな感じがする」
進んでいくと、何もない小部屋に辿り着いた。壁はさっきまでの廊下部分と同じ不思議材質でできていて、色々な場所を押してみても何も起こらない。やはり怪しいのは、何かで動かせそうだとにらんだところだ。一見すると何の変哲もない壁なのだが、よく見ると紫の筋のようなものが走っているのが分かる。
「…叩いてみるか?」
「いや…やめといて。案外脆いかもしれないし…遺跡での生き埋めエンドなんてザラだよ」
力を行使しようとしたデデデはとりあえず制止しておいて、あらためて思慮をめぐらせる。…たしかこのピラミッドは、電気で動いていたはず。なら…
「アドレーヌ、スパーキーかコンセは描ける?」
「いいけど…それでどうするの?」
「んむ…よし!」
キャンバスから飛びだしたコンセを吸い込む。エネルギーがぱちぱちとはじける。描かれた偽物だからできるかは分からなかったけど、今度はうまくいった。暴走する電気をまとめる金のアンクレットと、額部分の青い宝石飾りが光を反射して、暗い部屋を照らす。
「“スパーク”なら、きっと…!」
「え、ええっ!?なにこれ…!」
「これがカービィさんの力、コピー能力です!…そういえば、カエデさんは見るのは初めてでしたよね。」
「うん、すごく…すごいよ…!」
もはや「すごい」としか言えなくなったカエデを意識の端に押し寄せながら、さっきの場所に向き合う。パワーを強くして壁を壊さないよう、静かに集中する。
(指先から…そっと放出する…)
繊細に、ぱりぱりと。 微弱な電気を流す。
複雑な回路の中に、1本の紐を通すみたいに。
――ガコン――
(…音…)
壁越しに、何かが外れる音がした。重い板が外されるときのような、落ち着いた音。
「ど、どうなったの?」
「分かんない。 けど、何かが動いた――というか、動きだした音がした。少ししたら、何か起こるか――」
言い切る前に、目の前の壁が外される。部屋の一面にぽっかりと空いた穴は、吸い込まれそうな闇を抱いていた。これが奥に続いている道なのか、そうではないのかは分からない。
「よし、進も――」
「待て」
足を踏み出そうとしたところを、デデデに止められる。頭を掴まれた状態でなんとか振り返ると、彼の目は奥を睨んでいた。
「な、なに?せっかくいい感じだったのに…」
「…来る」
「は?」
「壁に掴まれっ!」
怒号にも似た声が飛ばされ、一瞬呆気にとられる。しかし奥から地鳴りがしたとき、その言葉の意味を理解した。
なだれ込む砂の海が、あっという間にぼくたちを呑み込んだ。
(っっ――!!)
激しい流れに、思わずスパークのコピーが外れた。そこら中が砂だらけで目も口も開けられない。部屋は狭かったが、今の自分たちがどんな状況なのかは分かりにくい。たださらさらと足をとるだけの砂が、今はとても力強い。
(このままじゃ…身動きがとれない…!)
(動きだした…!)
壁の外の轟音を聞いて、思わず身を硬くした。砂漠の遺跡に逃げて、偶然電気式のギミック部屋を見つけて隠れ込み、出られる機会をうかがっていたのに、こんなに早く嗅ぎつけられるなんて思いもしなかった。仕掛けが作動したからすぐにはたどり着けないだろうとはいえ、自分もまだここから抜け出す道を見つけられていない。つまり、突破されたら何とかして応戦するしかないわけだ。
(それにしても…あの仕掛けを動かせたってことは、相手はウチと同じで、雷を使えるってことか…ちょっと厄介かもな…)
部屋の隅に寄り、身を小さくした。魔力を察知されないように、息を殺して潜む。ゴウゴウと唸る壁の向こうとは裏腹に、この一人きりの部屋はとても静かだった。
――…、…――
まとわりつくような緊張感で、集中力が上がっていたのかもしれない。遠くから、壁の向こうからほんの微かに聞こえてきた、音とも言うべき小さな声。はっきりとは聞きとれなかったけれど、もうずっと聞いてきたものだった。
(まさか…向こうにいるのは、カエデなのか…?)
離ればなれになった仲間のひとり。彼女も何とか生き残っていたのだろうか。安堵感と同時に違和感も覚える。カエデは自分とは違って、電気を出すことができない。だから必然的に、ほかの誰かがいる。
(開けるべきか…開けないべきか……でも、このままだと…)
カエデは砂に埋まったまま、助からないかもしれない。多少は頑丈な体つきとはいえ、カエデは日光と水がないと生きていけないから。でも、ここを開けたことで、自分たちの身に危険が及んだら…?
「…ああもうっ!ちょっと待ってろ!」
入ってきた壁に手をかけ、電気を同じ回路に通していく。細い迷路を抜けた先にある鍵を目指して。慎重に、一歩間違えるとどうなるか分からない。
「っし…これでどうだ…?」
鍵穴まで辿り着く。壁一面を、電気が駆け巡る。万が一に備えて、後ろの壁際まで下がっておいた。
数分。まだ壁は開かない。間違えたところに通してしまったのか、それとも一度きりのギミックだったのか…いずれにせよ、自分では力不足だったということか…?
――なんて杞憂は、一瞬で崩れていってしまった。
ガコンという音と共に、壁が倒れる。しかし完全に倒れることはなく、それは坂道のように傾いて止まった。その上から、ぱらぱらと砂粒が落ちてくる。やがて――
「ひゃあああーーー!!!ぶつかるっスーーー!!!」
…知らない絶叫も一緒になって降ってきた。
「わっ、と…」
「うおっ、あぶね…」
「えちょ待ってこれスピード出過ぎじゃ――(カービィは床にぶつかってログアウトしました)」
「…大丈夫?」
「まあよくあることなのでいちいち気にしてたらキリがありませんよ――心配なのは心配なんですけど」
「急に塩対応だねリボンちゃん!?」
急に部屋に現れた6人を一見して、ひとまず敵意は無さそうだと判断できたとはいえ――
「…さわがし…」
そのにぎやかさに呆気にとられていた。
あとがき
あけましておめでとうございます。フジミヤです!
…じゃねえんだよなぁ!?前回投稿したのいつだっけ?二週間以上前かもだぞ…?まあこうして生存報告はできたわけですし…語るか()
まず遅れた言い訳いいですか?…単純に課題が終わらなかったんですよ…執筆時間がとれなくて…もう少しで出せるかもな状況が続きっぱなしでありました…
んで次。本編の話なんですが、前半の長ったらしいくだりいらないですよね!?気づいたらまた3500文字オーバーしてるし…まあ長文なのはいいことなんですけども(?)
そしてようやく新キャラ出せました!ここまで長かったー…名前自体はサラッと出てるんですが、名乗るのは次回になりそうですね。現在分かってるのが名前と能力だけなのでもう少し情報を公開したいところですが、それもまた次回ということで…
毎度ながらここまでのご閲覧ありがとうございます!フォローやブクマ、コメントなどしていただければめっちゃ喜びます!
次回もよろしくお願いします!
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