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なんで視線が私で完結しちゃってんの! 私を奪い合ってどうするの!?
結局、二人の逃げ場のない熱量に押し切られ
私は交互にドレスを着せ替えられる「生きた着せ替え人形」状態に陥った。
カーテンを開けるたびに、全く別の方向性で褒めちぎる二人。
「あああ……尊いです……メリッサさん、神々しすぎます……っ!」
「……完璧だ。私の主は、やはりこれほどまでに……。この姿、他の誰にも見せたくない」
(レオン様はレオン様で様子がおかしいし!最後の一言が不穏なんだけど!?)
二人のあまりに熱い視線と賞賛を浴び続け、私の精神力(MP)は夕暮れを待たずにガリガリと削り取られていった。
◆◇◆◇
夕暮れどき───
ようやくマリンを送り届け、馬車の中には私とレオン様の二人きりになった。
街灯が灯り始めた王都の街並みが、窓の外をゆっくりと流れていく。
どっと押し寄せた疲労感で、私は背もたれに深く身を沈めた。
(疲れた……)
予定とは大幅に狂っちゃったけど、まあ、二人ともあんなに熱くなってやり取りしてたし
ある意味では距離が縮まった……のかしら?
私をダシにして会話が増えたと思えば、成功よね?
そんな自分に都合の良いお気楽な反省会を脳内で開催していた、そのときだった。
「……メリッサ様」
低く、温度を完全に失った声が馬車内に響いた。
隣に座るレオン様を見ると、彼は窓の外を眺めたまま。
けれど、その青い瞳は昏く淀み、不気味なほど静まり返っている。
「何かしら?レオン」
「今日一日、貴女の不可解な行動を観察していましたが……。ようやく合点がいきました。いえ、認めたくなかっただけかもしれませんが」
レオン様がゆっくりとこちらを振り向く。
その顔には薄く笑みが浮かんでいるけれど、瞳の奥は一ミリも笑っていない。
彼は私の逃げ場を塞ぐように、膝を突き合わせるほどの至近距離までゆっくりと距離を詰めてきた。
「メリッサ様……もしかしなくとも今日、マリン様と僕をくっつけるおつもりではありませんでしたか?」
「っ……!」
心臓が嫌な音を立てて跳ね上がった。
図星。
それも、言い逃れのできないド真ん中のストレートだ。
動揺を悟られまいとするけれど、喉が引き攣って言葉が出ない。
「……なぜですか? 貴女は、僕が他の女を愛で、他の女に跪く姿を、隣で笑って見ていたいとでも仰るのですか?」
レオン様の細長い指が私の顎を掬い上げ、くい、と強引に持ち上げる。
逃がさない。
そう言わんばかりの強い力が指先にこもり、彼の青い瞳が私の瞳の奥を、魂ごと暴き立てるように見据えている。
(なにこれなにこれ聞いてない!今から処刑される?!すごく怖いんですけど!殺意買っちゃった感じ?!)
「わ、私はただ……貴方たちの将来を思って、それが一番の幸せだと……」
「僕の将来に、貴女以外の誰が必要だと言うのです?」
彼の顔が、吐息がかかるほどの至近距離まで迫る。
いつもは清潔感に溢れていたはずの石鹸の香りが
今はなぜか、私を閉じ込める檻のような、重苦しい芳香に感じられた。
「…僕は貴方のそばに居たいだけだというのに」
甘く、とろけるような毒を含んだ声。
(待って。今の台詞、完全にアウト。なにこれ、ラブコメ?なんで私が……?)
私の処刑回避計画は、どうやらとんでもない方向へ全力疾走し始めてしまったらしい。
目の前のレオン様が見せる
見たこともないほど暗く深い執着の炎に、私はただただ困惑し、震えることしかできなかった。