この会場で、画面の向こう側で一体何人が霊華の異常さを気付いているだろうかと相澤は思う。麗日の瓦礫の流星群が降りかかるまで霊華は立った場所から移動していない。最小限に避けれる動体視力と技量、死角ついても反応できる反射神経。行動不能にするために躊躇わず足の骨を綺麗に折る腕前。入試からやけに戦闘慣れしているなと思っていたが、これ程とは思っていなかった。今は死んだ人が霊華にどこまで教えたのか。普段の霊華とは打って変わって戦闘になるとまるで別人。死線を潜って生き抜いたような、この世を絶望した目をしていた。いらないことでも教えたんじゃないだろうなと怒りが込み上げる。ヒーローになる教え子が、敵になるように育てていたんじゃないのかと疑ってしまう。まだ16のガキに何を教えてんだ。子どもが、ましてやヒーローを目指す教え子がヒーローらしかぬ戦闘スタイルに頭を抱えてしまいたい。実際は包帯で手すら動かせられねぇけどそれぐらい悩ませる問題だった。
『私は信用してない』
ヒーローを目指す子がヒーローを信じていない。皮肉なことだ。これ以上、霊華がヒーローを失望しないように導くのは教師の仕事。
『ああ麗日…ウン、霊華の一回戦とっぱ』
「ちゃんとやれよやるなら…」
まずは横にいるどうしようもない奴から指導だな。
「オラオラオラオァ!!」
【まったくぅ…危ないよ?】
「切島くん場外!霊華さんの勝利!!」
『霊華の鮮やかで舞のような蹴り一発で三回戦進出!!これでベスト4が出揃った!!』
『準決勝第二試合!霊華対常闇!霊華の試合場を割るのがが止まらねえ!!』
ダークシャドウをちまちま出す腰抜けに何度目かの地面破壊。
ドゴン!!
《グァァァ!!》
「ッチ!修羅め…!!」
『常闇はここまで無敵に近い個性で勝ち上がってきたが今回は防戦一辺倒!!懐に入らせない!!』
常闇踏影、個性黒影。伸縮自在の影のようなモンスターを操作する個性。遠距離持ちの個性持ちは接近戦に弱いのが鉄則。個性頼りなら尚更。
「グレネード」
眩い光が常闇とダークシャドウを襲う。その瞬間、首を掴んで地面に薙ぎ倒す。
「がはっ!」
片腕なのに首を絞める腕力が強い。なにより空いた手は小さなライト光でダークシャドウを牽制している。光のない赤い目が常闇を見下ろす。
「………っ知って、いた…のか…」
「影があるところに光あり、でしょ?私との相性が悪かったみたい。詰み。このまま絞め殺……ん”ん”遊んでもいいけど…?」
「……………まいった…」
「常闇くんの降参!霊華さんの勝利!!」
『これで決勝は轟対霊華に決定だあ!!! 』
『今!! START!!!!』
開始時に氷と蹴りが同時にぶつかる。蹴りで氷の欠片が飛び散るが、分厚い氷の壁がが霊華を閉じ込める。
「めんど…最高傑作の癖に」
足を肩幅程度に広げ、右手の拳を握る。拳に力を一点集中させて氷の壁に向かって突き出した。途端分厚い氷の壁が割れ、ガラガラと崩れ落ちる。
『コイツァーシヴィー!!氷壁を拳一つで破壊したぁ!!さっきからずっとどんな怪力だ!!ゴリラかぁ?!!』
「誰がゴリラ??」
『あ、なんでないです…』
『ゴリラは良くねぇだろ。アホか』
最高傑作…派手な個性ゆえに動きが大雑把。接近戦慣れしてないと今までの試合を思い浮かべる。左側を掴み、思いっきり顔面に殴り飛ばした。
「くっ………!」
苦痛の声を上げ、轟は白線に飛ばされそうになった体を氷の壁で防ぐ。霊華は轟の位置まで移動し接近戦に持ち込んだ。目、鼻、首、足。急所を的確に突き、左側を重点的に狙う霊華に顔を顰める。
『左側をわざわざ掴んだり、殴りのタイミングだったり…研究してるよ。戦う度にセンスが光ってく』
『ホゥホゥ』
『轟も動きは良いんだが……攻撃が単純だ。緑谷戦以降どこか調子が崩れてるなァ…』
霊華の右手を掴み、氷で閉じ込めようとするも簡単に躱された。二人を閉じ込めるように氷の壁が囲う。
「つまんない…」
「どういう…」
服についた小さな氷の欠片を払い、首をコキリと鳴らす。傷一つなくダメージを受けていない霊華。対して顔に一撃もらい、精神的に疲労ある轟。
「最高傑作さんはお何のためにここにいるの?」
「俺、は」
「負けそうな癖に自分の力を出さずにヒーローになるなんて笑止千万。片腹が痛い。ヒーローになる気ないなら、勝つつもりがないならここから去りなよ」
手と手を勢いよく合わせて氷を壊すと、体を捻って回転する。
「なんで雄英にいる最高傑作さん」
一瞬で空気の大砲を作って最高傑作に撃ってから消した。こういう物騒なのは公に見せないでやった方がイメージも落ちないから★
煙が晴れ、ステージには白線を越えて氷壁にぐったりと倒れている轟と無傷で立つ霊華の姿。
「轟くん場外!!よって霊華さんの勝ち!!」
『以上で全ての競技が終了!!今年度の雄英体育祭1年優勝はA組霊華海鈴!!』
湧き上がる歓声を聞いていない霊華無表情で倒れている轟をつまらなそうに見る。
「つまらなかったよ…最高傑作」
利益なかった決勝戦に落胆した。
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