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こはるの心臓は激しく鼓動した。
知らない場所の冷たい空気が肌に触れ、彼女の小さな体は震えていた。
アメリカ兵は言葉少なに歩き続け、こはるの手をしっかり握ったままだった。
こはるは必死に逃げたい気持ちと戦いながらも、恐怖で声も出せず、ただ足を動かすしかなかった。
「怖くない……怖くない……」
自分に言い聞かせても、胸の奥の不安は消えなかった。
薄暗い路地裏、何の目的で連れてこられたのか分からずに小さく震えていた。
「ここは……どこ?」
兵士はこはるの肩に手を置き、冷静に言った。
「大丈夫だ。怖がるな」
その言葉は嘘のように感じられた。
なぜなら、そこにいる誰もが自由ではなかったからだ。
こはるは目を閉じ、必死に兄や母のことを思い出した。
「拓也、お兄ちゃん、助けて……」
しかし、答えは返ってこなかった。
その夜、こはるは知らない世界の冷たさと、孤独を初めて知ったのだった