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馬車でのあの、魂が凍りつくような宣告以来、私は生きた心地がしなかった。
レオン様のあの、深い海の底のようにドロりとした執着。
あれはもう、騎士が主人に向ける「忠誠」なんて可愛いものじゃない。
完全に、狙った獲物を確実に追い詰め、逃げ場を失うまでじっと待つ「肉食獣」のそれだった。
(こうなったら、マリンさんに泣きつくしかないわ! 彼女ならきっと、この異常事態を打開してくれるはず……!だって、本来レオン様が愛するのは彼女なんだから!)
私は藁にもすがる思いで、マリンを王宮の離れにある、ひっそりとした茶室へと呼び出した。
彼女は私の青ざめた顔を見るなり、スカートを揺らして心配そうに駆け寄ってきた。
「メリッサさん! お顔色が優れませんわ。もしや、何か恐ろしい事件にでも……?」
「そうなの! 事件よ、大事件よ! 聞いて、マリンさん。レオン様が……あの清廉潔白なレオン様が、なんだか最近おかしいのよ」
「レオン様が……?」
「そうよ、私のそばにいたいとか、執拗に私の動向を追ってきて……最近なんて、私が他の男性とほんの少し挨拶しただけで、怖い顔をするのよ!?」
私は必死に、身振り手振りを交えて訴えた。
(お願い、マリンさん。本来のヒロインである貴女が彼を連れて行って。私をこの、推しの重すぎる愛という名の重圧から救って!)
けれど、私の決死の訴えを聞き終えたマリンの反応は、予想を斜め上に突き抜けるものだった。
「……まあ! それほどまでに、レオン様はメリッサさんのことを!」
マリンはバラ色に頬を染め、小さな拳をギュッと握りしめて、感動に打ち震えている。
……いや、その瞳は期待でキラキラと輝きすぎている。
「ちょ、ちょっとマリンさん? 怖いのよ? 執着されてるのよ、私? 断罪される前に監禁されそうな勢いなのよ!?」
「断罪?よく分かりませんけれども…メリッサさん。それは愛ですわ! 究極の、至高の愛です!」
「あ、あい?」
「貴女ほど気高く、豪胆で、それでいて誰にでも分け隔てなく、優しく手を焼いてくださる女性……レオン様のような素晴らしい騎士が、その魅力に気づいて放っておくはずありませんもの!」
(待って。ヒロインの視点が完全に『強火のオタク』に変換されてる。なんで私を応援してるの!?)
絶望する私をよそに、マリンは熱っぽく、もはや演説のような調子で続ける。
「これはまさに愛の革命です! 身分や立場を超え、一人の女性として貴女を求めていらっしゃるんですわ! 私、感動しました!」