昼休憩が終わり、トーナメントのくじ引きが行われた。そこで辞退する者、繰り上がりで入るという事態が起きる。それを好みで片付けるミッドナイトも受け入れる雄英もさすがというかなんというか。午後の部ではレクリエーションが行われ、峰田に騙されたチア姿の女子が応援する。楽しい余興を経て、ついに待ちに待ったトーナメント戦が行われる。
『ヘイガイズ、アァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』
会場のど真ん中にコンクリートで作られたステージ。待ちに待ったガチンコ勝負に観客の歓声が大きく湧き上がる。第一試合は緑谷と普通科の心操の試合が始まろうとしていた。
「どっちが勝つと思う?」
「どっちでもいい。勝ち上がったら俺が殺す」
「爆豪らしいな!」
確かに…どちらが勝っても関係ない。己の前に立ち塞がる奴は殺る。緑谷くんの試合はイライラしちまう試合だった。内容なんて言いたくないくらい。あとはパッとしない試合しかない。つまらない試合が続いた。そしてやっと私の番。
『第一回戦!楽しむ宣言してた!!元気な女の子!ヒーロー科、霊華海鈴!!』
ずっと仮面ちゃんに任せてたし、私がやりますか!
『対…俺こっち応援したい!!ヒーロー科、麗日お茶子!』
ゆっくりと目を開く。光のない目が、対戦相手である麗日を捉える。
『 START! 』
麗日が速攻とばかり正面から突っ込む。麗日の個性、無重力で相手に触れば浮かべて場外に放り出せると考えていた。別に麗日の速攻に動じておらず、相手の個性を把握した上でその場に立ってる。触れようと手を伸ばす麗日に最小限に躱し、腕をとって遠心力を利用して場外に出るよう飛ばす。麗日は場外に出ないよう転がって勢いを殺し、すぐさま体制を整えて特攻してくる。
「………」
触れようとしてくる麗日さんを最小限に躱して腹や背中に一撃を入れる。単調な動き。全体的に動きが遅い。次に狙う視線がバレバレ。自分の個性頼りの勝ち筋。
「まだまだぁ!!」
めげずに何度も特攻する…どうすれば戦意喪失するかな?どんな方法で諦めさせれば…骨を折れば諦める?身を屈めて足払いを仕掛ける。意識が手に向いていたから簡単に体制が崩れた。倒れる体をうつ伏せで押さえつけ馬乗りになり片足を折る。
「あぁぁぁああ!!」
「………」
ゴキッと骨を折る音と悲鳴がスタジアム内に響く。
『容赦ねぇぇ!!そこまでやる!!?』
「なァ止めなくていいのか?」
「大分クソだぞ…」
「………」
「見てらんねぇ……!!おい!!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放りだせよ!!いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」
「そーだそーだ」
BOOO!とブーイングが起こる。そんな会場を制したのは試合場を一発で割ったえげつない音。本人は観客の声も放送も聞いていない。これはただ、麗日に対しての脅し。
「また片足を折られるか、頭潰すの、好きな方を選んで?」
「っつ……」
「敵わない相手に諦めず立ち向かったことは褒めるよ?でも実力差は歴然。ここでギブアップ? 立ち向かう?どっちがいい?」
船長はこんな時、嘘なんて言わない本気だからこそ選ばせてあげると楽しそうな笑顔で聞いてる
「ぅ…確かに……私じゃ、霊華さんの力には…届かない………でも、だから…私は…負けたくない!!」
ぱら、と小さな石の欠片が落ちる。ステージの上空にコンクリートの瓦礫が埋め尽くしていた。
「勝あアアァつ!!」
瓦礫を浮かせて攻撃したが無駄。
体術…空気を蹴って全ての瓦礫を粉々に吹き飛ばした霊華に、観客と麗日は圧倒的な強さに引いていた。
「いい作戦だったけど、相手が悪いよヒーロー志望さん?」
『霊華!会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々、正面突破!!』
「うう”…ハッ、ハッ、んの…」
麗日は許容重量を超えて震える体に鞭打って腕だけで前進する。足を折られても、圧倒的な実力を目の当たりにしても諦めなかった。
「まだ…〜〜父ちゃん…!!」
ただ勝ちたい。心は諦めていない麗日だったが、体は限界でついに動かなくなった。
「麗日さん…行動不能。二回戦進出霊華くん!」
担架に運ばれる麗日に目もくれず、霊華は踵を翻す。勝った喜びを感じず、音さえ耳に入れていない本人は知らない。
『さっき遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ』
担任の教師がブーイングを飛ばしてるヒーローに非難しているのを。
『ここまで上がってきた相手の力を、認めてるから警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ手加減も油断も出来ねぇんだろうが』
霊華のヒーローとしての認識を知っているからこそ、プロとして喝を入れたことを本人は聞いていなかった……ただ…
【(そっか…ありがとね。担任さん)】
「(なんか言った?仮面ちゃん)」
【(なんでもないよ!船長!!)】
他人格の仮面ちゃんだけは聞いて、小声だが唯一礼を言ったのは、担任の教師も主人格も知るよしすらない
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