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「葉都季さん……どうして黒幕なんかを?」 あまり話をしたくなさそうな顔ではあったが、吃りながらでも少しずつ話してくれた。何があったのかを。お察しのとおり彼らは長い付き合いらしく、ある日、あのゲームマスターがこのゲームのセットをしているところに立ち会ってしまったらしい。
「え? ガチのデスゲーム?」
「ああ。集められる限りの感染者《クズ》どもを集めて命をかけて呪いから解き放たれる権利を奪い合ってもらう」
「いや……駄目だよ! 人の命をなんだと思ってるの!」
「葉都季ぃ……金はぁ……命より重いんだよ」
こんなような感じで立ち会ってしまったので黒幕にして一緒に消されかけていたらしい。気乗りする約束ではなかっただろう。だが本当に果たせぬ約束になるとは思わなかったはずだ。彼女は強かった。消えてもなかったことにはならないものだ。探索というより最早、綱渡りであった。ちなみに何故、感染していない自分たち姉弟まで参加させられているのかというと、どうやら自分たちが呪いの謎を調べようとしていたかららしい。嗅ぎつかれるのも時間の問題であればいっそ開き直って参加させてしまった方がはるかに建設的だと。それにしてもまさか彼女が黒幕だったとは。どうりで今までは異常に大人しく何もしていなかったのに黒幕探しゲームが始まった途端、騒ぎ出していたわけだ。今、思うと割とあるあるじゃないかと。どうして今まで気づかなかったのだろうと。しかしこのままゲームマスターに黒幕を差し出すのは違う。自分たちをこんな馬鹿げたゲームに巻き込んだ奴を喜ばせるわけにはいかない。それこそあいつの思う壺だ。ここからが反撃開始だ。
「笑凪さんに最後に言われたんだ。このゲームの謎を明らかにして終わらせてほしいってお前ら、まだやれるか」
「当たり前じゃん」
「よし。ならやるぞ。絶対に勝つ!」
渚冬の言葉で全員にやる気スイッチが入る。とはいえ何をすればいいのだろう。今、分かっているのはゲームマスターが感染者を憎んでいるということと、ゲームに反対した葉都季さんを黒幕に指名したということ。というかもうすでに何人が思っているだろう。ゲームマスター、クズじゃねぇかと。
「情報掴んでこい」
それが長男からの依頼だった。確かに。情報量で負けていれば勝てるものも勝てない。アイツはおそらく院内にいるはずだ。
「分かりました。行きますか」
磨輝のやる気スイッチの入り方がすごい。柄でもなく敬語になっている。
「行くの?」
「貴方も行くべきかと。人数が多い方がいいですからね」
私もかと。やっぱり一人だと怖いんじゃないかと。しかしまだ学生の末弟に一人でどこの馬の骨とも分からないゲームマスターのところへ向かわせるのもそれこそ自分が怖い。一緒に行ってやろう。
「もう行くしかないね」
「ええ……」
「彼らなら無事に帰還できるかと」
心配する風卯花に話す茉津李。姉弟だがあまり性があっているわけではない。それでも信頼はしてくれているらしい。それならば信頼に応えなければならない。だがそんな状況が面白くない者が一人。しばらくどこかへ行っていたと思っていた看護師が何か紙を持って歌華に渡した。
「どれどれ……近づいたら殺すだって。どうする?」
「いや。このまま逃がす方がヤバいでしょ」
「探さなくても殺る気だろうし、早く犯人を特定するべきだな」
全く動じない風卯花と旬に安心する(歌華に毒されたのではとの懸念もある)。
「みんな戦う気……犯人探しをする気だね!」
そして皆で案を出し合い、陶瑚がある作戦を立案してくれた。
「みんなでトラップを一式仕掛けるの」
「へぇー! なんだか面白そうだね!」
「できれば如何なる形であろうと、こういったことには加担したくなかったが……」
正にやむなしの手段であった。こうして作戦が始まった。全ては真実を聞き出すために。なんとなくゲームらしいことをしてみる。
「危ないっ!」
「俺はいい。みんなは最後まで……」
「あたしを庇って……何で……」
と、歌華と旬(高校でバントをしていたメンバーの復活?)。メッチャ悪いが、これも演出だ。手加減はしない。淡々と化けの皮を剥がしていこう。無茶苦茶は極論ばかり並べ始めることがあっても。埒が明かなくなっていくことだって全然あり得るのかもしれない。静かにしているが怒りと悲しみが混じっている。もう何を言っても無駄な状態にまで発展するようなことがあったらどうしよう。
「ゲームは私たちで進めておきます。皆さんは犯人の居場所を探してください」
「ありがとう! 絶対、生き残れよ!」
「全員でかかれば何とかなるよ」
何人かでゲームを進めている風にしておいてゲームマスターの気が逸れている間に犯人の居場所を特定するまでが作戦だった。全ては真実を聞き出すために。
「他に方法ないよ!」
「やらなきゃ私たちがやられるよ!」
「くだらないことに巻き込んで……覚悟をしてもらおう」
「やっと犯人に会えるね」
おそらくだがこの扉の先にゲームマスターがいる。いよいよ真実を聞き出せる時が来たのかもしれない。