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「部長が馬鹿だよ。2年で部長になれるのは夏樹しかいないのに。――ほら」
夏樹に、釣竿の先にミミズをつけて貰えるように促す。
部長と副部長が帰ってから、夏樹は釣竿を2本持って現れた。
餌は俺の苦手なミミズなんだから、嫌がらせかと思ったけど、餌は夏樹が付けてくれるらしい。
ポチャン
まだまだ日は沈まない、放課後のプール。
飛び込み台から、俺と夏樹はプールに釣糸を垂らしている。
シュールだ……。
「だからさ、十夜は自分を何も分かってねーよ」
「何を言うか」
「お前、俺に自由形で記録抜いた事あるし」
「あったっけ?」
「フォームも誰より綺麗だし」
ツンツンと夏樹の釣糸が動く。
お腹を空かせたブラックバスなんて、簡単に一匹目釣れた。
「やっり!」
「でもお前、1回泳ぐと寝ちゃうよな」
「あ?」
「2年になって本格的に泳ぐようになってから、お前、よくうたた寝するようになった」
「それは、水着美女がいねーから」
「あんな、あんな信頼しきった寝顔ズルいだろ」
夏樹が何を拗ねた様に言うのかが分からなくて首を傾げたら、今度は俺の釣糸にブラックバスがかかった。
眠い原因はやっぱ2年になって運動量が増えたからかなぁ……。
確かにどこでも机があれば寝れるけど、変な奴。
チャポン
バケツに二匹のブラックバスが泳いでいく。
「お前、嫌がらせされるからって水泳辞めんなよ」
「あー……。まぁ、うん」
「俺が絶対犯人を見つけ出す! 俺が守る!」
「守るってお前なぁ」
無愛想でクールぶってる顔なのに、本当に中身は熱血なんだから。
「お前、夏野部長みたい。やっぱ部長向いてるぞ」
「――部長と太一先輩とは二人っきりにならない方が、いい」
チャポン
いつの間にかバケツの中のブラックバスは五匹にまで増えていた。
「なんでだよ」
「太一先輩は、朝、先に来て、何かごそごそ部室でしてたんだよ。……既に顔色が悪かったから、もしかしたらロッカーにわざと自分の嫌いな虫の玩具を入れたのかも」
「それであんなに体調を悪くするわけないだろ」
あんな良い先輩を疑うなんて。
部長が暴走したら止めてくれるのはいつも副部長だ。
「だって太一先輩は、十夜が部長になるのをすごく反対してるんだぜ?」
「お前さ、部長やりたくねーの? お前がやりますって言えばいいじゃん」
「水泳部は部長が次の部長を指名するんだ。夏野部長は、お前を押している」
チャポン……
最後のブラックバスも捕まえた。
「面倒くせーなぁ、もう!」
大体!
プール内を泳ぎ回るブラックバスを、素手で捕まえようなんて無理なんだよ。
あいつらは水の中では人間なんか追い付けない。
圧倒的な差があるんだから。
だから。
「だから夏野部長も怪しい。十夜をお気に入りすぎる。電車で痴漢したのだって」
「あー……、もうさ、面倒だから勝負しよーぜ?」