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広場の片隅、こはるは兄の拓也が買い物を終えるのをじっと待っていた。
周囲では子どもたちが遊び、大人たちは物々交換の声を響かせている。
しかし、こはるの心はどこか落ち着かなかった。さっき見かけたアメリカ兵の影が、頭から離れない。
「お兄ちゃん、まだかな……」
こはるは小さな声でつぶやき、じっと前を見つめる。
そんな時、背後から近づく足音がした。振り返ると、あのアメリカ兵がゆっくりとこちらへ歩いてくるのが見えた。
彼の顔は冷静で、笑みを浮かべていたが、その笑顔はこはるにとっては怖さを隠せないものだった。
一瞬、逃げようと思ったが、足がすくみ、動けなかった。
「こっちに来て、もう怖くないよ」
兵士はそう言いながら、無理なく手を差し出した。
ためらいながらも、その手はこはるの小さな手を包み込んだ。
「お兄ちゃんここにいる。もう大丈夫だ。」
手を引かれ、知らない方向へ歩き出す。周囲の声もだんだん遠ざかっていく。
「いや、いや……」
こはるは小さな声で抵抗しようとしたが、その手は強く、離せなかった。
心の奥底で、助けを求める気持ちと、恐怖が交錯する。
広場のざわめきから離れ、建物の影に入る。
そこで彼女は、これまで感じたことのない孤独と絶望を味わうことになるのだった。