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海の紅月くらげさん
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「綺麗」
光の花が大きく煌めいては、漆黒の夜空に飲み込まれるように儚く散っていく。
赤、桃色、黄色、数えきれないほどの煌めきと破裂音が鼓膜と心臓を刺激する。
「歩くん、私この日のことずっと大事な思い出として残っていくと思う。誘ってくれてありがとう」
みんなと過ごせて、最後にはこんな綺麗な花火も見れた。本当に幸せだ。
「俺さ」
歩くんが花火の音に負けないくらいの声量で、けれど落ち着いた口調で話しだす。
「お前のこと泉に遊ばれてかわいそうなヤツだって思ってて、けどなんか放っておけなくて……気がついたらお前のおかげで俺らの距離縮まって、実里も前よりも少し丸くなりはじめてるし」
花火から歩くんに視線を移すと、再び私たちの視線が絡まった。
「感謝してる。ましろがいてくれてよかった」
誰がに自分がいてくれてよかったと言われることが、こんなにも嬉しいことだなんて。家にいた時も、自分はいらない気がして疎外感をいつも感じていた。
誰かに必要とされたくて、私自身を見てもらいたくって……それでも家族には家を出ろって言われて私の居場所が見つからなくなりそうだった時に気づかせてくれた。
奈々子や伊代達、それに王子候補のみんなが傍にいてくれる。たとえ、期間限定でも。
「花火二人でみたこと、他のやつらには内緒な」
「……うん」
隣に座る歩くんと視線が重なった。
照れくさそうに目が逸らされて、私まで恥ずかしくなってくる。
火照る私の頬を夏の夜風が優しく撫でた。