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桜咲かな
142
22
明花永(あかな)
12
太めのストローをくわえて吸い込むと、とろりとした濃厚なスムージーが滑り込んできた。
人工的なシロップの味じゃない
イチゴ本来のフレッシュな甘酸っぱさと、華やかな香りが鼻腔を贅沢に抜けていく。
ひんやりと冷たい液体が喉を通るたび
今日一日の学校生活で張り詰めていた身体の力が、すうっと抜けていくのが分かった。
果汁の瑞々しさが、疲れを優しく洗い流してくれるような感覚。
いつもなら、俺がこうして大袈裟に感動していると
「大袈裟すぎだろ」とか
「食レポかよ」って、突っ込んでくるはずの圭ちゃんが、妙に静かだった。
ふと、不思議に思って彼に視線を向けると
圭ちゃんはどこかムスッとした不機嫌そうな表情のまま、無言でコーヒーを啜っていた。
サンドイッチにはほとんど手が付けられていない。
俺が口の中でイチゴの余韻を楽しみ続けている傍らで、圭ちゃんは時折
窓の外を見るフリをして視線を外しつつも、チラチラと俺を盗み見るような動きを繰り返している。
「…圭ちゃん、どうしたの? なんか、怒ってる……?」
「別に」
「え、だってなんかずっとムスッとしてるし……あっ!もしかして、この席、イチゴの匂い強すぎてキツい?」
「それもあるけど……」
「けど?」
「…面白くねぇだけ」
「え、何が?」
「……なんでもねぇ」
あからさまに視線を逸らされ、俺はフォークを持ったまま首を傾げた。
(やっぱり、甘いものの匂いが充満してる場所に無理に連れてきちゃったから、イライラしてるのかな…)
申し訳なさが勝り、俺は少しトーンを落として提案した。
「そ、そう?…ごめんね。その、次からは圭ちゃんに無理して頼まないで、甘いもの好きな他の友達を誘うようにするからさ……!」
その言葉を聞いた瞬間、圭ちゃんがコーヒーカップを持つ手がピタリと止まった。
「友達って?」
「え?ええっと……あっ、さっきの吾妻くんとか誘ってみようかな…!すごく甘いもの好きみたいだったし、一緒に甘いもの食べに行けば、友達になれるかもだし───」
そこまで言いかけたところで、圭ちゃんが低く地を這うような声で遮った。
「りゅうさ……お前、それわざと言ってんの?」
「えっ?どういう…」
言いかけた俺の言葉は、圭ちゃんが呆れたように深く吐き出したため息にかき消された。
圭ちゃんはカップをソーサーに戻すと、身を乗り出すようにして俺を睨みつけてきた。
「…お前はさ、俺が『りゅうは坦々麺食えねぇから、他の男誘って飯行くわ』って言っても、何とも思わねぇの?」
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