テラーノベル
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緑谷出久がパニック障害を患っています。
それを理解した上で楽しんでください。
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その日、1-Aの教室はざわついていた。
新しいクラスメイトが来るとあって、皆の視線は扉に集まっている。
「……よろしく、お願いします」
小柄で、少し猫背気味の少年が一歩踏み出す。耳には黒い大型ヘッドホン。目はほとんど上がらず、声もかすかに震えていた。
相澤は淡々と自己紹介を促すが、少年は短く名前だけを言い、それ以上は何も話さない。
ただ、手元でヘッドホンの位置を微調整し、呼吸を整えているようだった。
休み時間
飯田が「せっかくだから仲良くしよう」と声をかけ、彼の机へ歩み寄った。
だが、そのヘッドホンが目に入ると、飯田は注意した。
「教室でヘッドホンは不適切だぞ! 安全面でも——」
ガシッ。
勢いよく、飯田はヘッドホンを外してしまった。
次の瞬間——。
少年の体が硬直し、肩が小刻みに震え始める。
呼吸が速くなり、目は大きく見開かれ、焦点が合わない。
「や、やだ……やだ……っ」
耳を両手で押さえ、机の下へ潜り込むように身を縮めた。
「え……!?」
飯田は事態を飲み込めず、その場で固まる。
周りの生徒たちも一斉にざわめく。
轟がすぐに膝をつき、落ち着いた声で「大丈夫だ、何も起きてない」と繰り返す。
芦戸は慌てて保健室へ走る。
相澤は一歩で間に入り、他の生徒を下がらせながら低い声で言った。
「全員、距離を取れ」
少年の肩はまだ激しく上下していた。
まるで、外の音すべてが刃物になって降り注いでいるかのように。
コメント
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大丈夫なんか?