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川崎美浦(かわさき みうら)は、いつもひとりだった。
教室の隅の席で、誰にも話しかけられず、誰とも話さずに過ごす毎日。
美人で優しいと言われていたけれど、それはまるで壁の向こうの話のようだった。
彼女自身も、誰かと仲良くなりたいとは思っていたけれど、どうしたらいいかわからなかった。
そんな美浦を、クラスの人気者、川井優奈(かわい ゆうな)はずっと気にかけていた。
優奈は明るく誰とでもすぐに仲良くなれるタイプだ。
だけど、いつもクラスの中心にいる自分に、どこか孤独を感じていた。
ある日の昼休み、優奈は意を決して美浦に声をかけた。
「ねぇ、美浦ちゃん、友だちにならない?」
美浦は驚いて、少し戸惑いながらも、ゆっくりと頷いた。
「うん、いいよ」
そこからふたりは少しずつ話すようになった。
最初はぎこちなく、ぎりぎりの距離感だったけれど、優奈は毎日少しずつ、美浦に話しかけた。
一緒に給食を食べたり、帰り道を一緒に歩いたり。
カラオケに行ったり、水族館に行ったり、動物園や旅行にも行った。
その日々の中で、美浦は初めて、友だちの楽しさや温かさを知った。
優奈もまた、美浦といる時間が一番ほっとできる時間だった。
だけど、ある日、優奈は美浦に言った。
「引っ越すことになったの」
美浦はその言葉に胸が締め付けられた。
でも、ふたりは涙をこらえて、何度も「またね」を約束した。
時間は流れ、大人になってからも、ふたりは偶然再会した。
そして今度は、一緒に暮らすことになった。
だけど、恋人にはならず、ずっと友だちのまま。
その静かな絆は、何にも代えがたい宝物だった。
まだまだふたりの物語は続く――
つづく