7月の放課後。
教室にはまだ夕日が差し込み、
机の上に暑い光がまっすぐ伸びている。
窓の外では、蝉が最後の力で鳴いている。
俺は、今日も残って課題プリントを
解いている。
周囲が
「夏休みもうすぐだな~」
なんて話で盛りあがる声を背中で聞きながら。
pn「よー、クロノアさん」
ぺいんとがヒョイッと俺の机の横に現れる。
冷えた麦茶のペットボトルを
2本持っていた。
pn「今日、暑すぎるので ほら、1本あげます!」
kr「ありがとう」
ぺいんとはにこにこしながら
隣の席に座り込む。
pn「クロノアさんさ、今度の数学テスト範囲、どこらへんだか知ってる??」
kr「たぶん、教科書のここの範囲がよく出ると思うよ」
pn「だよな~~! クロノアさん、ほんと頼りになるわあ。まじで毎回助けられてる」
彼はおおげさなジェスチャーで頭を下げる。
kr「ぺいんとは、勉強…苦手?」
俺が尋ねると、ぺいんとは笑顔のまま
pn「苦手、超苦手。でもクロノアさんといると“なんとかなる”って思えてくるんですよ」
と冗談ぽく肩をすくめた。
kr「“なんとかなる”か……」
その言葉は、
俺の胸に奇妙な形で残った。
pn「だってさ、クロノアさん見てると“ちゃんとしてるのが当たり前”に見えるからな~。俺も少しはマジメにやるか、って思えるし」
そんなセリフは、
褒め言葉にも皮肉にも聞こえて、
何と応えていいかわからなかった。
〜〜〜〜〜〜
pn「夏休み、どっか遊びに行こうぜ!みんなでカラオケとか、プールとか!」
ぺいんとは未来の話を明るく描く。
しかし俺の心は、
期待よりもどこか遠くに投げ出されて
しまった気持ちがあった。
kr「行けたら行くよ」
pn「絶対だぞ~!」
そう言って、手を振って教室を出ていく。
その声も、どこかに消えていく。
家に帰ると、母が例によって無表情で言う。
「明日までに提出の課題、ちゃんと終わらせてから寝るのよ」
kr「わかってる」
「みんながクロノアを頼りにしてるんだから、恥ずかしいことしないで」
“頼りにされている”
その言葉がどうしようもなく重い。
自分にとってはそれが呪いのように響いた。
夜、机に向かいながら、
ぺいんとのくれた麦茶を見つめる。
「なんとかなる」
――…本当に?
……今の自分には、
何も変われる気がしなかった。
何も救われないまま、今日もまた
誰にも言えない弱音を
ノートの端に書きかけて、
すぐに消しゴムで消してしまった。
コメント
4件
……クロノアさん( ; ; ) 優等生のクロノアさんも好きだけど、やっぱ、笑顔のクロノアさんが好きだよぉー!!(🥀ちゃんの表現すげぇ、)
続きが楽しみだ☺️