コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝、目が覚めると、いつもなら隣に居るはずの恋人が居なかった。
いつもは僕の方が早く目が覚めて、すやすやと気持ちよさそうに眠っているじらいちゃんを起こすのに、今朝はベッドの中にじらいちゃんの姿が見えなかった。
珍しくじらいちゃんのほうが早く起きたのかと思い、リビングの方へ行ってみるがそこにも姿はなく、他の部屋の電気がついているようにも見えなかった。
家のどこにも恋人の姿が見当たらず心配になりメッセージを送る。
返信を待っている間に、冷静になろうと椅子に座ったとき、僕はそれに気づいてしまった。
リビングのテーブルの上に置かれている一輪の花と、手紙の存在に。
手紙には「いままでありがとう」としか書かれておらず、なぜ出て行ってしまったのかも、どこに行ってしまったのかもなにも読み取れなかった。
そこで、いつも記念日に花を贈り合っていたことを思い出し、急いで置いてあった花の種類と花言葉を調べる。
手紙と一緒に置いてあった花は「秋明菊」という花で、花言葉は「薄れゆく愛」。
いままでありがとうと書かれた手紙と一緒にこの花が置いてあったということは、じらいちゃんはもう僕に愛想をつかしてしまったということなのだろうか。
じらいちゃんは前から僕と別れたくて、でも今まで言い出せずにいた結果、今回置手紙と花を置いて家を出て行ってしまったのか。
そう考え付いた瞬間、背中に嫌な汗が伝い、軽く頭がパニックのような状態なってしまう。しかし、そう考えるとすべて辻褄が合ってしまうのだ。
送ったメッセージには既読もつかないし、電話をかけても出てくれない。
未練がましくてしつこいとはわかっていても、この関係をたった一輪の花だけで終わらせるなんてしたくなくて、せめて本人から直接聞きたいと思い何度もメッセージを送ってしまう。
しかし、何度連絡をしてもじらいちゃんは返事をしてくれなくて、ダメもとでメンバーに連絡をする。
やはり皆知らないと言っていたが、仮にじらいちゃんの行き先を知っていたり匿っていたりして、じらいちゃんがそのことを口止めしていないはずがない。
正直ホテルに泊まっている確率の方が高いとは思うが、少しでも可能性があるなら、メンバーの家に行ってじらいちゃんが居るか確かめてみよう。
何もせずにじらいちゃんから連絡が来るのを待っているだけなんてできない。
もしじらいちゃんが行くなら一番近いかるてっとさんの家だろうと思い、確証はないが向かってみることにした。
しかし、いくらかるてっとさんの家が近くても今日はもう日が暮れてしまったため、さすがに今から家に行くのはまずいだろうし、明日にしよう。
無礼だとは思うが、先に連絡を入れてしまうと、もしじらいちゃんが居た時に移動してしまうかもしれないと思い、連絡は入れないことにした。
かるてっとさんには申し訳ないが、今はじらいちゃんと話をすることを最優先にしたい。遠慮をしている場合ではないだろう。
そのあとも心当たりのある場所を探したが見つからず、日付を超えたあたりで明日に備えて寝ようと家に帰った。