テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
___
苦しい。
目を覚ました先は半壊状態の小屋の中だった。
目の前には{大勢の人が行き交う商業街。左右には行商人や農家が大々的に商品を並べ声を張り上げては汗を垂らし、奥手には大きな城が描かれる}”絵画”が無造作に置かれたのか傾いて飾られている。
私はこの絵画を見たことがある。
…いや事実、先程までこの景色がある場所で何者かに追いかけられていたのだ。
この世界に放り出されたと確信した直後襲ってきたのは、額から滝のように流れる汗と男性。
視界がボヤけるなか、猛スピードでこちらに向かってくる人影に誰が不信感を募らせないだろうか。ましてや逃げない選択肢など私にはなかった。
朦朧とする意識で人か妖か分からないものを掻い潜っては転んで、熱を帯びた地面に顔をつく。
何度目かで、私の意識は途絶えた。
結局あの男に捕まってしまったのだろうか。
けれど、この絵画にそれが収まっているのなら先程まで自分が見ていたのは夢なのだろうか…なんて。
現実から逃れたいと脳が否定し続けているのかなど歳相応のことを考えながらも、長いこと据えていたのか訛りのように重い腰を持ち上げその場に立ち上がる。
すると、ふと視線を右へずらすと隙間を覗かせる木板にぺたりと貼られた古ぼけた紙があるではないか。
前世の癖で、開けモノが見える視界を細めて凝視する。
「《wanted new children》…?」
“新しい子供が欲しかった”。
大々的に書かれた文字の下には誰かの名前が数個記載されている。けれど上ふたつは赤い樹の実か何かで塗りつぶされ読めなかった。
新しい子供…仮にここに記載された人物たちがそうなのだとしたら、それが貼られたこの小屋にいる私の名前もあるのではないだろうかと目を凝らす。
けれどどうだろう。どれも外人のように・で区切られた長ったらしい名前ばかりだ。
これらから推測するに、私は前世の姿のままこの場所に立っているのではなく、前世の記憶を持ったこの世界の住人として存在しているわけだ。
感覚の通った若々しい自身の手を見て、推測が確信に変化する。
「…他にも情報はないだろうか」
私のことは後に記載するとしよう。
もし私の考える仮説が正しいなら、主人の帰宅前に逃走を図らなければ。
コメント
7件
見るの遅れました!! 自分の今の状況の表し方の言葉選びが本当に上手すぎて尊敬です✨️ 話の終わり方も含めて大好きです!!
お~、!!! 書き方が相変わらず上手すぎます……!😭 なんだろう、…この…なんかこの感じが好きです!!(
最高(*`ω´)b 続き楽しみに待ってます(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク