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・・・その日の夜。ふと、すまないは目を覚ました。
隣ではエウリはスヤスヤと寝ていた。愛おしい人が隣にいる幸せは、結婚して何年も経つのに、とても幸せいっぱいだ。
水でも飲もうとリビングにやってきた。ふと、気がつく。
「・・・あれ?ハチク?」
ふと、ハチクが眠っているはずのベッドにハチクはいなかった。
トイレやハチクが好きなおもちゃが置いているところにもハチクはいなかった。
「・・・どこいったんだろ・・・まさか、外に出ちゃったり!?」
すまないは慌ててサンダルを履き、夜の外へと飛び出した。
✵✵✵✵✵
「ハチクー?ハチクどこー?」
すまないはハチクを探していた。だが、ハチクの姿は見当たらない。
「うーん・・・そんな遠くは行ってないはずなんだけど・・・」
と、すまないはハチクを探す。ふと、ハチクを拾った竹林へと向かう。
どうしてそこに向かったかは分からない。けれど、そこに居るかもしれない。という僅かな願いを持ちながら。
「・・・ん?」
ふと、竹林にはあるはずも無いものがそこにはあった。
「・・・え・・・“血”・・・?」
何故かそこには血が零れていた。しかも、それはまだ乾いていない。まだ新しいということが分かった。
「・・・え、どうして血が、ここに?」
すると、誰かが近寄ってくる音が。思わず振り向くと、そこには数名のフードの人が。
しかも、蓬莱が撮った写真のフードたちと同じフードだ。蓬莱たちが会った人と、同一人物だろう。
ジリジリと近寄ってくる。
たまたま見てしまった蓬莱たちを追いかけたんだ。恐らく、見てしまった目撃者を消そうとしているのだろう。
すまないは剣を持ってきてないことに軽く唇を噛み締めた。いや、きっと剣があってもこの人数を倒すことなんて・・・そう思っていると、フードの人たちはこちらに手を伸ばした。
「・・・ッ!」
すまないはぐっと目をつぶる。すると、
「ギャッ!!」
突然叫び声が聞こえた。すまないはゆっくり目を開ける。
すると、月を隠していた雲がゆっくり明けだす。
そこには、月に照らされ、銀色に見える恐らく茶色の毛並みの、人をあっさり丸呑みしてしまいそうな大きな“狼”がこちらを見定めていた。
「ッな!?・・・おい!!あれは試作の“エンシェント・ウルフ”じゃないか!!処分したんじゃないのか!!」
「あぁしたさ!!ここに置き去りにしたさ!!」
「じゃあなんであいつはここにいるんだ!?」
「知らねぇよ!!」
フードの人たちは、すまないそっちのけで言い争っていると、狼が降り立つ。
その王者の姿に息を飲むほど、息をするのを忘れてしまうほど美しい見た目にすまないは心を奪われた。
すると、その狼は次々フードの大人たちを噛み殺していく。
それは恐ろしいはずなのに、とても目を離すことが出来ない。息を、呼吸を、瞬きを忘れてしまうと錯覚してしまうほど、美しかった。
✵✵✵✵✵
しばらくすると、そのフードの人たちは、全員息絶えた。数名逃げ出したが。
すると、狼はゆっくりゆっくりすまないの元に足を運んだ。
逃げなければ、逃げなければ、殺されてしまう。古い布のように切り裂かれ、死んでしまう。 それなのに、逃げることが出来ず、目を奪われたまま。
すまないは、思わず座り込んだ。
もう、狼は目と鼻の先。すると、狼は口を開けた。