(葵依視点)
静まり返った屋上の端で、私はただ空を見上げていた。どうしてだろう、この場所に来ると少しだけ心が軽くなる気がする。別に何かが変わるわけじゃないけど、何もかもどうでもよくなって……。
「……これで、いいよね」
そう呟いたその時、突然、元気いっぱいの声が背後から飛び込んできた。
「おーい、葵依ー!」
その声を聞いた瞬間、私はため息をついた。振り返ると、天野神風が笑顔でこちらに駆け寄ってきた。あの明るさが苦手で、どうしても素っ気なく対応してしまう相手だ。
「……何か用?」
そう冷たく返す私に、神風はまるで気にする様子もなく、笑顔を浮かべたまま言った。
(神風視点)
「あー、実はな、お前に言いたいことがあるんだ」
俺は胸を張って、彼女に真っ直ぐ目を向ける。こいつ、何か重たいものを抱えてる顔してるんだよな。見ててほっとけねぇっていうかさ。
だから、言ってやる。
「俺、お前に恋してるんだよね!」
葵依はピタリと動きを止めて、目を見開いて俺を見つめる。その表情、まさに「何言ってんだこいつ」って顔だ。
でも、それもお構いなしだ。俺は続けて、にやっと笑ってみせた。
「だからさ、お前が死なれたら困るんだよな〜!」
葵依はしばらく俺を見つめたまま沈黙していたけど、何も言わずに踵を返して立ち去った。その背中を見送りながら、俺はちょっと満足げに呟いた。
「ま、また明日も会いに来りゃいいか!」
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