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yuka @猫耳メイド
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#あべさく
めかぶぷりん
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雪月❄️
365
温室で茉奈、ルイと対峙した直後、佐久間の粒子転移で岩本と茉奈の三人で飛んだ先は、階段ホールだった。
床に降り立った瞬間に、岩本に腕を掴まれた状態の茉奈が岩本に蹴りを繰り出し、咄嗟に距離を置いた。
💛「つえーな」
🩷「うわ、照でもそう思うんだ。今の一撃で」
💛「反応速度とか、蹴りの出し方で違うんだよ」
🩷「おおー、なんかプロっぽい」
💛「お前、俺のことなんだと思ってんだよ」
そうして軽口を叩けるのもそこまでだった。
空間を縮めて距離を詰めてくる茉奈。
しかし、こちらの攻撃は別の場所に空間を繋げて逃がされる。どうやっても、向こうから一方的に攻め込まれてしまっている。それに、岩本が言っていたように茉奈は肉弾戦が強い。恐らくは空手だろうと岩本は見ている。
厄介だった。
それが、能力だけではないということも分かっている。
「邪魔しないで! もうすぐなんだから! もうすぐでアタシはあそこに帰れるの! あそこに……あそこって、どこ? 違う。アタシが帰りたいのは、友達の……友達って、なんだっけ……」
茉奈の言葉に、佐久間は苦しそうに顔を歪めた。
🩷「ダメだ! もうそれ以上、異能を使っちゃダメだよ! このままじゃ、キミが壊れちゃう!」
「煩いっ! アンタらが何もしなければいい話でしょ!」
🩷「あ、そっか」
妙に納得したかと思うと、佐久間は床に降り立ち、体の力を抜いた。茉奈が振り抜いた蹴りが佐久間の脇腹に当たり、体が吹き飛ばされる。
💛「佐久間!」
床に手をついてピョンと飛んで着地をするも、脇腹を抑えて座り込んだ。
🩷「いたた……威力、つよー」
「なんで……」
驚いたように目を丸くしているのは、佐久間を蹴った茉奈の方。
🩷「え、だってさ、俺らが攻撃するから、キミも攻撃するわけじゃん? だったら、しなきゃいいのかなって」
「……なによ、ソレ……」
佐久間の考えが分かったからか、岩本も手を下ろしてその場に立ち尽くす。
それを見て佐久間は満足そうに頷き、立ち上がった。
🩷「俺らはもう、何もしないよ。だから、茉奈ちゃんも何もしなくていいよ」
「な、そんなわけっ! だってアンタら、アイツ、阿部亮平のこと助けに来たんでしょ!? アタシらの敵でしょ!?」
🩷「もちろん、阿部ちゃんは助けたい。俺らとキミらは敵なんだと思う。でもさ、絶対戦わなきゃいけないなんてこと、ないんだよ」
「っ、意味、わかんない」
🩷「そう? 敵の立場だからってみんなが悪い人なわけじゃないってさ、阿部ちゃんが教えてくれたんだよ。だから俺らはここに来られた。茉奈ちゃん、阿部ちゃんと話した? 阿部ちゃん、ここに来てからどうだった?」
問われ、茉奈は考えるように押し黙った。
数秒の沈黙。それでも、茉奈が唇を動かす。
「普通、だった。普通に話して、普通にご飯食べて、普通に接してくれた……」
🩷「だよね。阿部ちゃんなら、そうすると思う。茉奈ちゃんも、阿部ちゃんを傷つけるつもりないって言ってたじゃない? だったら阿部ちゃんは、茉奈ちゃんを敵視したりなんかしなかったと思うから。同じなんだよ、俺らも。ううん。俺らはずっと、敵だと思ってた。けど、阿部ちゃんがそうじゃないんだって教えてくれて、納得して、そういう風に考えられるようになったんだと思う。久世がしてることは許せない。阿部ちゃんをなんとしても助け出す。でもそれと、茉奈ちゃんを攻撃することは別なんだよ」
💛「だな。ホントに、変わったと思う。俺らは、阿部のおかげで。それだけ、俺らにとって阿部は大事で、大切で。だからこそ、こんな風に扱われたくない。苦しめたくない。阿部の電脳総命を使わなくても、普通に暮らせる方法が見つかればいいんだろ? それ、阿部にちゃんと頼んだら聞いてくれるはずだ」
「でも、そんな……アタシは、敵で、アンタらを倒さなきゃ……敵って、なんで……?」
🩷「うん、分かんないよね。俺らも分かんない。茉奈ちゃんが久世に力を貸してたのはホント。阿部ちゃんの体を転移させたのも茉奈ちゃん。それはね、ちゃんと阿部ちゃんに謝らないといけない。でもそっから先は、自分で選べる。俺らと戦うのも、戦わないのも、茉奈ちゃんが決めていいんだよ」
「……いいの……? 命令、しないの?」
🩷「しないよ。命令なんて、するもんじゃないんだよ」
💛「そういうこと。戦わないで済むなら、俺らもそうしたい。戦うのが目的じゃねえからな」
「アタシ、は……戦いたく、ない。ホントは、《空間錯位》使いたくない。人を傷つけるの、好きじゃない。そのために空手、習ったんじゃない」
🩷「うん。じゃあ、戦わないでいよう。茉奈ちゃん、阿部ちゃんのいる場所が分かるなら、教えてほしいんだ。いいかな?」
茉奈はまた黙り込んだ。
本人の中では、まだ葛藤があるのかもしれない。それでも、佐久間も岩本も急かすようなことはなかった。阿部を助けたくて焦る気持ちも、逸る気持ちもあるけれど、それを押し付けるようなことはしない。
「……いいわ。なんか、琴波さんがアンタらと一緒に来た理由、今なら分かる気がするから……こっちよ」
そう言って走り始めた茉奈に、佐久間と岩本は顔を見合わせて頷き、その後を追って走り始めた。
庭での戦闘は激化していた。
降り注ぐ鋼の羽根と、宙に浮かんで破裂して礫を飛ばす岩。それらを弾くように伸びる無数の影。その影が自分の影と繋がりそうになると、向井の重力を使って高く飛び上がり、影を小さくすることで避ける。
攻防は止まらない。
🧡「影て、戦いづらすぎん?!」
💜「こっちの影と繋がったらアウトなのが、やりづらいな。まあでも、どっちかが操られても、戦闘不能にするのは変わんない。康二、やられても文句言うなよ」
🧡「ふっかさんこそ、後でいろいろ言ってこんといてよ」
💜「ま、そうならないように頑張るけどさっ」
鋼のドームで雨霧を覆うも、全方位に伸びた影が鋼のドームを更に覆い尽くし、ドームが消されていく。
🧡「ってか、あれ何なん? 鋼を壊す影て、聞いたことあらへんよ」
💜「多分、支配権を持ってかれるんだろうな。翔太の風花とか、舘さんの《氷結》とかと同じ。覆われればあっちのもんってこと」
🧡「厄介やわー」
💜「ん? ちょっと待って。影ってさ、光があるからできるんだよね?」
🧡「せやね」
💜「じゃあさ、あの明かり、なくしちゃえばいいんじゃね?」
🧡「あ」
視線の先には、灯台のような形をした四つの照明塔。そこから強い光が出て、この場所は昼間のように明るくなっている。
それが雨霧の異能を補強しているのであれば、そのままにしておく理由はない。
💜「康二は重力使ってて疲れてきてるだろ。俺が雨霧を引き付けるから、灯台の封鎖は頼んだ」
🧡「任しとき! 忍者のようにコソコソ動いたる!」
深澤が雨霧のことをドーム状の鋼で覆ったのを見て、向井は一本目の柱の陰まで急いだ。異能のコントロールは苦手で、宮舘や深澤のようにピンポイントでその場所を狙うことは自分にはできないのが分かっている。
だから、近くからその場所を目視し、配置をしなければならない。壁を作って光を見えなくするのと、ライトを割ってしまうののどちらがいいだろうかと考える。
四つ置かれた照明塔の、四方向を同時に塞ぐことができるか?と考え、頭を振った。
🧡「無理や。時間がかかるし、塞ぎきる前に攻撃されたらアウトやし。割るか」
ライトの位置を確認してから、ライトの近くに岩を配置する。光を遮らないように、外側に向いている方に、ライトと同じ大きさくらいのものを。これなら、岩を弾けさせた時に当たらなかったというミスはない。
そーっと照明塔の陰から顔を覗かせると、深澤と雨霧の戦いは、建物の方で行われていた。つまり、入口の門の方で動いても今なら気付かれない。深澤の攻撃に合わせ、向井は猛ダッシュで逆側の照明塔へと走った。
飛び込み前転をするように照明塔の陰に隠れると、一つ目と同じように岩を配置する。
ここから、建物側にある照明塔に行かなければならない。
どうやって深澤に合図を出そうか。
考え、頭を捻る。数秒。
🧡「うん、分からん。直接、言うしかないわ!」
こういうのを考えるのは性に合わず、早々に放棄するとそこから飛び出して、雨霧と戦っている深澤の方に向かった。
雨霧の影の矢を、ジャンプして避けた深澤に、更に矢が迫っているのを見て、向井は矢の真上に岩を出現させて圧し潰す。
💜「あれ、康二?!」
なんでここにいるのかという顔をしている深澤に、向井は手を合わせてスマンと言うようにポーズだけで返す。
それから、あっちと指をさすのは、建物側にある照明塔。
けれどそれだけで深澤には伝わったらしい。なるほどね、と頷いたかと思うと、雨霧の背後に鋼の壁を作って、それをこちらに向かって動かしている。迫る鋼の壁に、雨霧が入口の門の方へと向かって来る。
🧡「さっすが、ふっかさんや」
深澤の鋼の壁に合わせるように岩壁を作り出すと、雨霧の視界を遮り、その隙に建物側の照明塔へと走った。
前の二つと同じように、三つ目のライトにも岩を設置し、四つ目にも移動して同じように岩を配置する。
これで、準備は整った。
雨霧は目の前にいる深澤の相手に手こずっているようで、こちらを見てはいない。
右手を軽く上げ、人差し指と親指以外の指を握り、手を、捻った。瞬間、内側から爆発するかのように破裂した岩がライトに当たり、四つ全てのライトが一斉に割れた。
昼のように明るかった広場は一気に光を失い、仄かに光る照明と月明かりだけがその場を照らしている。
雨霧の影は薄く短くなった。
🧡「よっしゃ! やったで!」
💜「これならいける!」
先ほどまではライトの強さで長く伸びていた影はもう、雨霧のすぐ傍までしか伸びない。だから深澤は意識を集中させて手を前に出し、雨霧を囲うように直径5メートルほどの鋼のドームを構築して、雨霧を中に閉じ込める。
その外側を固めるように、向井が岩のドームを形成した。
雨霧の影はもう、その外側に伸びてくることはなかった。
パンッとハイタッチをかわす。
💜「やったな、康二!」
🧡「ふっかさん、お疲れさん!」
💜「いや正直、めっちゃ疲れた」
🧡「俺も。途中、めっちゃ怖かったー!」
💜「……でもこれで、いける。マテリアの供給がなくなったら雨霧も解放されるけど、その間に阿部ちゃんのとこに行ければいい」
🧡「せやね。ふっかさん、まだ動ける?」
💜「こんなとこでへばってられないからね。明日の筋肉痛は覚悟しとく!」
そのまま、建物の方へと向かって走って行く。
少し時間を取られたけれど、想定内だ。疲労も痛みも全てを無視して、阿部の許へと急いだ。
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